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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.741:百寿者」「長寿礼賛」「人生100年」の欺瞞 。なぜ「安楽死」ができないのか?


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             山田順の「週刊:未来地図」                 

                          No.741 2024/09/17

   百寿者」「長寿礼賛」「人生100年」の欺瞞

       なぜ「安楽死」ができないのか?

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 「敬老の日」(今年は9月16日)がやってきて、全国の自治体では、「百寿者」(100歳以上の人)のお祝い行事が行われた。また、メディアはこぞって「長寿礼賛」の報道を、今年も繰り返した。ここ数年、「人生100年時代」と言われるようになり、私たちはなんとなく、100歳まで生きると思わされてきた。しかし、それは単なる幻想だ。

 「百寿者」は、2022年に9万人を超えたが、そのほぼ9割が女性。しかも、その多くが「寝たきり」で「認知症」である。つまり「人生100年」は、絵空事にすぎないのだ。

 長生きは必ずしもいいことではない。そして、長生きを望まない高齢者も増えている。

[目次]  ─────────────────────

■じきに「センテナリアン」は10万人超える

■NHK『クロ現』も取り上げた「長寿の秘訣」

■日本人が長寿なのは「和食」のおかげ

■センテナリアンは「寝たきり」か「認知症」

■「脳」と「筋力」の衰えは避けられない

■終末期における「延命治療」は絶対拒否

■「緩和ケア」と「看取り」はどう違うのか?

■多死社会になり「死に場所争奪戦」が勃発

■橋田寿賀子さんが望んだ究極の選択「安楽死」

■「尊厳死」と「安楽死」の大きな違い

■患者の意思を尊重した安楽死は殺人罪に

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■じきに「センテナリアン」は10万人超える

 

「百寿者」とは、100歳を超えて生きている人々のことで、英語では「センテナリアン」(centenarian)と言う。日本では、99歳は「白寿」、100歳は「百寿」、100歳を超えると「仙寿」と言われる。

 昔から「百寿」には盛大なお祝いをするのが恒例で、近年は、自治体からはお祝い金や記念品、国からはお祝い状と銀杯が贈呈される。

 100歳以上の人口は、1963年には153人。それが、1981年に1072人と初めて1000人を超え、1998年に1万158人と初めて1万人を超えた。その後、2012年に5万人を超え、2022年に9万人を超えたので、数年以内に10万人を超えるのは間違いない。

 人口減社会なのに、センテナリアンが10万人になろうとしているのは、まさに、超高齢社会の象徴だ。高齢者は統計上65歳以上の人々だが、毎年、確実に増えている。総務省の9月1日現在の推計では過去最多の3625万人で、男性は1572万人、女性は2053万人となっている。

 高齢者人口の割合(高齢化率)は、現在29.1%。団塊ジュニア世代(第2次ベビーブーム期:1971~1974年生まれ)が65歳以上となる2040年には、34.8%に達すると見込まれている。

 

■NHK『クロ現』も取り上げた「長寿の秘訣」

 

 国や自治体のお祝い行事に合わせて、メディアもセンテナリアンのお祝い報道を繰り返す。地方のテレビ局や地方新聞がとくに取り上げるのは、「わが町の百寿者」。100歳を超えて元気に暮らしている高齢者が、笑顔で画面や紙面に登場する。

 また、この時期、「長寿の秘訣」というような番組、記事も多く登場する。たとえば先日、9月4日のNHK『クローズアップ現代』は、まさにその好例で、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター長の新井康通教授の研究、話をメインに、長寿のための健康法が紹介された。

 新井教授は、30年以上にわたって100歳以上の人たちを直接訪ねて健康状態や生活状況の調査・分析を重ねてきた。それで得た「長寿につながる3つの共通点」は、①認知機能が高い(認知症になりにくい)②フレイルになりにくい(身体的な衰えがない)③心臓を中心とした循環器系血管が丈夫、という。

 そして、「健康寿命を延ばすことにつながるとみられる生活習慣リスト」は、①家族や友人などと積極的に話す②ほかの人と会話を楽しみながら一緒に食事をする③定期的に適度な運動をする④魚を食べる(EPA、DHA)⑤良質なタンパク質が含まれる食品を摂る-----などである。

 

■日本人が長寿なのは「和食」のおかげ

 

 こうして書き起こしてみると、別段、秘訣でもなんでもないではないかと思うが、納得はいく。ただし、ではこれが参考になるかと言えば、人生の後半になってからでは手遅れだろう。

 『クロ現』の特集のような報道はこれまで数多くあり、それらを総合すると、センテナリアンには次のような共通点がある。

「幸福感が高く自分の人生を肯定的にとらえている」「毎日必ず体を動かしている」「健康には注意を怠らない」「きちんと食事を摂る」


 ここで、自分のことを述べると、以上の項目のほとんどが当てはまらない。ただ、私は「和食」は好きで、魚はよく食べる。

 日本は世界的にもセンテナリアンが多い国とされるが、その理由の一つに「和食」が挙げられている。「魚と野菜を中心とした食事」「豆腐、納豆、味噌などの大豆製品の摂取が多い」などが、日本人の長寿の秘訣という。

 

… … …(記事全文7,240文字)
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