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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

技術も時間も猛スピード進むいま、「2020年の幸せ」とはなにか?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━          山田順の「週刊:未来地図」    No.024 2013/02/19 技術も時間も猛スピード進むいま、「2020年の幸せ」とはなにか? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  今回は「幸せとはなにか?」という哲学的なテーマについて、少々考えてみたいと思います。というのは、知り合いの20代後半の青年から、久しぶりにメールが来て、「山田さん、いくつかのサイトを見てくれませんか?」と言われたからです。見ると、それらはみな幸せについて考えさせられるものでした。  そこで、その内容を紹介しつつ、「2020年の幸せ」。 [目次]──────────────────────────────────― ■就職先を聞くと、ゴールドマンサックスとの返事 ■アジアの中心シンガポールに転勤、でも辞めたい ■「いま、私はバンコクにいてタイ語を勉強しています」 ■いま興味があるのは、“2020年の幸せ”について ■幸せを感じる仕事時間は「1週間に33時間」 ■若い頃は刺激を、高齢になると平穏さを求める ■IT社会の進展など考えもしなかったし、幸福はもっと観念的 ■コンピュータ自身が判断し、考える時代の到来 ■「触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚」をコンピュータが解析 ■わざわざ「リア充」と言わなければならない ■段ボール箱1000箱以上の過去を捨てた高城剛氏 ■「コンピュータは私を幸せにしてくれただろうか?」 ■オンライン生活で「オンとオフ」の境界線が消滅 ────────────────────────────────────── ■就職先を聞くと、ゴールドマンサックスとの返事  その青年、K君はいま28歳。学生時代に、当時、編集者だった私を訪ねてきて、「これからリッチな人生を送るのにはどうしたらいいですか?」と、いきなり聞いてきた。K君は電話で、当時、私が編集長をしていたペーパーバックスシリーズのファンだと言った。私は自分の読者に学生を想定していなかったので、それなら会って、どんな感想を持っているのか聞いてみようと思った。  約束の日時に編集部にやってきたK君は、小柄でおとなしい感じのごくふつうの若者。出版社を訪ねてくる学生は、たいていは編集者志望で、図々しいタイプが多い。 しかも、決まって就職相談になる。  しかし、K君は、「もう就職は決まっているんです。で、来年、就職する前に世界を回りたいと思って、どこに行ったらいいかもお聞きしたいんです」と言う。おいおい、待てよ、人生相談のうえに、卒業旅行相談かと思ったが、K君は真剣だった。 「山田さん、『ニューリッチの王国』という本のなかで、高城剛さんのことを書いていましたね。高城さんを紹介していただけませんか?」  K君は見かけのわりには、やはりかなりずうずうしかった。ただ、なぜか憎めない、純真さがあった。それで、就職先を聞くと、ゴールドマンサックスだという。当時、外資金融は花形で、入ればいきなり給料は1000万円オーバーの世界である。それで、なんでリッチになりたい方法を聞くんだと思ったが、 「まず、ドバイ経由でヨーロッパに行ってみたら。それから、東南アジアを回ってみたら。リッチになるといってもGSに入るなら、自然になれるだろう。高城さんが会ってくれるかどうか知らないけど、彼はいまロンドンにいるから、いちおうメールはしておくよ」 ■アジアの中心シンガポールに転勤、でも辞めたい  それから5年の月日が経った。彼が編集部を訪ねて来た後にリーマンショックが起こり、世界は激変した。いまや、この日本では外資金融は花形ではなくなった。当時六本木ヒルズにはリーマンブラザーズとゴールドマンサックスがあったが、リーマンが野村證券に買収されたため、ゴールドマンサックスだけが残っている。  K君は、予定通りゴールドマンサックスに入り、六本木でエリートサラリーマン暮らしを始めた。入社してしばらくして、また私を訪ねてきて、「仕事が面白くない」とこぼした。入社前に私が勧めた海外放浪を忠実に実行し、ロンドンでは高城氏にも会ったというので、驚いた。  K君と最後に会ったのは、3年前。シンガポールでだった。東京からシンガポールに転勤になったというので、たまたま家内とシンガポールに行ったときに、いっしょにランチをした。 「やはり金融は向きません。いずれ辞めます。辞めてもしばらくやれるお金はもう貯めました」 「でも、辞めるのはまだ早いんじゃないかな」 「いえ、ほかにやりたいことがあるんです」 「なにを」 「昔からカメラが好きだったので、カメラの技師になろうかと」 「えっ、リッチになりたいんじゃなかったの?」 「それはそうですけど」  K君の転勤でわかるように、もう世界の投資家は東京には興味がない。外資金融も、外資企業も、次々に日本を出て行き、アジアの中心地は東京から、北京、上海、香港、そしてシンガポールに移った。なかでも、シンガポールはいまや衣食住のすべての点で東京を上回っている。 「せっかく、シンガポールに来たのに、もう辞めるの?」 「ええ、もうボクの後任を探してもらっています」
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