… … …(記事全文2,947文字)※本メルマガは基本的に毎週月・木に配信しておりますが、イスラエル・イラン戦争の結末につきまして、先週同様、情報の鮮度が高いうちに今週2本分(6月30日(月)分と7月3日(木)分)を先行配信いたします。
6月24~25日、オランダ・ハーグでNATO首脳会議が開かれた。トランプはイスラエル・イラン戦争を12日間で終わらせた“戦果”を引っさげて出席し、ロシア・ウクライナ戦争で劣勢の欧州各国に対し、各国の防衛費を国内総生産(GDP)の5%まで引き上げさせた。
「米国覇権体制の終焉」「世界の多極化」に向け、トランプは布石をひとつ打つことに成功した。
●12日間戦争を利用したトランプ
<2025年6月26日 NHK>
トランプの要求は「米国とNATOの結束を強めてともにロシアに対抗するため」ではない。その真逆で「ロシア・ウクライナ戦争を含め、欧州のことは欧州に任せる」という意味だ。
<2025年2月27日 ロイター>
国の発言力は武力に比例する。トランプがイスラエル・イラン戦争に参加し、強引に停戦に持ち込んだのは、この会議に間に合わせるためだろう。戦争の電撃参加・電撃停戦は、欧州に要求を飲ませるために必要な「力による平和」の見本だった。
一方、欧州は欧州で、ロシアに対抗するためにはなんとしても米国をNATOにつなぎとめておきたい。トランプの要求を飲み、国賓としてオランダ王室宮殿に招待したのもそのためだ。
<2025年6月26日 ブルームバーグ>
欧州のトランプに対する過度な阿り(おもねり)は、裏を返せば、ロシア・ウクライナ戦争でウクライナがいかに劣勢かということだ。
<2025年5月24日 NHK>
<2025年6月1日 読売新聞>
<ロシアはウクライナ首都キーウ(キエフ)に迫っている>
こうした政治面からみれば、12日間戦争で勝ったのはイスラエルやイランではなく、トランプ、米国ということになるだろう。
●イラン核開発はイスラエル・トランプにとっても必要
ところで、一つ前の配信で筆者はイランの核関連施設の「完全消滅」は疑わしいと書いたが、欧州各国政府に提供された予備的情報評価は「濃縮ウランはほぼ無傷」と報告されていることが判明した。また、国際原子力機関(IAEA)の事務局長もその可能性があるとの見解を示した。欧州各国はトランプの機嫌を損ねないよう見て見ぬふりをしているが、「完全消滅」説は益々疑わしくなっている。






