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増田悦佐の世界情勢を読む

増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)

増田悦佐

ウクライナ・パレスチナは第三次世界大戦に発展するか 後篇

●    10・7事件以降のガザの惨状


イスラエル政府軍は、去年10月7日のハマス戦闘部隊によるイスラエル領内侵入とイスラエル市民の殺傷、そして人質のガザ地区への連行を口実に、その後延々と国際人道法を無視した、パレスチナ民間非戦闘員の殺傷を続けてきました。

ごうごうたる国際世論の非難をものともせず、ガザ地区やヨルダン川西岸地区に住んでいるパレスチナ人、中でも抵抗する手段を持たない女性や子どもたちを大量虐殺してきたのです。

選挙によってガザ地区に住むパレスチナ人の代表に選ばれたたハマスをテロ組織と断定して、ハマスを根絶するまでは攻撃の手を緩めないと当初から主張していました。

歴史をふり返れば、19世紀以降次第に強まるユダヤ人迫害と、1930年代にドイツで政権を握ったナチスによるユダヤ人問題の最終解決(ホロコースト=大虐殺)」などによってヨーロッパ諸国から追い立てられていたユダヤ人を、少なくとも十数世紀にわたってパレスチナの地に根を下ろして暮らしていたパレスチナ人は暖かく迎え入れてやったのです。

しかし、パレスチナに入植したユダヤ人たちは、ロスチャイルド家のカネの力も大いに貢献してアメリカ政府を味方につけ、先住民のパレスチナ人の土地や資産を奪い、抵抗するパレスチナ人を70年以上にわたって殺傷し続けてきたのです。

アメリカ政府は、まだイスラエル建国前のテロリスト集団だった頃の狂信的なシオニスト集団を全面的に支援していました。

そして、1947年の国連総会当時、ソ連邦と東欧諸国は戦争で亡くなった人も多く、アメリカに対抗する原子爆弾の開発も着手したばかりだったし、のちに国連総会の多数派となる第三世界各国は、まだ独立さえしていない国が圧倒的に多かったのです。

こうして、国連総会では圧倒的多数派のパレスチナにはパレスチナ全域の半分以下しか残さず国土の半分強を新参者のユダヤ人が建国したイスラエルに譲り渡すという不公平きわまる決議を出してしまいました。

しかも、イスラエルの政府と軍はそれでもあきたらず、武装をしていないパレスチナ人の家にアメリカから供与された兵器で武装した集団として押し入って、家、資産、土地を奪い、抵抗すれば殺傷し、「殺されたくなければパレスチナの地から出て行け」と脅して、さらに領土を拡大しつづけたのです。

10月7日のハマスによるイスラエル領内襲撃にしても、きびしい検問があるはずの国境をたやすく越えられたこと自体非常に不審です。

しかも、もっとも悪名高いハマスによる凶行とされた音楽フェスティバル参加者を無差別に殺傷した事件も、あとから犠牲者の大半は人質としてガザに連れ去られることを恐れたイスラエル軍が攻撃用ヘリコプターからの機銃掃射で射殺した犠牲者だったと判明しています。

これは「ハンニバル指令」と呼ばれていて、紀元前3世紀、ローマに侵攻したカルタゴの将軍ハンニバルが自軍の兵士たちに「ローマの捕虜になりそうになったら、情報の漏洩を防ぐために自決せよ。もし自分の周囲の戦友が捕虜になりそうなのに自決できずにいたら、殺してやれ」という命令を出したと言われる故事に由来する無慈悲な命令です。

とにかく、10・7事件以降のイスラエル軍によるガザ住民に対する攻撃は、正真正銘の無差別大量虐殺でした。いや、抵抗できない女性や子どもたちとともに、医師や看護師、そしてジャーナリストを狙い撃ちで殺しているので、無差別虐殺よりもっと悪質だとも言えます。

その結果、今年9月下旬現在のガザは次の地図に見るとおりの惨憺たる状態になっています。



30万棟近い数だったガザの建物のうち約4割が崩壊し、その下にはまだ行方不明のままとされている数万人のパレスチナ民間人が、取り出してもらうこともできない遺体として横たわっていると言います。

とくにガザ地区全体の中心都市と言えるガザ市では全建物の74%約4分の3が破壊されてしまったのです。そして、破壊されたのは建物だけではありません。

ガザ地区は約400平方キロの土地に230万人以上の人々が住んでいた、地球上でもっとも人口稠密な地域のひとつなのですが、これだけ大勢の人たちが暮らしていくためには必要不可欠な道路上下水道、さらに食料を確保するための農地も、いたるところで何年かかけなければ修復できないほど寸断され、破壊されています

ガザ地区のいまや「ふつうの光景」となってしまった惨状を4枚組写真でご覧ください。



国連の推計ではガザ地区に住んでいた人々のうち少なくとも90%が、一度は住み慣れた我が家から逃げなければならない経験をしており、中には何度も爆撃などの危険が迫っているとして追い立てられた人もいるのです。

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