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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.760:トランプが突きつける防衛費のさらなる増額。命運を握るのは国防次官E.コルビー


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  山田順の「週刊:未来地図」                 

   No.760 2024/01/28

トランプが突きつける防衛費のさらなる増額

命運を握るのは国防次官E.コルビー

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 第2次トランプ政権がスタートして、今後、世界はどうなるのかと、世の中が騒然としている。この日本でも、「先が読めない」と、専門家もメディアも言っている。

 しかし、そうだろうか? トランプほど、その言動から見てわかりやすい大統領はいない。対日政策に関しても、それははっきりしている。要するに、もっと軍事費を増額して、対中防衛を強化しろということに尽きる。その鍵を握るのは、国防次官となったエルブリッジ・コルビーだ。いったい、どんな人物で、なにを考えているのか?

   写真:Elbridge Colby | The Marathon Initiative

[目次]  ─────────────────────

■予測不能?「オレ様主義」で言動にブレはない

■異例の就任式スピーチ「私は神に救われた」

■聖書の上にも手を置かず司教に対し謝罪要求

■プライオリティは中国の発展と拡大の阻止

■対中強硬姿勢といっても安心はできない

■国防長官にヘグセスをという呆れた人事

■キーマンはエルブリッジ・コルビー国防次官

■6歳から7年間日本で過ごした国防のプロ

■主体的な防衛力を持て!2%は焼け石に水

■日本の貢献は嘆かわしいほど不十分

■トランプの要求を拒否するという選択はない

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■予測不能?「オレ様主義」で言動にブレはない

 

 第2次トランプ政権がスタートして、いろいろなことが言われている。パリ協定離脱、WHO脱退、メキシコ湾をアメリカ湾にする-----など、大統領令の連発で、「先が読めない」「なにをするのかわからない」と、メディアも専門家も言っている。要する、世界の先行きは「予測不能」と言うのである。

 

 しかし、そうだろうか?

 私はそうは思わない。こんな単純な「オレ様主義」の大統領はいない。よく思い返してほしい。彼は、これまでずっと同じ言動を繰り返してきた。その言動にブレはない。突然、これまでと違うことを言ったことは1度もない。常に自分が正しく、自分を批判する、糾弾する人々はみな間違っている、フェイクだと言うだけだ。

 

 つまり、トランプがやることは、「オレに従え。そうでないとお仕置きをするぞ」という“ガキ大将”政策である。この災害を、今後、日本も大いに受けることになる。

 

■異例の就任式スピーチ「私は神に救われた」

 

 先の大統領就任式ではっきりしたことがある。トランプが、完全に「オレ様」になったことだ。第1次政権のときは、まだそこまで行っていなかった。しかし、今回は違う。もはや、誰にも止めようがない。

 それは、就任式スピーチで言ったことで明らかだ。

 

 通常、就任式のスピーチは、アメリカの国家理念である「自由」「人権」「民主主義」を高らかに宣言し、国民の結束を促す内容になることが多い。しかし、トランプはそんなことより、自分を優先した。

 

「ほんの数カ月前、美しいペンシルベニアの地で、暗殺者の弾丸が私の耳を貫通した。しかし、私の命が救われたのには理由があったのだとそのときに感じた。いまではその確信を強めている。私はアメリカを再び偉大にするために神に救われたのだ」

 

■聖書の上にも手を置かず司教に対し謝罪要求

 

 つまり、彼は自分が神の命を受けた「大王」であると宣言したのである。

 

 さらに驚くべきことに、彼は就任宣誓をする際、左手を聖書の上に置かなかった。こんなことは異例も異例だ。

 また、トランプは、礼拝でLGBTQや移民に対して「慈悲の心を持つように」と説諭したワシントン大聖堂の司教に対し、「極左で強硬なアンチ・トランプだ」と非難して謝罪を求めたのである。

 

 もうこうなると、トランプは自分を神の信託を受けた「大王」であり、世界中が自分にひざまずかねばならないと、本気で思い込んでいるとしか思えない。

 

■プライオリティは中国の発展と拡大の阻止

 

 というわけで、アメリカに誕生した「大王」が、今後、世界に対してなにをするか? この日本に対してなにをするかだが、トランプの政権構想をまとめた「アジェンダ47」と「プロジェクト2025」を紐解き、これまでの発言を振り返れば、それは明らかである。

 

 まあ、いろいろ言ってはいるものの、こと対外政策に限れば、プライオリティは中国の発展と拡大の阻止である。グリーンランドをよこせ、パナマ運河を返せというのも、そこに中国が触手を伸ばしているのが気に食わない、アメリカの安全保障に関わるというのだ。

 

 要するに、これは覇権主義であって、中国のアメリカの世界覇権に対する挑戦を許さないということである。また、帝国主義の復活でもあり、トランプの言う「MAGA」は、中国封じ込めによって強化される。

 

■対中強硬姿勢といっても安心はできない

 

 このトランプの対中強硬姿勢に対して、日本では歓迎する向きが多い。中国の脅威から逃れられ、安全でいられるとトランプ政権をありがたがる。

 しかし、その見方は甘いと言うほかない。覇権主義、帝国主義においては、国際協調も同盟もほぼ意味をなさないからだ。

 

 つまり、トランプ政権は、アメリカの国益を最優先して中国を敵視するだけで、日本のような同盟国との関係強化を図るわけではない。日本防衛がアメリカの利益にならないと判断すれば、同盟を切ることもありえる。

 

 万が一でも中国がアメリカの覇権を侵さないという取引が成立すれば、日本は見捨てられるかもしれないのだ。

 

… … …(記事全文6,889文字)
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