… … …(記事全文20,470文字)● アパレル産業を復活させる?
アメリカ合衆国通商代表部というと、高度成長期の日本経済に対して何かにつけて難癖をつけ、恫喝し、なんとか日本経済を農業中心の低開発国のままに押しとどめようと画策し、戦後日本経済の低成長化に大いに貢献したコワモテでなる部署です。
そのアメリカ通商代表部が公式アカウントで、次のような仰々しいコメント付きのグラフを掲載しました。
「現トランプ政権は、海外に逃げていったアパレル産業の生産拠点をアメリカ国内に呼び戻すことが、経済的だけではなく国家安全保障上の最優先課題だ」と主張しているのです。
主要閣僚の顔ぶれを見ただけで、第2次トランプ政権は経済のケの字も分っていない人たちばかりだとは思っていましたが、さすがにこの公式コメントを読んだときには唖然としました。
現代世界では、技術も生産装置もコモディティ化してしまって、労賃の低い国と競争して勝てるはずがない古いタイプの製造業からは撤退して、知的所有権の優劣で利益率に差が付く分野に製造業の主力を絞りこんだ国々が成功しています。
そうした国々では、製造業のGDPに占めるシェアも低く、工業製品のほうがサービスや一次産品(農林水産物)より比重の高い輸出のGDPシェアも低下傾向になっていることは、次のグラフでも歴然としています。
今や中国でさえ低賃金を武器にコモディティ輸出の量を競う路線からは決別しつつあるというのに、アメリカは正気でコモディティ製造業の典型のようなアパレル産業を国内回帰させようと思っているのでしょうか。