… … …(記事全文2,164文字)筆者は、2006年の観光立国推進基本法の制定を皮切りに始まった、我が国のインバウンド推進政策に反対し続けてきた。
理由は、主に三つある。
- そもそも外国人観光客に依存した経済を追求せざるを得ないのは、資本蓄積が不十分な発展途上国である。財やサービス(観光除く)を生産する供給能力が不足しているからこそ、外国人観光客に依存せざるを得ないのだ。
- 日本の神社・仏閣に代表される「観光資源」は、我々の先人が大切に守り、残してくれたものだ。先祖が守ってきた大切な「日本」を、「ビジネス」化する。日本の遺跡、遺産を外国人観光客から「カネを稼ぐ道具」と化す。そんなことが、許されるわけがない。
- 外国人観光客に依存するサービスは、非常事態の際に一気に需要が消滅する可能性がある。
というわけで、筆者は特に、インボイスを猛烈に推進し始めた安倍政権(第二次以降)を批判することを続けてきたわけだが、円安も相まって、ついに日本もまた「オーバーツーリズム」状態に至ってしまった。
結果的に、2025年7月の参議院選挙で、
「日本人ファースト」
を堂々と掲げた参政党が支持を得るに至った。
そもそも、日本は資本蓄積が十分な先進国だ。政府が適切な財政拡大に踏み切れば、内需中心で経済成長することが可能な国なのである。
それにも関わらず、安倍政権以降の政権は、インバウンド推進を続けた。なぜなのだろうか。
もちろん、緊縮財政が原因である。政府は日本経済成長のために、財政支出や減税はしたくない。
とはいえ、政治家たちは何らかの「成長戦略」を打ち出す必要があったため、「インバウンド」「観光立国」を叫び始めたのである。
何しろ、インバウンド拡大は、観光ビザの緩和だけで可能である。政府が財政支出をする必要ない。
しかも、2013年以降、アベノミクス(※金融緩和)やコロナ禍以降の円安で、日本は、
「良いサービスを、安く提供する国」
になってしまった。
とはいえ、そもそもインバウンドの経済規模は大したことはない。その「大したことはない」需要に日本の観光サービスが依存してしまうと、非常事態(コロナ禍等)が起きた際に、観光業は壊滅的な打撃を受けることになる。
【訪日外国人旅行者数・出国日本人の推移(万人)】