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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.740:「青い州」から「赤い州」へ脱出せよ(2) 南部がアメリカの中心になるのか?


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            山田順の「週刊:未来地図」                 

                          No.740 2024/09/11

       「青い州」から「赤い州」へ脱出せよ(2)

    テキサスがアメリカの中心になるのか?

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  昨日の配信記事で述べたように、イーロン・マスクは民主党支持から共和党支持に転向し、トランプが当選した場合は政権入りする意向という。いったいなぜ彼は、共和党支持、トランプ支持に転向をしたのだろうか?

 その背景にあるのが、「青い州」((Blue States:ブルーステート)から「赤い州」(Red States:レッドステート)への企業と人々の脱出(移転、移住)である。とくに、赤い州テキサスへの脱出は大きなトレンドとなっている。

 このトレンドにより、アメリカの産業の中心は北部から南部に移ろうとしている。今回の大統領選挙にも、このトレンドは大きく影響する。

[図表]2020年の大統領選挙結果に基づく「青い州」と「赤い州」の色分け(©︎The Center For Politics)

[目次]  ─────────────────────

■“アンチ・ウォーク”だけが転向理由か?

■「青い州」から「赤い州」への脱出がトレンド

■オラクル、ヒューレット・パッカードも移転

■三菱重工など日本企業もテキサスに本社移転

■トヨタがテキサスに移転した4つの理由

■1つの国とみなすとGDPは世界トップ10

■ダラスに飛べば世界どこにでも行ける

■テキサスは「ビジネスに最適な州」で第1位!

■なぜテキサスは州の法人税がゼロなのか?

■個人所得税がないのはテキサスほか7州

■青い州から赤い州への人口移動は止まらない

■赤い州でじょじょに青が赤を変えつつある

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■“アンチ・ウォーク”だけが転向理由か?

 

  イーロン・マスクは今年初め、バイデンを支持しないと表明し、明確に民主党から共和党支持に転向した。さらにトランプ支持を打ち出してトランプと会談。先日は、トランプが「当選したら要職に就いてもらう」と要請したことに対し、「楽しみにしている。報酬、肩書、表彰はいらない」とXに投稿した。

 このマスクの行動は、本人の表明によると、カリフォルニアがあまりにリベラル化し、反「「LGBTQ+」法案を成立させたことにある。元々“アンチ・ウォーク”(Anti-Woke)だったマスクは、「我慢の限界に達した」(Xへの投稿)と言うのだ。

 しかし、転向の理由はそれだけだろうか?

 マスクのような先見の明を持つ稀代のビジネスマンが、単なる政治信条だけで、自分の行動を180度変えてしまうものなのだろうか?

 

■「青い州」から「赤い州」への脱出がトレンド

 

 マスクは、トランプ支持表明と時を同じくして、宇宙開発企業「スペースX」と「X」(旧ツイッター)の本社をカリフォルニア州からテキサス州に移転させることも表明した。

 すでにマスクは、2020年に、テスラの本社機能をシリコンバレーのパロアルトからテキサス州オースティンに移転させ、ギガファクトリーを建設した。また、居住地もカリフォルニアからテキサスに移している。

 それまで彼は、ロサンゼルスのベルエアにある豪邸を含め、カリフォルニアに少なくとも7軒の家を所有していた。それをすべて売り払って、テキサスに移住したのだ。

 となると、共和党支持への転向は、一種の計算に基づくものとも言える。

 それは、カリフォルニアのような「青い州」(Blue States:ブルーステート)より、テキサスのような「赤い州」(Red States:レッドステート)のほうが、ビジネスにとって圧倒的にフレンドリーで、暮らしやすいからだ。

 ここ何年もの間、アメリカでは、青い州から赤い州への脱出が大きなトレンドになっている。企業も人々もレッドステートを目指すようになっている。

 

■オラクル、ヒューレット・パッカードも移転

 

 ハイテック企業、いや全業種において、本社(ヘッドクオーター)を置く最適の州とされるのがテキサスである。テキサスは、共和党が支配するレッドステートだが、ことビジネスにおいてはブルーステートよりはるかに利点が多い。

 カリフォルニアからテキサスに移転した代表的な企業と言えば、オラクルとヒューレット・パッカードがある。オラクルは2020年に、シリコンバレーのレッドウッドシティからオースティンに移転。ヒューレット・パッカードは同じくシリコンバレーのパロアルトからヒューストン近郊のスプリングに移転している。

 このほか、テキサスに移転した大企業には、エンジニアリングのエイコム(AECOM)や不動産のCBRE、金融のチャールズ・シュワブなどがあるが、中小を入れたら700社以上に上る。本社移転とは限らず、拠点を置いている企業には、シスコシステムズ、アドバンスト、アマゾン、アップル、アーム(ARM)、イーベイ、グーグルなどがあり、すべて名だたる先進大企業である。

 

■三菱重工など日本企業もテキサスに本社移転

 

 もともと、コンピュータのデルの本社はオースティンにあり、ダラスには、半導体大手のテキサス・インスツルメンツの本社、通信大手のAT&Tの本部もあった。したがって、関連企業が移転してくる下地は整っていたが、ハイテック企業をはじめとする名だたる企業がテキサスを目指したのは、この後に詳述するさまざまな理由がある。

 日本関連で言うと、トヨタが北米本社をダラス郊外のプレイノに移転させたのが代表例だろう。トヨタが移転したので、デンソーも研究開発センターをつくった。

 三菱重工や日本製鉄もアメリカ本社をテキサスに移転させた。現在、テキサス州の在留邦人数は約1万4000人(2023年10月現在、在ヒューストン日本国総領事館)で、年々増加している。

 いまや、テキサスはアメリカのハイテック企業の一大集積地である。オースティン都市圏はシリコンバレー(Silicon Valley)に比して、「シリコンヒルズ」(Silicon Hills)と呼ばれている。

 

… … …(記事全文7,064文字)
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