━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順の「週刊:未来地図」 No.023 2013/02/12 香港から見たアベノミクスと日本経済。余ったカネの行くところは? ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 今週は、旧正月(春節)でにぎわう香港からです。いまや世界一、住宅の賃料が高い都市となった香港は、1人当たりのGDP購買力平価換算では、日本をはるかに上回っています。この繁栄が今後も続くのか? 香港の投資家は、今回のアベノミクスをどう見ているのか? レポートします。 [目次]────────────────────────────────── ■お正月のあいさつは「お金がもうかりますように」 ■ランカイフォンは香港の六本木、活気に満ちた街 ■香港の小売の売上は絶好調で前年比9.8% ■エビスビール350ml缶がなんと6香港ドルで72円 ■日本はシンガポール、香港、台湾より貧しいのか? ■香港の家賃は世界一、住宅バブルで印紙税導入 ■金持ちと一般庶民の格差が大きい2極化社会 ■アベノミクスを香港から見るとどうなるか? ■温家宝首相の発言と世界最大の大都市圏計画 ───────────────────────────────────――― ■お正月のあいさつは「お金がもうかりますように」 先週半ばから香港に来ている。 今年は、2月10日の日曜日が旧正月(春節)の元旦なので、大晦日の9日(土)から13日(水)まで、5日間の連休。中国本土の1週間休みに比べたら短いが、街の華やかさは断然、香港が上だ。それに、本土は、今年は、PM2.5による史上最悪の大気汚染で、北京では50メートル先も見えないという。それに、外出したら目や喉をやられてしまう。 もちろん、香港も大気汚染はひどい。爆竹も禁止だ。ただ、旧正月中は、ビクトリア湾の花火大会やインターナショナル・ナイトパレードなどのイベントがある。また、この時期は「花」の季節で、街中が花で飾り立てられている。コーズウェイベイのビクトリア公園、九龍モンコックのファーフィ公園では、花市が開かれている。 香港人によると、「金柑の木、水仙、牡丹は、繁盛のしるし。桃は、恋が芽生える」そうだ。それで、人々は家の中を花で飾り、1年の幸運を祈る。この時期のあいさつは、「恭喜發財 (ゴンヘイファッチョイ、Kung Hei Fat Choi)」。 日本の「明けましておめでとうございます」と違って、「発財」すなわち「お金が儲かりますように」というところが、いかにも中国的だ。 ■ランカイフォンは香港の六本木、活気に満ちた街 香港の夜は、必ずランカイフォン(蘭桂坊)をぶらつく。この一画は東京で言えば六本木にあたる。アメリカンパブ、アイリッシュパブ、英国パブ、中華バーなど、ありとあらゆる飲み屋がある。もちろん、レストランも、中華、イタリアン、フレンチ、エスニック、エイジアンフージョンなど多種多彩。まさに多国籍ナイトで、あらゆる国の人々が集まってくる。とくに、若者に人気の店は、活気に満ちている。 金曜の夜に行ってみたら、案の定、どこも満員。オープンエアーの店から、人々があふれ、街角でグラス片手に談笑している。 昼間の取材を終えて、知り合いと一杯と思ったが、結局、場所を代えるしかなかった。 ■香港の小売の売上は絶好調で前年比9.8% 昨年の暮れの香港の小売りは絶好調だった。香港政府が1月31日に発表したところによると、2012年の小売の売上高の暫定値は4454億香港ドル(約5兆2100億円)と前年比9.8%増。中国景気が一時減速したので、前年比20%増だった11年に比べると落ちるが、それでも10%に近いのは驚きだ。 12年12月単月でも469億香港ドルと前年同月比8.8%である。 日本に比べると、ここはまったく違う。毎回そうだが、東京の活気のなさを痛感する。人口過密都市とはいえ、どの店にいっても人がいっぱいだ。最近の東京は、深夜のコンビニに人はまばらだが、香港はいつも混んでいる。 香港では、なんでもよく売れる。 そんななか、いまの注目は粉ミルク。中国本土の粉ミルクは有毒ミルクと言われ、中国人ですら敬遠する。それで、香港に運び屋がやってきて、大量に買い漁っていく。たまりかねた香港政府は、粉ミルクの禁輸措置を決めた。 フリーポートの香港が、特定の日用品を禁輸とするのは異例中の異例だ。 ■エビスビール350ml缶がなんと6香港ドルで72円 ところで、香港のビールの値段はびっくりするぐらい安い。スーパードライ500ml缶が13香港ドルだから156円。エビスビール350ml缶がなんと6香港ドルで72円。これが、関税がないというフリーポートの威力だ。 日本だと、今日はよく働いたから、自分への御褒美で発泡酒をやめてエビスなんてことをやるが、これがバカらしくなる。日本ではエビス350ml缶はどんなに安くても250円はする。私たちは、税金を払うためにビールを飲んでいるのだ。… … …(記事全文5,734文字)