━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.060 2013/10/29 「官僚統制」の強化にすぎなかったアベノミクスの正体 ウェブで読む:http://foomii.com/00065/2013102909000018036 EPUBダウンロード:http://foomii.com/00065-18700.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 予想されたことですが、アベノミクスの第三の矢は、かけ声倒れに終わりそうです。国会審議を見ていると、この国の将来に対しての真摯な姿勢が見られません。相変わらず、官僚がつくった答弁の繰り返しで、日本経済のこの先はますます不透明になってきています。 いったい、なぜ、このようなことになってしまったのか? 今回はその核心部分をお伝えします。 [目次]────────────────────────────────── ■「昨日と違う明日」を打ち出すのが政治の役目 ■言葉だけで中身がない所信表明演説 ■間違ったネーミングにより潰された「解雇特区」 ■「格差是正」という社会主義的正義 ■ 法人実効税率を「20%以下」にできるか? ■消費増税の影響を減らす「交際費の損金算入」 ■「1人5000円まで」ルールがなくなるとどうなる? ■経済産業省が改革の窓口になるという規制改革 ■経済産業省に占領されてしまった首相官邸 ■英RBS傘下のクーツが日本株の売却を表明 ■ 安倍首相がなにかを密かに用意してはいなかった ────────────────────────────────────── ■「昨日と違う明日」を打ち出すのが政治の役目 現在、私たちは昨日と同じように働き続け、モノを消費する生活を送っている。しかし、この生活を続け、日々のニュースを見ているだけでは、本当はなにが起こっているのかはわからない。また、この先、日本がどうなっていくのかは、絶対にわからないだろう。 その結果、ただ漠然と、「昨日と同じ明日がやって来る」と考えるしかないところに追い込まれている。 本来なら、政治が、こうした人々のマインドを変えていかなければならない。 昨日と違う明日がやってくる。その明日は、昨日より「明るく希望に満ちた」明日だと、そう確信させてくれなければ、政治は本来の役目を果たしているとは言えない。 そこで、そういう目で現在行なわれている国会審議を見ると、かなり絶望的な気分になる。やはり、これがアベノミクスの限界だったのかと、思わざるをえないことばかりが、延々と繰り返されているからだ。 残念ながら、やはり日本は変わらないようだ。もう、そう結論づけるしかないと思う。 ■言葉だけで中身がない所信表明演説 たしかに、アベノミクスは日本に希望の光を与えてくれた。これで、日本は長い低迷から脱出できると、国民に思わせた。この点では、過去の政治とは大きく違っていた。しかし、具体的なこととなると、やはり、その中身はカラッポである。 日本は昔から「官僚統制国家」で、その弊害が大きくなりすぎて、ここまで低迷した。だから、金融•財政政策よりも大事なのは、規制改革によって、この弊害を打破することだった。その意味で「第三の矢」が、日本の未来を決定づけるはずだった。 しかし、安倍首相は、そこまでの決意を持っていなかったようだ。結局、彼は、言葉だけの人間だったのかもしれない。そう思わせたのが、10月15日に行なわれた国会再開の冒頭での所信表明演説である。以下、首相の言葉を並べてみよう。 「『三本の矢』は、世の中の空気を一変させました。今年に入って、2四半期連続で年率3%以上。主要先進国では最も高い成長を成し遂げました」 「景気回復の実感は、いまだ全国津々浦々まで届いてはいません。(中略)しかし、この道を迷わずに進むしかありません」 「強い経済を取り戻すことは、被災地にも大きな希望の光をもたらします」 「(デフレ克服)これこそが、私の成長戦略です」 このどこに、具体的な成長戦略があるだろうか? ■間違ったネーミングにより潰された「解雇特区」 今回の国会では、「産業競争力強化法案」が制定され、その中で「国家戦略特区」の設置がうたわれた。この「国家戦略特区」が第三の矢の核心だが、予想通り、その中身は、当初の案から大きく後退した。… … …(記事全文7,766文字)