… … …(記事全文12,992文字)● アメリカで最初のビッグビジネスは奴隷の売買と所有だった
プランテーションとか農園とかのことばを聞くと、我々はどこかのどかで生活のペースもゆったりした牧歌的な田園風景を思い浮かべがちです。
19世紀半ば頃からアメリカで非常に大きく普及した石版画というかたちで絵画を庶民に手の届く芸術作品としたカリアー・アンド・アイヴス社で出版した「ミシシッピの棉花プランテーション」風景も、まさにそういうイメージ満載です。
ところが、後景までよくご覧いただくと分かるのですが、雄大なスケールのミシシッピ川には、日本でならとても河川を航行する船とは思えないほど大型の汽船が蒸気機関の煙突からもくもく煙を吐き出しながら進んでいます。
そして、この絵では大勢の奴隷たちがいっせいに綿の花を摘む時期ではなかったらしくて人影はまばらですが、綿摘みの季節には数百人単位の奴隷たちが駆り出されて朝早くから、真っ白な綿の花さえ見えなくなるほど夜遅くまで働いていたのです。
次のグラフは、奴隷と監督に当たる自由人(ほとんどが白人)とが、ゴマ粒より小さく描かれているので、ちょっと素人っぽいグラフだなと感じる方が多いかもしれません。
しかし、私はこの自由人は黒、奴隷は白と塗り分けただけで同じ大きさの小さな丸にしたのは、大成功だと思います。
非常に不利な立場に置かれているので日頃不満も多いだろうし、隙さえあれば「ご主人様」たちに反抗して立ち上がるかもしれない奴隷たちを監督し、監視する立場の白人たちが、人数としては圧倒的に少数派だということが、みごとに可視化されているからです。