ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00260/2022041111212693222 //////////////////////////////////////////////////////////////// 田村秀男ウェブマガジン 経済がわかれば世界がわかる 幻冬舎オンラインからの引用です。詳しくは https://gentosha-go.com/preview/d4ff17ceb31354848492b6e5a8a5c7cf478dc2cb 25年間の慢性デフレの正体…誰が日本の経済成長を止めたのか 日本では1990年代後半から25年間も慢性デフレが続いていますが、それが放置されたままになっています。経済成長をさせることが、政治家の最大の使命と言えます。経済を成長させられない政権は失格です。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。 https://foomii.com/00260//////////////////////////////////////////////////////////////// 経済を成長させられない政権は失格 ■経済で政治の役割は重要 世の中には、元手があるために株で儲けて、節税に励んで、美味しいものを食べて、ぬくぬくと暮らせる既得権益者がいます。この人たちが悪いわけではありません。こういう人たちを責めても仕方がないです。 一方でいまから頑張ろうとしている人たちには希望がなくてはいけません。じつは政治の要諦はそこにあります。チャレンジができるような社会基盤をつくること。これは経済を大きくさせることです。即ち経済成長をさせることが、政治家の最大の使命と言えます。経済を成長させられない政権は失格です。 それを前提とすると、日本の政権はここ30年間、ずっと失格だった。その間の平均経済成長率を見ると、0.7%です。「アベノミクスは成功だ」と言う人もいますが、アベノミクスの7年間は「ちょっとまし」という程度で、世界標準で見ると全然ダメです。最初の年である2013年度が最も高く、2.7%。加えて世界標準はどうしてもドル建てになるから、円安だと日本にとっては分が悪い。 ドルが世界の標準通貨で、各国通貨の尺度であり、価値を決めるのです。つまり、その通貨がドルにどれだけ交換できるかに尽きるわけです。ドルに交換して、換算した日本の名目GDPは、1995年が5.5兆ドルくらいでした。それで2020年は五兆ドルに満たないくらいです。25年かけてこんなに減っているということは、国力がそれだけ衰退しているということです。 ■経済で政府のやるべきこと 財務というのは資産の部と負債の部があり、このふたつはバランスします。即ち、資産のほうを増やそうと思えば、負債のほうも同時に増えるのです。政府や企業、家計といった組織内の問題になりますが、負債を増やして資産を増やしても、その資産が全然利益を生まなかったらとんでもないことになります。こうなると、家計も企業も、借金を恐れて負債を増やそうとしません。 これを前提に国家の経済を考えていくと、単一のセクター、つまり政府や企業、家計での資産と負債のバランスを考えても仕方なく、国家全体として考える必要があります。ここで政府も緊縮財政をやるということであれば、資産は絶対減ります。厳しいときに借金を増やして、資産を増やせるセクターは政府しかありません。家計や企業はみんな恐れてしまい、もう借金なんてとんでもないということになりますから。 一方、政府が堂々と負債を増やして、資産をきちんと増やすことは大事なのですが、その資産がいつも赤字を生むというか、収益を生まないと、いつか破綻します。だから政府はワイズ・スペンディング、要するに賢い支出をしないといけません。 しかし、政府のやる投資、つまり資産を増やすのは借金が前提です。これは何十年もかけて次の世代に向けてのさまざまな教育、それからインフラの整備も該当します。それと技術開発、とくに基礎研究です。これらはすぐに収益に繫がるものではありません。こういうことこそ政府がやる。 残念ながらこれらのことをどんどん切ってきたのが緊縮財政です。経済学的に考えても、非常に理屈に合わない話です。 なぜ日本政府も財務省もこんな考え方をするのかというと、日本にはまとまった国家としての経済政策のあり方、国家全体を考えた場合にどうすべきかという、その考え方がないからです。財務省は自省にとっての財政政策を考えていて、国家のための財政政策を考えているわけではないのです。国益よりも省益を追求している。 財務省では増税して成功すれば、必ず後世まで褒め称えられます。さらに財政赤字を減らして均衡化させると、財務官僚としては大きな功績です。だからどうしても財務官僚は皆それらの追求に走ってしまう。 よく言われることですが、結局、官僚は出世が第一です。出世するためには、やはり自分のいる官庁での評価が高まらないといけません。そういうなかで、「減税すべきだ」「歳出を増やすべきだ」と主張する官僚が財務省にいたら、まず出世できません。「お前、何言ってるんだ」となって。
金融市場からお金を吸い上げて実体経済を回す ■中央銀行はなぜ必要? 実体経済と金融経済をうまく橋渡しするのが政治の大切な役割のひとつです。それには政府が国債を発行して金融市場からお金を吸い上げて、実体経済に回すしかありません。 そのために重要な役割を果たすのが発券銀行である中央銀行、日本銀行です。
