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適菜収のメールマガジン<通常版>

適菜収(作家)

適菜収

適菜収のメールマガジン。
順調に進んでおります。

構成は今のところ、冒頭のエッセイ、連載は「ツァラトゥストラを読む」、「源氏ハイライト」「今週のYoutube3本」、「二度目のゲーテ」。質疑応答コーナーと編集後記などです。


【新しいパトロン文化としてのメルマガ】

実はだいぶ前から「メールマガジンを始めてみませんか」というオファーをいただいていた。すぐに手を出さなかったのは、そこに意味があるのかわからなかったからだ。例えば月に1000円をメールマガジンの購読に支払うのなら、新刊本が一冊買える。中古本なら4冊は買えるだろう。それに、メルマガをやっている人の多くは記事がたまったら単行本化するという。だったら、それを読めばいいではないか。

しかし、考え方が変わってきた。

今は本が売れない時代だ。私は2005年に最初の本を出したが、現在27刷になっている。その後も50冊近い本を出しているが、最近はなかなか重版がかかりにくくなってきた。私の筆力が衰えたのではなく、他の作家も同じように、本が売れていないのである。

ある程度売れている本でも、すぐにアマゾンで1円になってしまう。音楽や映像は不正ダウンロードされたら1円にもならない。まじめにコンテンツを作っている人たちは損をしている。価格破壊は多くの業種で発生しているが、人々は生き延びるために、これまでとは違うやり方を選択せざるを得なくなった。

 アイドル歌手のCDに握手会の招待券をつけた人もいる。楽曲の配信は宣伝と割り切り、ライブやコンサートで稼いでいるミュージシャンもいる。評論家を名乗っているような連中が、ほとんどギャラの出ないネット上の討論番組に出演するのは、講演の依頼が増えるからだろう。そこでは言論の質よりも、髪の毛を盛り上げたり、綺麗な和服を着たりすることが重要になる。

以前、ネトウヨがツイッターで「適菜収は安倍首相を批判することでカネを稼いでいる」と。アホなことを言ってはならない。どう考えても、安倍のヨイショ本を書いたほうが儲かるに決まっている。『奇跡の宰相―安倍晋三が日本を救う』みたいな本を書けば、自民党や政府が一定数を買い上げてくれる。しかし、良心を失うなら、そもそも文章を書く意味もない。別の仕事をやればいいだけだ。

ではどうすればいいのか。コンテンツの価値が分かる人に、正常な対価を払ってもらえばいい。メディチ家やハプスブルク家を例に出すまでもないが、文化はパトロンが維持してきた。よって結論は以下のとおりである。

①私と同じようなことを言っている同時代の作家はほぼゼロである(いるのかもしれないが、私は知らない)。よってメルマガというクローズドな場所で、考え方を共有するのと同時に、表舞台で自由な発言を続けるための基盤のために定期購読してほしい。

②本当のことを書くと仕事が減る。作家タブーには触れられない。私は敵を作ることが多いので、作家タブーのあるメディアでは自由な記事を書くことができない。たとえば、百田尚樹を批判する記事は、百田の小説を出している版元の雑誌では書くことができない。

③なお、本メルマガでは「すぐに役立つ」ような話は一切書かない。すぐに役立つ話はすぐに役に立たなくなる。「情報」が欲しいならネットで検索したほうが早い。情報は歴史という縦軸、世界という横軸の中に位置づけて初めて意味をもつ。歴史は情報の集積ではない。先人との尽きることのない会話である。昆虫の脊髄反射レベルの文章が氾濫するSNSの世界だけで生きていたら、人間は確実にバカになる。

④通常コースの月額1,000円と支援金込みの月額5,000円があるが内容は変わらない(後者にはなんらかの特典をつけるかもしれないが)。適菜収の言論に価値があると思う人は、あるいはカネに余裕がある人は、支援金込みの月額5,000円のコースを選んでほしい。

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タイトル
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毎週月曜日
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■■■■「適菜収の徒然草」第1回■■■■

自己啓発書100冊より『徒然草』を読め!
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 つれづれなるまゝに、日暮らし、硯(すずり)に向ひて、心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物狂(ものぐる)ほしけれ。(序段)

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 学校の国語の教科書に載っている有名な一文です。
 暇にまかせて頭の中に浮かんでは消えていく、なんでもないようなことを、なんとなく書いていると、だんだん自分の頭がおかしくなっていくような気分になると。

