… … …(記事全文4,010文字)1933年4月、ルーズベルト大統領は大統領令「6102号」を発令し、米国市民の金貨、金塊、金証書の私的保有を禁止し、政府に引き渡すことを義務づけた。
●金没収はあるか
<1933年4月5日大統領令6102号「金貨、金地金、金証券の買い溜め禁止」>
ルーズベルトが米国民から金を没収した理由は、1929年の世界恐慌以降、経済への不安から国民が米ドルよりも金を手元に置くようになったからだ。人々は紙幣よりも金のほうが安全だと考え、資産を守る手段として金を現金化せず保有しようとした。その結果、多くの人々が銀行から金を引き出した。当時はまだ金本位制だったため、銀行で米ドルと引き換えに金を受け取ることができたのだ。
この「金」取り付け騒ぎにより、銀行が保有する金は枯渇し、市場に流通する紙幣の量が減少し、デフレの進行に拍車がかかった。ルーズベルトはこのデフレを止めるため、国民の金保有を制限・金を回収し、米ドルと金の交換比率を1オンス20.67ドルから35ドルに変更(=米ドル切り下げ)し、市場の通貨供給量を拡大させた。この大統領令「6102号」発令により回収された金の量(推定)は2,665トン(約8,570万オンス)で、現在米国政府が保有している(とされる)8,133トンの約3分の1に当たる。
こうした歴史的事実から、国家による金収奪の可能性を警戒する投資家が現れ始めている。
<2025年3月14日 クイックマネーワールド>
<2025年10月12日 シャンティ・フーラ>
下の動画は、金強制没収に備えて、金貨や金地金より金の宝飾品を勧めている。金の宝飾品は歴史的に没収を免れてきており、身に着けていればノーチェックで国内外も移動できたという。そして、金を保有するなら24金(純度99.9%の純金)の宝飾品がいいとアドバイスしている。
<2025年10月11日 ShortShort News>
https://x.com/ShortShort_News/status/1977004426545315910
ルーズベルトの金没収は、デフレを止めてインフレに向かわせるため、すなわち米ドルの価値を下げて市場の通貨供給量を増やすためだった。
現在は当時とは真逆でインフレが進んでいる(米ドルの価値が下落し続けている)。もしもトランプが金を強制没収するとしたら、その目的はルーズベルトとは反対で、米ドルの価値下落阻止だ。金を没収した後、金価格を強制的に下げる(米ドルの価値を上げる)大統領令を発令するだろう。
勿論、世界の金融経済が巨大化・複雑化した現代においてそのようなことをすれば、市場の抵抗と混乱は必至だ。米国覇権時代ならともかく、世界が多極化しつつある中では各国は激しく反発し、かえって米ドル離れが加速する恐れがある。ステーブルコインとジーニアス法の米ドル保護効果が限定的なように、米国政府の金強制没収も米国の信用すなわち米ドルの信用を無くす可能性が高い。メリットよりもデメリットが大きく、従ってトランプが金強制没収という暴挙に出る可能性は小さい。
だが、世界の「金融リセット」という観点で眺めれば可能性はゼロではない。ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者のレイ・ダリオ氏は、(ポジショントークの可能性もあるが)米ドルだけでなく全ての通貨が金に対して下落する可能性が高いと語っている。




