━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順のメールマガジン「週刊:未来地図」 No.057 2013/10/08 「米国デフォルト危機」で考える世界を動かすマネーの正体(1) ウェブで読む:http://foomii.com/00065/2013100809000017750 EPUBダウンロード:http://foomii.com/00065-18415.epub ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 民主党と共和党の対立で予算も執行できなくなったアメリカでは、連邦政府の業務が滞っています。さらのこの17日には、デットシーリング(債務上限)のタイムリミットが迫っており、世界はリーマンショック以上の危機に陥ると言われています。 そこで、なんでこんなことになってしまったのか? アメリカに限らず世界中の政府が借金漬けになった原因はなにか? その理由を書きます。おそらくこの理由をもっともわかっていないのは、私たち日本人だからです。 なお、この内容はあまりにも長いため、2回に分け、後半は来週に配信します。 [目次]────────────────────────────────── ■デットシーリングのタイムリミットが迫る ■ヘッジファンドはデフォルトを想定していない ■国民界保険は個人の選択の自由の侵害 ■政府の誤った政策が格差を拡大させた ■アメリカの借金はいったどのくらいあるのか? ■市場には自律回復機能があり底を打てば反転する ■アメリカ政府には輪転機というテクノロジーがある ■経済政策の運用者はスクール・スマートばかり ■ケインズの時代にはリスクマネーはなかった ■リアルマネーとリスクマネー ■ヘッジファンド知らないことには経済・金融を語れない ■世界のGDP総額の3.4倍のおカネが存在する ■この先政府はなにをしてくるかわからない ────────────────────────────────────── ■デットシーリングのタイムリミットが迫る アメリカ政府が陥った危機は、ひと言で言えば借金をしすぎたからだ。アメリカでは、日本と違って政府の借金枠が法律で決まっている。これをデットシーリング(債務上限枠)と言い、現在、16兆7000億ドル(1ドル100円換算で1670兆円)である。 この枠の上限に、今月17日に達する。そうなると、新たに借金ができないとことになり、アメリカ政府の国庫は底をつく。 つまり、それまでに議会が「デットシーリングの引き上げ」で合意しないと、財務省証券(米国債)の利払いができない。世界覇権を持ち、基軸通貨ドルを持つ国が、なんとデフォルト(債務不履行)という前代未聞の事態に突入してしまうのだ。 アメリカ財務省は、今月2日、デフォルトが発生した場合、世界は数十年間続きかねない「壊滅的状況」になる可能性があると警告した。なにが起きるかというと、米国債は暴落、同時にドルも株価も暴落して「トリプル安」になり、世界はリーマンショック以上の危機に陥るというのだ。 ■ヘッジファンドはデフォルトを想定していない とはいえ、1993年以降、アメリカは「17回」もデットシーリングを引き上げている。実際、今年の1月にも、ファイナンシャルクリフ(財政の崖)問題があり、ぎりぎりで回避された。また、議会の対立は、これまで計12回も起こっていて、そのたびに問題は土壇場で回避されてきた。 だから、こうした対立は季節イベント、年中行事と思えば、今回も回避されるのは間違いない。 メディアは騒いでいて、投資家も疑心暗鬼に陥っているが、現代の金融の主役、ヘッジファンドはそんなことは想定していない。彼らが使っているトレーディングシステムの中に、「米国債のデフォルト」という要素は組み込まれていないからだ。 なぜなら、アメリカがデフォルトすれば、それは史上初のことだから、データはないし、シミュレーションもできないからだ。 ■国民界保険は個人の選択の自由の侵害 今回の議会の対立は、表面的にはオバマケアをめぐってである。これをやるのは、さらなる政府支出が必要になるが、共和党は財政削減を主張しているので、引くに引けない。だから、国民皆保険を目指すオバマケアを、共和党(とくにティー・パーティ)は、個人の選択の自由の侵害だと反対してきた。 現在、アメリカに未保険者は5000万人いると言われている。病気にかかっても、費用が払えずに医者にかかれない人間が人口6分の1もいるのだ。つまり、彼らに選択の自由があるとしたら、それは保険に入らないことしかない。これがいかに非人道的か、共和党もわかっている。 しかも、オバマケアはすでに3年半前に成立しており、最高裁の違憲裁判でも昨年合憲との判定が下されている。 だから、共和党は最終的に妥協するはずだ。オバマ大統領が財政の削減項目で歩み寄れば、そこで決着する。… … …(記事全文8,971文字)