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山岡鉄秀の対外情報戦で勝ち抜けろ!

山岡鉄秀(情報戦略アナリスト)

山岡鉄秀

日本の最大の弱点は、外からどう見えるか、どう認識されるか、を意識できず、国内向けの議論に終始した挙句、平気で国益を害する対外発信や政策を採用してしまうこと。その結果、必要もなく汚名を着せられてしまう。視野を広げ、発想を変えなくては日本は激動の国際情勢で生き残れない。知識よりも思考力が大切な時代、海外経験豊富な筆者が日本を取り巻く事象を国際的な視点で分析、解説し解決策を示す。

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山岡鉄秀の対外情報戦で勝ち抜けろ!
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山岡鉄秀の対外情報戦で勝ち抜けろ!
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サンプル号:元空将の話に凝縮された日本人の長所と短所

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全世界の読者の皆様こんにちは。山岡鉄秀です。

織田邦男元航空自衛隊空将の講演を聞いてきました。空将は、航空自衛隊のトップですね。

感動しましたが、自衛隊のあり方にこそ、日本人の長所と短所が凝縮されているな、と痛感しました。

まず短所から。

拙書「日本よ、もう謝るな!」(飛鳥新社)にも書きましたが、日本人の最大の短所は、「日本国内でしか通用しない議論を延々と続けて恥じないこと」だと思います。

普通に憲法9条を読めば、自衛隊は違憲でしょう。少なくとも、違憲の疑いがある。だから、無理な解釈をしてその場しのぎをしようとする。自衛隊が、警察以上軍隊以下の実力組織だなんて、意味分かりません。さっさと改正して矛盾を解消すべきです。

北朝鮮のミサイルが頻繁に日本列島を飛び越えていた頃、海外の新聞にも「いよいよ日本も憲法改正に踏み切るか?」というような記事が出ました。でも読んでみると、次のような内容なのです。

「増大する北朝鮮の脅威に押され、安倍首相は平和憲法を改正し、これまで、自衛のためにしか武器を行使できなかった自衛隊を、普通の軍隊として、どこへでも派遣できるようにしようとしている」

ここでのポイントは、この記事を書いた記者は、自衛隊は、防衛の為に武力行使することは許可されていて、その範囲での憲法、法律上の問題はない、と思い込んでいることです。

実際には、誰も自衛隊を海外派兵などしたくありません。それどころか、憲法の制約で、自国防衛にも支障があるから改憲論議をしているなんて、夢にも思わないのです。自国防衛は当然の権利であり、そのための交戦権を制約された軍隊なんて理論的にあり得ないからです。日本人の議論は外国人には非常に理解し辛いものです。

ところが、「国民の大多数が自衛隊を認めているんだから、敢えて自衛隊を憲法に明記する必要はないじゃないか」などと言う人たちがいます。それがいかに無責任か、理解しているのでしょうか? 憲法上の矛盾に起因するしわ寄せが、全部、現場の自衛官にのしかかってしまうのです。
たとえば、航空自衛隊によるスクランブルです。防衛省統合幕僚監部によると、平成29年度のスクランブル回数は904回に上り、うち、500回が中国機によるものでした。(産経ニュース2018年4月13日)

織田元空将はこう説明します。

「スクランブルをかけても、自衛隊機は、内閣総理大臣から防衛出動が発せられて初めて軍隊として行動できる。それまでは警察と同じ。だから、正当防衛と緊急避難以外では武力行使できない。ということは、国際法で定められた警告射撃ができないし、もし弾が外国機に当たって撃墜してしまったら、パイロット個人が罪を問われることになる。

領空侵犯機に対しては、領空外に追い出すか、強制着陸させるかのいずれを実行しなければ、その空域を実行支配したことにならない。実効支配していなければ、領空を主張できなくなってしまう。

では、自衛隊機はいったいどうやって任務を遂行するのか?現行憲法と自衛隊法下では、自衛隊員は任務を遂行できないばかりか、命を危険に晒すことになってしまう。

その日本の実態を知っている中国機はなぜ突っ込んでこないのか?それは、日本は特攻隊の国だから、いざとなったら法律を無視して応戦してくるだろう、と考えるから」

なんと、日本の空は、70年以上前に特攻隊で散った英霊に守られているというわけです。こんな状況をいつまでも放置する日本って、いったいどんな国なのでしょうか?

こんなひどい矛盾、欧米人なら絶対に耐えられないし、耐えようとも思いません。さっさと憲法も法律も改正するでしょう。

ところが、名も無き自衛官たちは、この矛盾を飲み込んで、文句も言わずに毎日祖国を守るために飛び立っているのです。日本という国が抱えた根本的な矛盾を、自分たちの命を犠牲にして補っているのです。

この驚異的な忍耐力と自己犠牲の精神、日本人にしかできません。織田元空将曰く、自衛官はそれを口に出すこともせず、カウンターの隅でウィスキーのグラスを傾けながら、祖国を守ることの誇りをひとり静かに噛み締めているのだと。

自衛官の社会的地位は低く、ずっと社会の日陰者扱いで、時にはあからさまに悪人扱いされてきました。

防衛大に合格した織田元空将は、日教組の先生たちに呼び出され、囲まれて言葉のリンチを受けました。

「なぜ防衛大なんぞに行くんだ。お前をそんな人間に育てたつもりはない!」

被災地でカレーを作って住民に振舞うと、「憲法違反の自衛隊が作ったカレーを食べるべきではない」と書いた横断幕を持って抗議してきた人が居たそうです。

こんな状況でも、自衛隊という組織が破綻せずに機能し続けて来たことは驚くべきことです。

その理由のひとつは、敗戦でも完全に破壊されなかった日本人のDNAではないでしょうか?

織田元空将のお父様は戦艦大和の建造作業に加わり、織田元空将は幼い時から、「国防の為に働くことは尊いことだ」と教えられて育ったそうです。

占領軍が残し、当のアメリカに「憲法は改正した方がよい」と言われても、一字一句変更することもできずにその場しのぎを繰り返してきた日本人。

その一方で、その存在を否定されながらも、「事に臨んでは危険を顧みず」の精神で日本を守って来た、織田元空将に象徴される日本人のDNA。

そのどちらも日本人の姿です。

今、自衛隊は年間4000人の募集枠を埋めることができないそうです。私達はこれ以上、矛盾を放置して、自衛官の犠牲に依存するべきではありません。

日本人の短所と長所、そのことを改めて考えさせられた織田元空将の講演でした。


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