新規発行国債の大半は通常、民間の金融機関が購入します。新規発行国債の金利(表面金利)はすでに市場で流通している国債の利回りを基準にして決まります。利回りとは、表面金利を流通市場で相場が変動する元本価格で割ったものです。 給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 詳しくはこちら>>> 給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 詳しくはこちら>>> 例えば、発行時に表面金利が1%、オリジナルな元本である額面100円の国債が市場で取引されて元本が200円に値上がった場合、利回りは0.5%ということになります。逆に50円に値下がりすると利回りは2%に跳ね上がります。 この利回りが基準となれば、政府は新規発行国債が額面で100円で従来通りだとしても、表面金利2%の国債でないと買い手がつかない恐れが生じます。政府は100億円借金すれば2億円の金利を払わなければならなくなります。それを避けるため日銀が国債流通市場で国債を大量に買い上げて国債相場を支えれば、政府は低コストで国債を発行できるのです。 現在のように国債利回りがマイナスになれば、政府はマイナス金利の国債を発行できます。それは買い手、即ち貸し手である民間金融機関が金利を売り手、借り手である政府に払うという倒錯現象ですね。 しかし、金融市場とはよくできています。マイナス金利国債を買った民間銀行などの投資家は、保有期間中に負担した金利分を十分吸収できるだけの高い元本価格で国債を売却すれば儲かるのです。このため、国債利回りが少なくてもマイナス金利を維持していかなければならないので、中央銀行の国債買い入れがとりわけ重要になるのです。 国債という政府の借金の返済は税収によって賄われるべきで、税収は増えないのに政府の借金が膨らむ一方だと、国債の信用が失われて、国債相場が暴落し、金利が高騰してとんでもないことになる、との見方があります。そうした財政均衡論はいわゆる財政均衡主義者、健全財政信奉者の考え方で、日銀が国債を買い上げるとしても、おのずと限度があると批判します。この限度とは日銀財務が不健全になるという観点に立っています。 現実に日銀は資産の部で国債のストックを大量に抱えています。日銀負債の部は国債買い上げのために発行した円資金で膨らむことになります。だから、日銀の財務状況が悪くなるからまずいというわけですが、日銀財務は国債の市場動向に左右されます。国債保有量が膨大だからといって、まずいことには必ずしもなりません。買い上げた国債が値上がりすれば日銀は収益を増やし、利益の増収分を国庫に納入することになるからです。実際に、日銀収益は国債相場の安定を背景に政府への納付金を増やしています。 いまはそうでも、いつか国債相場が暴落すれば、負債の日銀資金の金額は不変ですから、債務が資産を上回る、つまり債務超過になる恐れが生じます。国債が暴落するとき、金利は急騰します。国債金利が急騰するということは、要するに国債の買い手がほとんどなくなる、売り手だらけになるということです。 国債金利は住宅ローン金利や企業が銀行から借り入れる設備資金の金利の目安ですから、国債金利暴騰は家計や企業を直撃します。また国債を保有、運用している民間の銀行や生命保険会社は大きな損失を被ることになる。 25年間、慢性デフレが続いている理由 日本の場合、こういう状態が本当に起こり得るのでしょうか。理論的にというか、想定上は完全否定することはできませんが、現実にはあり得ません。よく引き合いに出されるのは2008年9月のリーマン・ショック後に起きたユーロ危機の際、ユーロ圏のギリシャ、スペイン、イタリアなどのユーロ建ての国債の急落です。 とくにギリシャ国債は文字通りの暴落で、売り一色のパニックになりました。そのとき、日本は民主党政権で、当時の菅直人総理は「日本はギリシャみたいになる」と大慌てでした。日本のメディアの大半が菅氏と同じ感覚で報道していました。これは経済や金融への無知ぶりをさらけ出しただけで、じつにみっともなかった。 日本と、ギリシャやその他欧州諸国とは状況が決定的に違います。なぜなら、日本の国債の90%強は民間銀行を中心とする国内の機関投資家が保有しているのに対し、ギリシャなど欧州では外国の投資家が国債保有の大半を占めるからです。外国の投資家は市場不安が起きるとただちに売りに出るので、国債は暴落しやすいのです。 三菱UFJ銀行もみずほ銀行も、日本生命も、大手金融機関は皆大量の国債を保有しています。これを投げ売りする、つまり自分で自分の首を絞めるようなことをするのでしょうか。それに、日銀はいくらでもお金を刷って民間が売りに出した国債を買い支えることができる。平たく言うと、自国通貨建ての国債は、中央銀行がしっかりと買い支えられるので暴落しない。仮に日銀が国債買いをボイコットすれば、国家経済崩壊を招くので、中央銀行の資格はありません。 もっとも、中央銀行がカネを刷って国債を買う量的緩和は実体経済がデフレ圧力を受けている場合に限定されます。物価が継続的に上昇する正常な経済の場合、政府が国債を大量発行して需要を拡大させる財政政策をとれば、インフレ率を適正水準以上に押し上げるので、そもそもありえない。 一方、デフレ経済の場合、モノやサービスの消費や設備投資にお金が向かいません。余ったお金が金融市場に流れますから、国債など市場金利が超低水準で推移します。そこで政府が国債を発行して財政出動し、景気をてこ入れするのは理に適っています。 それでも大規模な国債発行に踏み切ると、市場で消化し切れない不安が生じ、国債金利が跳ね上がりかねません。