… … …(記事全文4,812文字)日航機墜落における数々の謎の中でも最大の謎とされるもの。
それは、事故調査委員会が「垂直尾翼の破損は、圧力隔壁の破損(ボーイングの修理ミス)が原因」と結論付けたことだ。
●圧力隔壁が原因ではない数々の証拠
<事故調査委員会報告書>
<イメージ図>
事故調査委員会が2年を費やして出した結論が、なぜ最大の謎なのか。
生存者の証言、実験と検証、そしてボイスレコーダーが、「圧力隔壁の破壊は起きていなかった」ことを強く示唆しているからだ。
高高度で圧力隔壁が壊れて急減圧した場合、すぐに人間の鼓膜が気圧差でやられる。その後、酸素マスクを付けない場合は、数分で低酸素症になり意識や判断力が著しく低下する。
機体破壊による急減圧が現実に起きた事例がある。1986年10月のタイ航空機手りゅう弾爆発事件と1988年4月のアロハ航空機事故だ。
- ①高高度で急減圧が起きた事例(1986年、1988年)
タイ航空機爆発事件では、乗客が後部トイレで手りゅう弾を爆発させ、圧力隔壁の3分の2が破壊されて急減圧が起きた。上のイメージ図のとおり、機内の与圧空気は、機内を強い風となって通り抜け、圧力隔壁後方へと抜けた。機長はすぐに急減圧の発生を認識し、自身もマスクを付けて緊急降下した。この飛行機に乗っていた日本人の岡本氏は「バーンと音がしたとたんに耳が痛く、鼓膜が破れそうだった。両手で耳をふさいだ」と証言している。そして搭乗者247名中89名(36%)乗客が「ツーン」とする耳の痛みを訴えた。いわゆる「航空性中耳炎」だ。ちなみに、同機は圧力隔壁が破壊されたが、尾翼は全く破壊されなかった。
<1986年10月 タイ航空機手りゅう弾爆発事件>
1988年のアロハ航空機事故では、機体の上部が吹き飛んで急減圧が起きた。機長のショーン・スタイマー氏は「自分の肺から全ての空気が吸い出されるようだった。」と振り返っている。機長は低酸素症にならないよう酸素マスクを装着し、直ちに緊急降下を始めている。
<1988年4月 アロハ航空機事故>
ちなみにタイ航空機爆発事件もアロハ航空機事故も無事に不時着し、タイ航空機爆発事件では死者ゼロ、アロハ航空機事故では外に吸い出されたチーフパーサー1名の死亡だった。日航機事故の犠牲者数とは雲泥の差だ。
- ②生存者の証言
ここで、日航機墜落の生存者落合由美さんの証言である。
<落合由美さんの証言>
落合由美さんによれば、耳は痛くなるほどではなく、ツンと詰まった感じですぐに治ったという。また、証言内容を見る限り、機内の乗客・乗員もいたって沈着・冷静であり、一瞬白い霧状のものが発生したが、それもすぐに収まっている。圧力隔壁が破壊されて急減圧が起きた様子がどこにも見当たらないのだ。
<亡くなった小川哲さんの遺族が公開した機内の様子 圧力隔壁が破壊された様子は見られない>






