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山田順の「週刊:未来地図」
No.750 2024/11/19
トランプの国では暮らせない
アメリカからの脱出(エクソダス)が加速!
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トランプの米大統領再選は、「暗黒の4年間」をもたらす。そう思っているアメリカ人は多い。そこで、静かに加速化しているのが、アメリカからの脱出(エクソダス)=海外移住である。もちろん、この流れは、トランプ再選以前から起こっていた。
ただし、以前は富裕層が中心だったが、最近は中流層やZ世代の若者たちも、真剣に移住先を探している。
[目次] ─────────────────────
■ミリオネアの53%がアメリカ脱出を目指す
■富裕層の移住先人気で第4位に転落
■アメリカ人の5人に1人が国外移住を希望
■アメリカから「アメリカンドリーム」が消えた
■安い賃貸物件で暮らすか親と同居するしかない
■新アメリカンドリームはアメリカを去ること
■どこに行けばいいのか?人気は南欧諸国
■中国も英国も、富裕層の国外脱出は世界的傾向
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■ミリオネアの53%がアメリカ脱出を目指す
トランプは移民を排斥すると息巻いているが、アメリカが移住先として世界でもっとも人気があったのは、ひと昔前の話である。とくに、世界のどこにでも行け、パスポート保持国、居住国、投資先国などを使い分けられる富裕層にとって、いまのアメリカは人気がなくなっている。
南部のレッドステート(共和党州)から送りつけられた移民で溢れ、万引きが横行するNYなどのサンクチュアリシティの荒廃ぶりを見れば、とてもここでは暮らせないと思う富裕層は多い。
そんな彼らは、たとえばNYのアッパーイーストの高級コンドやウエストチェスターの邸宅を売り払って、安全で快適なオーストラリアやスイスなどに移住している。
何気なくCNNを見ていたら、今回の大統領選挙後に、
国外脱出(エクソダス)を図るアメリカのミリオネアの53%が、他国のパスポートや永住権取得を目指すというニュースをやっていた。その最大の理由は、分断による社会の不安定化だ。
トランプ第二次政権になれば、この分断はますます深刻化する。
■富裕層の移住先人気で第4位に転落
『マネーインサイダー』の記事(2024年7月8日)の「2023年版:ミリオネアがもっとも多く「移住」した国ベスト6。なぜ富裕層を惹き付けるのか?」によると、2023年は記録的な数のミリオネアが外国へ移住し、その数は推定12万2000人、2022年に比べて45%の増加という。
元データは、富裕層のアドバイス会社のヘンリー&パートナーズで、ミリオネアの純流出数がもっとも多かったのは中国で、インドとイギリスがそれに続いている。
逆に純流入数がもっとも多かったのはオーストラリアで、以下、2位UAE(アラブ首長国連邦、ドバイ)、3位シンガポール、4位アメリカ、5位スイス、6位カナダとなっていて、かつて1位だったアメリカの人気はなくなっている。
記事は、こう述べている。
「ミリオネアは中国とイギリスを捨て、オーストラリアとアラブ首長国連邦に群がっている」
■アメリカ人の5人に1人が国外移住を希望
自由に使える資産を持つ富裕層が、どこを選ぼうと、一般国民にとってはそれほど大きな問題ではない。しかし、富裕層ばかりか、一般層までがアメリカを出たがっているとなると、問題は深刻だ。『ニューズウィーク』の記事(2024年11月6日)「アメリカを「脱出」したいアメリカ人の割合が史上最高の5人に1人に急増」は、ギャラップの世論調査を元ネタにして、その状況を伝えている。
アメリカを脱出して海外へ移住したいと考えるアメリカ人の割合は、2011年には10%だったが、年々上昇して2023年には18%となり、2024年にはなんと21%に達した。
この結果に、ギャラップのワールドニュース担当編集長のジュリー・レイは、次のように言っている。
「人々の移住願望に関するギャラップの最新調査結果は、意図というより、むしろ希望を反映している」「世界中のほとんどの場所で、この願望(自国を出て他国に移住する)は消えていない。アメリカやカナダのような移民受け入れ国のなかでは記録的なレベルだ」