… … …(記事全文3,924文字)8月8日に宮崎県日向灘で地震が発生した。するとその直後に気象庁が緊急記者会見を開き、1週間以内にマグニチュード8クラスの南海トラフ地震が発生する可能性が普段より高まったと発表、多くの人が「地震が来る」と思い込み、日常生活に支障が出る事態となった。
●4人に3人「地震が来る!」
<2024年8月9日 NHK>
今回の気象庁の発表は、2019年5月末に見直された「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」に基づいて行われたもので、南海トラフ想定震源域でマグニチュード6.8以上の地震が発生した場合「臨時情報」が発表され、M7以上で「注意」、M8以上で「警戒」するよう呼びかけるようになっていた。いわゆる「地震予知」の類ではない。
「注意」は7日以内にM8以上の後発地震が起きる確率が過去事例1427例中6例(=0.42%)と平時0.1%の約4~5倍で、事前避難は必要ないが日頃の備えの再確認が必要とされる。
「警戒」は平時の発生確率の100倍~1000倍で(約10%~約100%)で津波からの避難が間に合わない地域などで事前避難が始まるとされている。
8日の日向灘地震はマグニチュード7.1で、ゆっくりすべり(スロースリップ)現象もみられなかったため、1週間の注意期間が設けられた。
<今回の防災対応は赤枠部分>
「1週間以内に巨大地震が発生する確率0.5%」をどのように受け止めればいいか難しいところだが、自動車事故で言うなら「自動車を日常的に利用していて数カ月から半年程度の間で交通事故を起こしてしまう確率」と同じ程度だ。おそらく、その確率を知ったからと言って車の運転を控える人はいないだろう。一方、「サマージャンボ宝くじ」で言えば、4等3千円が当たる確率(1%)の半分だ。こちらで見ると「もしかしたら本当に1週間内に地震が来るかも」と思うかもしれない。
捉え方は人それぞれだが、今回の臨時情報はその程度の確率として注意喚起された。
だが防災対策推進基本計画を全く知らない日本国民は突然の気象庁の発表に戸惑い、不安に駆られた一部の人々がスーパーやホームセンターに殺到し、水やインスタント食品や防災グッズが一時品切れになる事態になった。
公共交通機関にも影響が出たほか、各地で各種イベントや式典の延期や中止が相次ぎ、宿泊がキャンセルされたり海水浴場が閉鎖するなどの影響が出た。
<2024年8月8日 日本テレビ>
<2024年8月11日 関西テレビ>
ある調査によると、今回の臨時情報を見聞きして地震が起きると思ったか尋ねたところ、「大きくはないが、地震が起きると思った」が44.8%と最も多く、「大きな地震が起きると思った」が30%だった。実に4人に3人が「地震が来る」と思い込んだことになる。
臨時情報は本来、巨大地震の発生する可能性が平常時と比較して比較的高くなっていることを知らせるものだが、多くの人が地震が具体的に、いつ・どこで・どれくらいの規模で発生するかを高い確度で予測する「地震予知」の情報と誤解した。
今回の騒ぎについて「極めて日本人的な過剰反応だ」と冷ややかに見る向きも多い。それはその通りだ。
だが、過剰反応も無理からぬことだ。
日本人はコロナよりも遥か以前から「近い将来、巨大地震が必ず起きる」と洗脳され続けてきたからだ。
<2019年4月8日 NHK>
<NHK「災害列島 命を守る情報サイト」>
過去30年内に阪神大震災と東日本大震災を経験している日本人が、今後30年以内に再び巨大地震が起きると思い込んでも、責めることはできないだろう。
だが、国の言う「今後30年内に南海トラフ地震が起きる確率は70%~80%」は、実は信ぴょう性がかなり低いことも日本人は知っておくべきだ。
●「発生確率70%~80%」は水増しされている
ここまで書いたら殺される!? メディアが絶対報道できない「裏話」
上村史朗(ブログ「夢と勇気とサムマネー」運営)