『徒然草』には、世をはかなんだ老人が、仏教思想に基づいた「わびさび」を語り、それこそ「つれづれなるまま」にエッセイを書いたというイメージがあるかもしれません。
 それは違います。
 兼好法師は「腐った世の中と戦え」と言ったのです。

 このメルマガの目的も同じです。
「腐った世の中と戦え」です。

 兼好法師は、目が見える人間でした。
 人間の本性も宗教の本質もイデオロギーの核心も見抜いていた。

 世の中の多くの人間は、目の前にある障害に気づかず、同じ過ちを繰り返している。
 それを指摘すれば、逆に、狂人扱いされる可能性もある。
 しかし、見たものは見たのである。
 だから、兼好法師は、「もしかしたら自分は狂っているのかもしれない」「いや世の中のほうが狂っているのだ」と自問自答を繰り返しながら、自分が見たものを語ったのだ。

 一流の人間は、すべてこのような悩みを抱えていると思う。
 一流の画家は、普通の人間の目に映らないものを見てしまう。そしてそれを描く。クロード・モネのように。
 一流の音楽家は、普通の人間には聞こえない音を聞いてしまう。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのように。
  兼好法師もそういう人間だった。

 彼が言ったのはこういうことだ。

 世論に流されるな!

 薄汚い人間になるな!

 タカをくくるな!

 知ったような顔をするな!

 不安に支配されるな!

 ひるむな!

 本当のことだけを言え!

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

 人間の儀式、いづれの事か去り難からぬ。世俗の默し難きに從ひて、これを必ずとせば、願ひも多く、身も苦しく、心の暇もなく、一生は雜事の小節にさへられて、空しく暮れなん。日暮れ、道遠し、吾が生(しゃう)既に蹉だたり、諸縁を放下(ほうげ)すべき時なり。信をも守らじ、禮儀をも思はじ。この心を持たざらん人は、物狂ひともいへ。現(うつう)なし、情なしとも思へ。譏(そし)るとも苦しまじ。譽むとも聞きいれじ。(第112段)

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-

 少し長い引用ですが、このメルマガでは、現代語で解説をつけますので、読めなくても大丈夫です。
 要するに、兼好法師はこういうことを言っている。

 人間社会のしきたりや儀礼は無視することはできない。しかし、世俗のことばかりにとらわれていれば、望みも多くなり、身体も苦しくなり、気持ちの余裕もなくなってしまう。
 そして一生はこまごまとした雑事をこなすだけになり、むなしく終わる。

 だから兼好は叫ぶ。

 あらゆる縁を捨て去ってしまえ!

 信頼関係や礼儀などクソくらえだ!

 キチガイと呼びたければキチガイと呼べ!

 正気を失っていると言え!

 人情に欠けていると言え!

 人が文句を言おうが誉めようが知ったことではない!


 兼好法師は『徒然草』でこういうことを言ったんですよ。
 決して、ものわかりのよい老人ではない。
 彼は単に「常識を破壊せよ」と言っているのではない。
 世の中で「常識」とされているものは、本当に「常識」なのかを問い返せと言ったのだ。
 そして、腐った社会に対し、呪詛の言葉を投げつけ、異端を貫いた。
 お前らの愚劣な正体を全部見抜いてやると。

 このメルマガの目的も同じです。
 世の中に蔓延る愚劣な連中に対する「お前らふざけんな!」です。

 兼好法師は鎌倉時代末期から南北朝時代の人間である。にもかかわらず、彼は現在の西欧思想と同じ地平に達していた。
 なぜか?
 いつの時代においても、目が見える人間は、多くのものが見えるのである。
 これを一般に「見識」という。
 見識のある人間は、状況判断を大きく間違えることはない。
 変なものが出てきたときにすぐに「これは変だ」とわかる。

 安倍晋三や橋下徹が出てくれば、「ああ、過去の亡霊ね」とすぐにわかる。

 一方、見識がなければ、いくら知識があっても、すべてを間違える。屋山太郎のように、橋下を見て、「さわやか」と口走ってしまったりもする。

 では見識を身に着けるにはどうしたらいいのか?
 見識のある人間の思考回路をなぞることである。
 その息遣いに馴染むことである。

 そこで本メルマガのコンテンツのひとつである「適菜収の徒然草」では、『徒然草』のハイライトの部分を引用し、対応する現代語訳を載せ、さらに解説やエッセイを加えた。

 兼好法師の息遣いに学ぶためだ。

 『徒然草』は、現代人の固定観念をぶち壊す過激な思想書だ。
 書店に積まれている自己啓発書100冊を読む暇があるなら、『徒然草』を熟読したほうがいい。


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