… … …(記事全文15,791文字)2025年5月5日発行(通算第821号)
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世界情勢ブリーフィング
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5月になりました。ゴールデンウィークの中盤ですが、仕事を離れてゆっくりしたり、遠出をされている方も多いでしょうか。私もあちこちに出かけていますが、仕事から完全に離れることはできず、ワーケーションのような感じでもあります(苦笑)。詳しくは「近況報告」をご覧下さい。
さて、今週もトランプ政権です。政権発足100日、関税の経済的な影響や今後の見通し、日米貿易交渉、米中の貿易戦争、ウォルツの解任、ウクライナとの資源開発合意と、例によって盛り沢山です。読者の方からのリクエストに応え、インドとパキスタンの軍事衝突の可能性についても解説します。カナダと豪州の選挙についても簡単にコメントします。いつにも増して長くなりましたが(笑)、お休みの方も多いと思うので、じっくりお楽しみ下さい。
韓国大統領選については李在民の無罪判決が破棄されるという大きな動きがありましたが、こちらは選挙直前の来週に解説します。また、米民主党の現状についても、読者の方から解説のリクエストがありましたので、次回以降、タイミングを見て取り上げます。
【目次】
1.先週の動き
(1)トランプ政権100日(関税の影響と見通し)
(2)日米関税交渉
(3)米中の貿易戦争
(4)ウォルツ大統領補佐官の解任
(5)米・ウクライナの資源開発合意
(6)インドとパキスタンの軍事衝突の危機
(7)カナダと豪州の選挙
2.今週の動き
3.近況報告
4.バックナンバー
5.あとがき
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先週の動き
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4/27(日)
・米ロ外相電話会談
・イスラエル軍がベイルート南部を空爆
・石破首相とベトナムのトー・ラム共産党書記長が会談(ハノイ)
4/28(月)
・トランプ大統領のインタビューをアトランティック誌が公表
・トランプ大統領がサンクチュアリ・シティーへの圧力を強化する大統領令に署名
・米軍がイエメンのフーシ派の移民収容施設を空爆したとフーシ派が発表
・BRICS外相会合(リオデジャネイロ、~29日)
・中・ロシア外相会談(同)
・北朝鮮の朝鮮労働党中央軍事委員会が北朝鮮軍のロシアのクルスク州への派遣を決定したとの声明を公表
・韓国の野党「共に民主党」が李在明前代表を大統領候補に選出
・ロシアのプーチン大統領が5月8日から11日までの停戦を決めたと発表
・カナダ総選挙(与党・自由党が勝利)
・スペイン全土で大規模な停電
・日越首脳会談(ハノイ)
4/29(火)
・トランプ大統領が就任100日の演説(ミシガン州ウォーレン)
・トランプ大統領が自動車関税の軽減措置の導入を指示する文書に署名
・米・カナダ首脳電話会談
・米英軍がイエメンのフーシ派の軍事施設を空爆
・米上院がデヴィッド・パーデュー元上院議員の駐中国大使就任を承認
・日比首脳会談(マニラ)
4/30(水)
・米国とウクライナが資源開発協定に署名
・米国の25年1~3月期の実質GDP成長率の発表(前期比年率▲0.3%)
・米上院がトランプ大統領の国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を廃止する法案を否決
・米民主党のハリス前副大統領が民主党系女性団体の会合で演説(サンフランシスコ)
・中国の全人代常務委員会が中央軍事委員会の苗華委員の全人代代表資格の剥奪を発表
・ユーロ圏の25年1~3月期の実質GDP成長率の発表(前期比年率+1.4%)
5/1(木)
・トランプ大統領がウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名するとSNSに投稿
・トランプ大統領がイラン産原油の購入国に制裁を科すとSNSに投稿
・トランプ大統領が公共ラジオNPRと公共テレビPBSへの資金提供の停止を指示する大統領令に署名
・日米関税閣僚級協議(ワシントンDC)
・韓国最高裁が「共に民主党」の李在明前代表の公職選挙法違反容疑に関する上告審の無罪判決を破棄(ソウル高裁に差戻し)
・韓国の韓ドクス首相が辞任(李周浩社会副首相兼教育相が大統領代行)
・韓国の検察が尹錫悦前大統領を職権乱用罪の容疑で追起訴
・英統一地方選挙(イングランド、リフォームUKが大勝)
5/2(金)
・トランプ大統領がハーバード大の免税資格を剥奪するとSNSに投稿
・米行政管理予算局(OMB)が26会計年度(25年10月〜26年9月)の予算教書の概要を公表
・ワシントンDCの連邦地裁がトランプ大統領の法律事務所パーキンス・クイに対する権利剥奪の大統領令を違憲として恒久的に差止め
・中国からの小口輸入に対する非課税措置(デミニミス・ルール)の撤廃が発効
・韓国の韓ドクス首相が大統領選への出馬を表明
・ドイツ連邦憲法擁護庁が「ドイツのための選択肢(AfD)」を極右組織に認定
5/3(土)
・米国の自動車部品に対する25%の追加関税が発効
・米台関税協議(ワシントンDC)
・韓国の与党「国民の力」が金文洙前雇用労働相を大統領候補に選出
・シンガポール総選挙(与党・PAPが勝利)
・豪州総選挙(与党・労働党が勝利)
●トランプ政権100日(関税の影響と今後)
トランプ政権は、4月29日に発足してから100日を迎えました。トランプ大統領はミシガン州デトロイト近郊で演説を行い、これまでの成果を強調しました。
トランプは演説の直前に、数日後の5月3日に発動される自動車部品の関税について、米国内で生産された自動車に限り、その一部を免除すると発表しました(鉄鋼・アルミ関税とメキシコ・カナダ関税との重複も停止)。演説の舞台となったミシガン州の自動車メーカーに最大限アピールするタイミングを狙ったとみられますが、このように関税を段階的に緩和することは、これまでメルマガで予想したとおりの展開でした。
一方、米国の25年1~3月期の実質GDP成長率が発表され、前期比年率▲0.3%と、約3年ぶりにマイナス成長となりました。トランプは、このGDPの減少は「バイデンのせいだ」と主張し、「次の四半期の数字もバイデンのものだと言える」とも述べました。
政権発足100日の時点で発表されたNPR/PBS/マリストの世論調査によれば、トランプの支持率は42%、不支持率は53%となり、過去80年間で2番目に低い支持率となりました(最も低かったのはトランプ政権1期目)。政権への評価では、「F(不合格)」との回答が45%、「A」は23%にとどまり、無党派層でも49%が「F」と回答し、共和党支持者でも「A」と回答したのは54%にとどまっています。
これらの最新の情報を踏まえ、トランプ政権100日の評価、そして関税の経済的な影響と今後の見通しの主要なポイントについて解説します。