… … …(記事全文2,636文字)税金には「財源」としての役割はない。だが、現実には三つの役割がある。
一つ目は、通貨の流通の強制だ。日本政府が、税金を「日本円」で徴収する以上、我々は日本国内において日本円を使わざるを得ない。あるいは、納税のために日本円を「求め」なければならない。
結果的に、日本国内では日本円以外は流通しない。いわゆる「租税貨幣論」だ。
二つ目は、景気の調整。いわゆる、ビルトインスタビライザー(埋め込まれた安定化装置)。少なくとも、所得税と法人税にはビルトインスタビライザーの機能がある。
景気が良すぎるときは、徴収する税額を増やし、景気を鎮静化させる。逆に、景気が悪化したならば、徴収する税金を減らし、景気を活性化させる。
そして、三つめは、ミッション(政策目的)。例えば、東京一極集中を解消したいならば、
- 東京における建設投資の付加価値税(日本の消費税)を引き上げる
- 東京と地方の交通インフラを整備する
- 東京圏から地方に移転した個人は、所得税を減免する。法人の場合は、法人税を減免する
といった一連の減税・インフラ整備政策を推進すれば実現できる。
国民の行動を「コントロールしたい」ときに、税金が役に立つのだ。しかも、現在の日本は租税負担率が28.2%に達している(社会保険料を含めた国民負担率は、46.2%)。
皮肉な話だが、租税負担率が高ければ高いほど、「税金のミッション」は有効に機能する。
例えば、租税負担率が5%だった場合、「5%程度」の税金が減るからといって、国民は動くだろうか。動くかもしれないし、動かないかも知れない。
それに対し、28.2%の租税負担率の国が、「15%」の税金を払わなくていいとなれば、当然ながら、国民は「租税負担率5%」の国の国民よりも激しく動く。
妙な表現だが、現在の日本は、租税負担率が高いからこそ、税金の「ミッション性」が上がっているのだ。
上記の通り、税金には「貨幣流通(通貨)の強制」「ビルトインスタビライザー」「ミッション」と、三つの機能があるわけだが、それ以前の根源的な問題を考えてみよう。
