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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

新刊『脱ニッポン富国論「人材フライト」が日本を救う』のご案内

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━       山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」  番外編[03] 2013/12/16 新刊『脱ニッポン富国論「人材フライト」が日本を救う』のご案内     ウェブで読む:http://foomii.com/00065/2013121609000018729     EPUBダウンロード:http://foomii.com/00065-19392.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今回は、勝手ながら私の新刊の案内です。この12月18日、文藝春秋から『脱ニッポン富国論「人材フライト」が日本を救う』(文春新書、740円+税)を上梓します。本書は、2年前に出した『資産フライト』の続編で、さらに踏み込んで、資産ばかりか人間(人材)そのものまでが海外に出ていく状況を描き、それが、今後の日本になにをもたらすのかを論じたものです。 いまや、日本は大きく国のかたちを変えています。このことを強く認識すれば、私たちの未来は開けます。 [目次]────────────────────────────────── ■本書で私が言いたかったこと ■はじめに(全文)を紹介します ■本書の各章は次のようになっています ────────────────────────────────────── ■本書で私が言いたかったこと  「資産フライト」はいまやひとつの定着した言葉になりました。それとともに、資産フライトをする富裕層たちへの批判が高まっています。しかし、資産フライトの流れは加速し、いまや、資産ばかりではなく、有能な人材までもが日本を出ていくようになっています。  本書では、この状況を描くとともに、なぜ彼らはそういう選択をするのか? そして、彼らのそういう選択が、今後の日本になにをもたらすのかを論じています。  私の主張は、本書の「第9章 愛国心と出国税」「第10章 脱ニッポンが日本を救う」で、はっきりと述べています。  日本を出ていく人たちを批判してもなにもならない。批判するなら、むしろ、「資産フライト」「人材フライト」を奨励しろ。そうして、世界に広がった日本人のネットワークのなかで、日本をより豊かでいい国にしていこうということです。  日本では、一見すると、人々は自由に暮らしているように見えます。しかし、それは上辺だけのこと。社会は規制だらけだし、生活を豊かにするインフラも制度もありません。しかも、税金は驚くほど高いのです。これでは、富裕層でなくとも、出ていくでしょう。  人間はいまいるところより、より自由でより幸福になれるところがあれば、そこに行きたいと願うものです。そういう人間の願いを、国境という人為的な障壁、法律、税では縛れません。このことを、私たちはもっと真剣に考える時期にきています。そして、このグローバル時代に合わせて、国家の概念を変えていく必要があるのです。  そうすれば、日本は衰退を免れて、より豊かな暮らしやすい国になるはずです。 ■はじめに(全文)を紹介します 以下、本書の「はじめに」の部分、全文を紹介します。  残暑が厳しい8月末のある日、深夜の羽田空港の国際線ターミナルに、小学生の娘2人を連れた30代半ばの夫婦が現れた。仮に渋谷雄一さん(38)とその家族としておこう。渋谷さん一家はこれから、0時30分発のシンガポール航空633便で、シンガポールのチャンギ国際空港に向かう。  飛行時間はおよそ7時間。朝いちばんに現地入りし、その足で、今度はシンガポールの隣街、マレーシアのジョホールバルに向かう。  ただし、飛行機に乗るのは、奥さんと子供の3人。渋谷さんは、一緒に行くわけではない。なぜなら、これは家族旅行ではなく、子供たちが学校に戻るためのフライトだからだ。  渋谷さんは、前々から、日本を脱出することを考えていた。IT系のビジネスで起業し、ある程度の成功を収めてからは、もう日本にいる必要はないと思うようになった。とくに、2011年に東日本大震災が起こってからは、その思いが強くなった。渋谷さんのこの思いを後押ししたのが、奥さんだった。 「このまま、日本にいるのが怖い。それに、子供たちのことを考えたら、日本を出て海外で学校に行かせたほうがいいと思うわ」  それで、渋谷さん一家はこれまでに何度か、一家で移住できそうな海外の候補地に足を運んだ。アメリカ西海岸、ハワイ、オーストラリア、フィリピン、シンガポール、マレーシア……。そのなかで2人の娘さんたちも気に入ったのが、マレーシアのジョホールバルだった。 「じつは、アメリカやオーストラリアは、費用の面、生活習慣の違いなどから、ちょっとハードルが高いんですね。それに、日本からは遠い。その点、ジョホールバルはシンガポールのすぐそばですし、新しいインターナショナルスクールもでき、居住環境も充実している。日本人コミュニティもあります。  そこで将来、ビジネスをシンガポールに持っていくことも考慮して、まず妻と子供を先に向こうにやったんです」  ジョホールバルでは、いまマレーシア最大の都市開発が進んでおり、新しい市街地がつくられている。最新のコンドミニアムが続々と建ち、インフラも整備され、海外のインターナショナルスクールも誘致された。渋谷さんはそんななかの1校を選んで娘を入学させ、妻と娘のためにコンドミニアムを購入した。  夫だけ日本に残り、妻と子供が海外に暮らす。いわゆる「母子留学」「教育移住」は、ここ数年で激増した。韓国、中国では富裕層はもとより中間層までに広がっている現象だが、やっと日本もそれに追いついたと言えるだろうか。  私は2年前、『資産フライト』を著し、富裕層ばかりか中間層のサラリーマンやOLまでが資産を海外に持ち出す状況を描いた。そして、その状況をとおして、私たちの国のあり方に関して、さまざまな見地から考察した。  今回はその続編だが、アベノミクスで日本復活というのは上辺だけの話で、実体経済は回復していない。2013年9月に東京オリンピック招致が決まってミニバブルが起こったが、それも消費税増税で打ち消されようとしている。それどころか、政府債務の膨張は続いており、このままでは成長なきインフレに陥る可能性が強い。そのため、いまも水面下で資産フライトが進んでいる。香港、シンガポールの金融機関は、相変わらず日本人でにぎわっている。  ただ、最近の傾向は、シンガポールを起点に、新興アジア(マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピンなど)に、資産だけでなく自ら移住してしまおうという日本人が増えたことだ。  仮にこれを「移住フライト」と呼べば、資産(カネ)ばかりか、人間(ヒト)までも日本を出て行くことになる。  富裕層はもちろん、成功したIT起業家、中小企業経営者、金融専門家、現地で起業を目指す若者、同じく就活する若者、日本企業を飛び出して転職するサラリーマンやOL、留学生など、多種多彩な日本人が、いま、新興アジアを自由に行き来している。とくに富裕層は「投資移住」に、若い世代は「起業移住」に積極的である。
… … …(記事全文4,311文字)
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