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やっぱり地理が好き ~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

宮路秀作(地理講師&コラムニスト)

宮路秀作

やっぱり地理が好き #158:ソロモン諸島にて政変が起こる!②

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やっぱり地理が好き 

~現代世界を地理学的視点で探求するメルマガ~

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第158号(2024年5月14日発行)、今回のラインアップです。

①世界各国の地理情報

 ~ソロモン諸島にて政変が起こる!②

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こんにちは。

地理講師&コラムニストの宮路秀作です。

日頃、周りの人たちからは「みやじまん」と呼ばれています。

今回で158回目のメルマガ配信となります。


歴史とは、勝者の歴史である」とは良く聞く言葉です。人間の歴史は権力や影響力のある者たちによって書かれ、しばしば小さな声は大きな嵐に飲みこまれる小舟のようです。それは個々人だけでなく、国家間でも同様の現象が見られます。


例えば、ソロモン諸島のような小さな国々は、しばしば大国の政策や戦略によってその運命が左右されます。彼らが自らの意志で選んだ道ではなく、外部の力によって押し付けられるということです。ソロモン諸島が近年直面した一連の出来事は、まさにこのテーマを象徴しているといえます。中国との接近が進む中、アメリカ合衆国やオーストラリア、そしてニュージーランドなどの国々は、この小国が中国の戦略的な利害の駒として使われていると感じていて、緊張を隠せません。


このような状況は、個人のレベルでも同様です。私たちは日々、職場や家庭、友人関係の中で、他人の意見や行動によって自分の選択が制約されることがあります。時にはそれがポジティブな影響をもたらすこともありますが、自分の意志とは異なる方向に進むことも少なくありません。そんな夜は、怒りに震えて振り上げた拳をどこへ降ろして良いか分からないまま新橋に飲みに出かけるのです。そして何も解決しないどころか、財布の中から福澤諭吉が行方不明になるだけという、「俺は何をやっているんだ……」とまた嘆くことになります。


ソロモン諸島を見ていると、我々がいかにして自分たちの声を大きな世界の中で響かせることができるか、そしてどのようにして自分自身や自分たちの社会を他者の影響から守ることができるかという問いかけを投げかけているように思えます。国際政治の複雑さと、小さな国々が直面する課題への挑戦です。


これは我々が直面している問題が、実は普遍的なものであることを示しているのかもしれません。


それでは、今週も知識をアップデートして参りましょう。

よろしくお願いします!


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①世界各国の地理情報

 ~ソロモン諸島にて政変が起こる!②


今回は、前号157号「ソロモン諸島にて政変が起こる!①」の続きです。


▼#157:ソロモン諸島にて政変が起こる!①

https://foomii.com/00223/20240505220000123754


「国政選挙」という言葉を聞くと、「新しい国の形を決める選挙!」というように、期待感なのか、はたまた絶望感なのか、色々な想いが交錯しながら行われる、そんなことを想像します。


しかし、ソロモン諸島は国土面積が2.8万km2と小さいながらも、それがおよそ900の島々に散らばっていることを考えれば、すべての選挙区から投票用紙を回収して結果を出すまでにかなりの時間を要するという想像までできる人はまずいません。


海上輸送の最中に海賊に襲われるのと同じように、回収した投票用紙が何者かの手によって奪われる危険性は、大変失礼な言い方かもしれませんが途上国であるほど高いといえます。そのため、ソロモン諸島の選挙期間中の治安維持のため、オーストラリアやニュージーランド、パプアニューギニアといった近隣諸国が警察を派遣するわけです。選挙結果が出るまで多くの時間を要することになります。投票は4月17日に行われましたが、少なくとも集計までに1週間を要するとみられていました。


日本の場合、開票所が閉め切られ、テレビで選挙速報が始まった途端に「まずは当選確実から」と、出口調査の結果を基に当確が出てしまいますが、ソロモン諸島ではそんなことはありえないのです。これを面白おかしく落語のネタにしたのが、立川志の輔師匠です。わたくしが一番好きな噺家です。「みどりの窓口」という演目ですので、ご興味ある方は検索してみてください。


有識者たちから、「ソロモン諸島の独立以来、もっとも重要な選挙となるだろう」といわれるほど、2024年4月の選挙に注目が集まっていました。前号でも書いたように、近年のソロモン諸島が示す親中な態度は「中国が太平洋へ進出する足がかりとしようとしているのではないか!?」と、多くの国が懸念を持っています。だからこそ、2019年に台湾と断交して中国へとすり寄った張本人である、マナセ・ソガヴァレ首相の再選に注目が集まったわけです。


近隣のオーストラリアやNZだけでなく、アメリカ合衆国までもが「中国のヤローはソロモン諸島に軍事基地を建設するつもりじゃねぇだろうな!?」と気が気ではないのです。


今回の選挙は、初代首相であったピーター・ケニロレアの息子であるピーター・ケニロレア・ジュニア、元首相、野党党首など複数の候補者が立ちました。


しかし、近隣諸国が懸念することが現実味を帯びてくるかということよりも、ソロモン諸島国民には他に「現実的な関心事」があり、結局のところそれを改善するつもりがあるかどうか、これが首相選びの動機としては最も大きいようです。


その「現実的な関心事」というのが、一言でいうと

… … …(記事全文7,223文字)
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