そこで中央銀行が市場で流通する国債を買い上げるのです。 日本の場合はとくに、1990年代後半から25年間も慢性デフレが続いています。脱デフレのためには、かなり思い切った財政出動と日銀の国債買いという量的緩和政策を組み合わせるべきなのです。デフレ局面から完全に抜け出すまでは、この両輪を回し続けることが理に適っています。 まとめると、デフレ圧力に苛まれている状況下での国債大量発行のそもそもの目的は、金融市場からお金を吸い上げて実体経済に回して経済を成長軌道に乗せ、デフレ不況から脱して本来あるべき姿に回帰させるということです。 国債が大量に発行されたから、もう大変だ、増税をして国債償還をしないといけない、日銀も債務超過になるぞ、というようなことばかり言って、政府は何もしなくていいというのは、デフレ容認の考え方です。 いまの財務省は「国債は借金だ」ということについて、一般の人が「借金」という言葉に対して持つマインド、つまり「借金はよくない」という感覚をうまく利用しているとしか思えません。デフレで民間需要が不足しているのに「借金はやめろ。貯蓄をしろ。無駄遣いするな」と。こんなことをやっていたら、経済は伸びない、デフレ不況が続くに決まっています。 資本主義経済というのは、先行投資、つまり将来に向けて投資することで活力が生まれるのですが、そのためには借金が不可欠であり、金融市場と金融機関が整備されているのです。 民間が動かない重要分野に、政府が民間であり余る資金を国債発行で吸い上げて投資するのは当然のことです。民間のみならず政府が借金に怯えていれば、国力が衰退する一方になります。 あとで詳しく述べますが、財務省とそれに追随する御用メディア、政治家は家計と国家を混同して、借金はダメだという論理を世論に刷り込み、経済を低迷させるのです。これもまた経済への恐るべき無知の仕業です。 実体経済に回らない金融資産に課税強化 ■政府が動かないと…… 「経済成長が格差に繫がる」という声がありますが、これは金融経済と実体経済の区別がつかないゆえの発言です。繰り返しますが、経済というものは金融経済と実体経済のふたつがあって、これが両輪になって動いているのです。 だから、一方的に金融経済のほうにお金を貯め込んで、そこでばかり投資収益が上がるのであれば、これほど不幸なことはないわけです。残念なことにいま、政府が結果的にそれを率先してやっている側面があるので、余計にそうなっています。 これは税制によって是正できる側面があります。例えばキャピタルゲイン課税(株式や不動産、有価証券の譲渡による所得〔=キャピタルゲイン〕への課税)があります。内部留保を貯め込んだままで、株主には高配当を払うけれども、雇用や設備投資に回さない企業が横行しています。実体経済に回らない金融資産に課税を強化することは、当然考えるべきです。 ところが資産課税に関しては、金融市場での投資行動に直接的な影響を及ぼすことが懸念されています。課税負担が大きくなれば、例えば株への投資が控えられるため暴落する……こういうことを恐れる声が非常に強い。 さらに資産課税を導入すると反発が強く、選挙に影響が出るだろうと言われています。そうすると与党、とくに自民党は導入をすごく嫌がります。議論すらなかなかできない。それでかえって実体経済のほうに課税をしてしまう。消費税がいちばんいい例です。 所得税と法人税の場合は「減税しろ」という声は時折出てきます。それで結局、法人税は減税して、消費税を上げるということで妥協してしまう。これはやはり政治の堕落です。こう実際に法人税の減税で何か効果はあったのでしょうか。野党も野党でそれを厳密に追求しないといけません。「文春ジャーナリズム」に乗っかってスキャンダルばかり追いかけていて、自分の足と頭で考えていない野党は存在意義がありません。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 本ウェブマガジンに対するご意見、ご感想は、このメールアドレス宛に返信をお願いいたします。 //////////////////////////////////////////////////////////////// 配信記事は、マイページから閲覧、再送することができます。ご活用ください。 マイページ:https://foomii.com/mypage/ //////////////////////////////////////////////////////////////// 【ディスクレーマー】 本内容は法律上の著作物であり、各国の著作権法その他の法律によって保護されています。 本著作物を無断で使用すること(複写、複製、転載、再販売など)は法律上禁じられており、刑事上・民事上の責任を負うことになります。 本著作物の内容は、著作者自身によって、書籍、論文等に再利用される可能性があります。 本コンテンツの転載を発見した場合には、下記通報窓口までご連絡をお願いします。 お問い合わせ先:support@foomii.co.jp //////////////////////////////////////////////////////////////// ■ ウェブマガジンの購読や課金に関するお問い合わせはこちら support@foomii.co.jp ■ 配信停止はこちらから:https://foomii.com/mypage/ ////////////////////////////////////////////////////////////////
