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山田順の「週刊:未来地図」
No.808 2025/12/02
資産フライト」(キャピタルフライト)再び。
この予算では円安は止まらない!
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高市政権が発足して1カ月あまり。ドル円は147円から157円になった。ドルに対してだけではない。円はユーロをはじめとする主要通貨に対して軒並み下落を続けている。
これは「円安」と言うより「円弱」であり、その原因は日本の財政悪化と国力(経済力)の低下だ。
そのため、投機筋の円売りはもちろんのこと、静かに「資産フライト」(キャピタルフライト)が進んでいる。投資家、一般個人による円離れがさらに進めば、円安は止まらなくなる可能性がある。
*今回の原稿は、「Yahoo!ニュース」に寄稿したコラムの拡大、詳細版です。
*写真:首相官邸ホームページより
[目次] ─────────────
■大型バラマキ補正予算に市場が警告を
■放漫積極財政で「トラスショック」の二の舞に
■「より破壊的な資本逃避が続いて起きる」と警告
■2011年「資産フライト」はなぜ起こったのか?
■「新NISA」が引き起こした新たな資産フライト
■対外証券投資は2017年以降一貫して黒字
■「高市円安」の主因は投機ではなく資産フライト
■持っているだけで目減りする現金と現金預金
■「積極財政」をやるなら財源は歳出削減に
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■大型バラマキ補正予算に市場が警告を
それにしてもなぜ、高市早苗首相を誰も支えようとしないのか? せっかく誕生した初の女性首相の“暴走”を、ただ冷ややかに見ているだけなのか? 明らかに日本を衰退させる「積極財政」(バラマキ)に歯止めをかけようとしないのか?
このままでは、円安による“亡国”は止まらない。
すでにその兆候は表れていて、市場は警告を発している。政府が21.3兆円という大型の補正予算を公表した11月21日、10年国債の利回りは2008年6月以来約17年半ぶりの高水準に達し、ドル円も157円台後半と1月中旬以来の安値を付けた。
これは前から言われてきたように、経済対策と称する政策(子供1人2万円給付、お米券配布、電気ガス料金補助なと)が、ほぼバラマキだからだ。給付金、補助金で国民生活は一時的には助かる。しかし、それだけのこと。しかも、円安が進めば、その効果は吹き飛ぶ。
■放漫積極財政で「トラスショック」の二の舞に
高市政権は、2022年に英国で起こった「トラスショック」の二の舞になるのでは見られてきた。財源が足りなければ国債発行で賄うなどという財政規律無視の放漫な姿勢が、危惧されたからだ。
リズ・トラス政権では、財源の裏付けのない大型減税政策が市場の失望を呼び、ポンド相場は37年ぶりの安値を記録。国債市場も崩壊寸前となり、放置すれば大規模な「資本逃避」(キャピタルフライト=資産フライト)が起こりかねなかった。
そのため、トラス首相は政策の大半を撤回せざるを得なくなり、その責任を取って辞任した。このまま、高市首相が野放図な積極財政に突っ込めば、ここまで進行してきた資産フライトは加速する。
■「より破壊的な資本逃避が続いて起きる」と警告
11月21日の「ブルームバーグ」の記事『日本国債と円、破壊的な資本逃避を警戒-トラス危機を想起とドイツ銀』は、ドイツ銀行の外国為替調査責任者ジョージ・サラベロス氏の指摘により、資産フライトが加速することを警告した。
サラス氏は「政府・日銀の低インフレへのコミットメント(積極的関与)に対し、国内の信頼が失われれば、日本国債を購入する理由が消失し、より破壊的な資本逃避が続いて起きる」とし、「日本市場のより広範な資本逃避の兆しを数週間注視していく」と述べている。
すでに資産フライトはじょじょに拡大して、今年に入ってからは加速している。これが、円安の原因の一つであるのは言うまでもない。
■2011年「資産フライト」はなぜ起こったのか?
私が「資産フライト」(文春新書)を書いたのは、2011年、あの東日本大震災の年である。当時、ドル円がなんと70円台を記録するなど、いまとなれば信じられないことが起こっていた。なにしろ、民主党政権は円高を阻止するためにドル買いの為替介入をしたくらいである。
それなのに、資産家はもちろん、一般サラリーマンからOLまで、日本円を持ち出して、海外のオフショアの銀行(香港のHSBCなど)に預金するのがブームになっていた。それを「資産フライト」と命名し、各方面に取材したルポが、私の本である。
ではなぜ、「資産フライト」が起こったのか?
それは、日本の先行きに不安があったからだ。経済衰退が続き、それとともに間違いなく円安になる。ならば、いまのうちの外貨(主にドル)に替えて置こうという動きである。
しかも、日本円で預金していても金利はほぼゼロ。複利
もない。所得税、キャピタルゲイン課税も高い。投資信託(ファンド)などの金融商品も少なく手数料も高いという「金融ガラパゴス」が、当時の日本だったからだ。
