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世界情勢ブリーフィング

JD(国際政治・経済の研究者、作家、元外交官)

JD

世界情勢ブリーフィング 第833号 今週の動き(7/27~8/2)日米関税合意、パウエル解任問題と分野別関税、タイとカンボジアの軍事衝突

2025年7月28日発行(通算第833号)

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世界情勢ブリーフィング

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猛暑が続いていますね。夏休みになると、かつては、朝の涼しいうちにラジオ体操や宿題を済ませましょう、と言われたものですが、もはや涼しい時間帯が存在しなくなっているようにも感じられます。それでも子どもたちがラジオ体操に出かけていく姿を見ると、なんだか嬉しくなります。 


さて今週は、参院選直後に実現した日米の関税合意、米国経済の見通し(パウエルFRB議長の解任問題と新たな分野別関税の動き)、そしてタイとカンボジアの軍事衝突を取り上げます。


エプスタイン問題は引き続き米国でトップニュースとして扱われており、司法省が、エプスタインの協力者であったギレーヌ・マクスウェル受刑者から聴取を行うなど、捜査は拡大を続けていますが、現時点でのポイントはこれまで本メルマガでお伝えしてきた内容でカバーされています。差し当たりこれまでの記事をご参照ください。 


【目次】


1.先週の動き

(1)日米関税合意

(2)パウエルFRB議長解任問題と分野別関税

(3)タイとカンボジアの軍事衝突

2.今週の動き

3.近況報告

4.あとがき


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先週の動き

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7/20(日)

・ロシアのプーチン大統領とイランのラリジャニ前国会議長が会談(モスクワ)

・参院選(与党が過半数割れの大敗)


7/21(月)

・日米関税閣僚級協議(ワシントンDC) 

・米司法省がマーチン・ルーサー・キング牧師の暗殺に関する文書を公開

・イスラエルがイエメンのフーシ派のホデイダ港の拠点を攻撃


7/22(火)

・トランプ大統領、ベッセント財務長官と赤沢経済再生担当相が会談(ワシントンDC) 

・トランプ大統領が日本との貿易協議で合意に達したと表明

・米比首脳会談(ワシントンDC)

・トランプ大統領がフィリピンとの貿易協議で合意に達したと表明

・トランプ大統領がオバマ元大統領は16年大統領選へのロシア介入疑惑の捏造を指示したとして同元大統領の捜査を司法省に要求

・ウクライナで汚職対策機関の独立性を制限する刑事訴訟法改正法が成立 


7/23(水)

・米ホワイトハウスが「AIアクションプラン」を発表

・日・EU首脳会談(東京)


7/24(木)

・トランプ大統領がFRB本部の改修現場を視察

・ウィトコフ中東担当特使がハマスのガザ停戦案への回答に不満を表明し、ドーハに派遣していた米国の代表団の引き揚げを発表 

・米司法省がNY市とアダムズ市長を不法移民対策の妨害を主張してNY連邦地裁に提訴

・中・EU首脳会談(北京)

・ECB定例理事会(中銀預金金利を据え置き(2%))(フランクフルト)

・ウクライナのゼレンスキー大統領が汚職対策機関の独立性を担保する法案を最高会議に提出

・英国とインドがFTAに署名

・タイとカンボジアが国境地帯で軍事衝突(継続中)


7/25(金)

・トランプ大統領がスコットランドを訪問(~29日)

・イラン・英独仏の核開発に関する協議(イスタンブール)

・英豪外務・防衛担当閣僚協議(2+2)(シドニー)


7/26(土)

・トランプ大統領がタイとカンボジアは停戦で合意したと表明

・台湾の国民党の立法委員24人の解職の是非を問う住民投票(すべて否決)


●日米関税合意


参院選から2日後、トランプ大統領は、日米間の関税協議で合意に達したと発表し、石破首相も記者会見で合意に至ったことを表明しました。 


その後、日米両政府は、それぞれ合意内容を明らかにする文書を公表しました。 


■ Fact Sheet: President Donald J. Trump Secures Unprecedented U.S.-Japan Strategic Trade and Investment Agreement(7月27日付米ホワイトハウス)

https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/07/fact-sheet-president-donald-j-trump-secures-unprecedented-u-s-japan-strategic-trade-and-investment-agreement/

■ 米国の関税措置に関する日米協議:日米間の合意(概要)(7月25日付内閣官房) 

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/tariff_measures/dai6/250725siryou1.pdf


米国の発表によれば、日本に対する相互関税は25%から15%に引き下げられました。また、日本は米国に5,500億ドルの投資を行い、投資分野として、LNGや送電網を含むエネルギーインフラ、半導体の製造・研究開発、重要鉱物の採掘・加工・精製、医薬品・医療機器、造船が挙げられ、そこから生まれる利益の90%は米国が得るとされました。


日本市場へのアクセスに関しては、農業・食品(コメの輸入を75%増加、トウモロコシ、大豆、バイオエタノールなど80億ドル相当の製品を購入)、エネルギー(アラスカ産LNGの新たな合意を検討)、製造・航空宇宙(ボーイング社航空機100機を購入、防衛装備品を毎年数十億ドル追加購入)、自動車・工業品(米国の自動車基準の受け入れ)の4分野について、日本による輸入拡大や非関税障壁の撤廃が定められました。


一方、日本の発表によれば、米国の日本に対する相互関税と自動車関税は25%から15%に引き下げられ(自動車は現行のMFN税率の2.5%に12.5%が追加)、日本は米国からの輸入に対する関税を変更せず、コメについては、年間77万トン程度を無税で輸入する現行のミニマムアクセスの枠内で、米国からの調達を増やすとしています。


日本から米国への投資については、「政府系金融機関が最大5,500億ドル規模の出資・融資・融資保証を提供することを可能にし、出資の際における日米の利益の配分の割合は、双方が負担する貢献やリスクの度合いを踏まえ、1:9とする」とされました。


参院選直後に発表されたサプライズ合意であり、その内容も驚くべき点が多く、今後の他国との関税交渉に対しても大きな示唆を与えるものでした。そのポイントを解説します。

… … …(記事全文15,630文字)
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