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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.776:4半世紀後、2050年を考える----覇権国なき「暗黒、混沌の世界」の到来か?


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山田順の「週刊:未来地図」                 

No.776 2025/05/0

4半世紀後、2050年を考える---- 

覇権国なき「暗黒、混沌の世界」の到来か?

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 今年は2025年。21世紀になって4半世紀が過ぎた。では、あと4半世紀後の2050年、この世界はいったどうなっているだろうか?

 トランプのデタラメ、思いつき、行き当たりばったり、思慮なし、戦略なしの政治を見ていると、まったく予想がつかない。といっても、未来というものは、そう簡単に予想がつくものではない。

 たとえば、1850年の時点で、4半世紀後に江戸幕府が明治政府にとって代わり、武士がいなくなる世の中を誰が想像できただろうか?

 またたとえば、1920年の時点で、四半世紀後に大日本帝国が滅亡し、東京が焼け野原になっていることを誰が想像できただろうか?    2050イラスト©Adobe Stock

[目次]  ──────────────

■トランプは政治・経済を天気と同じにした

■漫才の世界にも、ギャグ漫画にもオチがある

■「1極覇権」がなぜ成立するのかわかっていない

■徴兵逃れのために親のカネで大学進学

■フォーダムもUペン・ウォートンも裏口入学

■姪によるとトランプは「社会病質人格障害者」

■「トゥキュディデスの罠」に向かうのか?

■過去16の事例中12例が戦争にエスカレート

■国内の分断で「アメリカ帝国」は自壊する

■挑戦国が次の覇権国になるとは限らない

■アメリカはローマ帝国にならって建国された

■ゲルマン民族流入と米不法移民は同じか

■なぜ中国はアメリカに代われないのか?

■台湾併合ができなければ世界覇権は握れない

■インド、EUが“漁夫の利”を得る可能性は?

■2050年、北極の氷はほぼ溶けている

■「シンギュラリティ」の到来は早まる!

■次の覇権国は人間国家ではなくAI国家

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■トランプは政治・経済を天気と同じにした

 

 4半世紀後、2050年の世界状況に関して、いま言えることは、アメリカが政治経済、文化の面で支配的な力(=覇権)を失い、世界が混沌としているということだけだろう。中国が次の覇権を握るという見方もあるが、そうはならないだろう。

 

 もちろん、トランプが去った後のアメリカが復活するという見方もある。しかし、赤と青に政治が分断され、貧富の格差が広がり、文化・教育も破壊されたうえ、国際社会の信頼まで失った国が、立ち直るとしても、それには長い時間がかかる。

 

 とにもかくにも、未来をこんなふうにしか思えなくしたのは、トランプである。その破壊力は凄まじい。政治・経済を天気と同じにしてしまったからだ。

 明日、雨が降るのか?嵐になるのか?いや晴れるかもしれない?というのでは、予測の立てようがない。

 

■漫才の世界にも、ギャグ漫画にもオチがある

 

 ここで、モノづくり(製造業)を考えてみよう。

 トランプ世界では、このままモノを生産していいのか?生産を絞るべきなのか? つくったとして、どこにどう売ればいいのか? まったく計画が立てられない。

  このまま取引を続けていいのか? 商品の価格設定をどうしたらいいのか?また、雇用をどうすべきか? 貿易・通商ルールが天気のように移り変わっては、ビジネスのやりようがない。

 

 投資家も個人も、もちろん、国家さえも、どう行動すればいいのか見通しが立たない。いったい、トランプはこの世界をどこに持っていこうとしているのか?

 

 漫才の世界でも、ギャグ漫画の世界でも、ここまでデタラメではない。なんらかのオチがある。しかし、トランプにはそれ(落とし所)がまったくない

 トランプのような、無学、無知、無教養で、ただ強欲、自己愛過剰の人間を、なぜアメリカ国民は選んでしまったのか?

 

■「1極覇権」がなぜ成立するのかわかっていない

 

 今世紀の世界、とくに第2次大戦後は「パックス・アメリカーナ」(アメリカによる覇権が形成する平和)で成り立ってきた。1極覇権世界である。これが、今日の世界の安定、成長、繁栄をもたらしてきた。

 歴史や地政学、政治学、経済学を学べば、こんなことは誰にでもわかる。

 

 ところが、トランプはこのことがわからない。トランプは、なぜいまのアメリカ、いや世界が成立しているのか知らない。1極覇権は覇権国1国だけでは成り立たず、それを取り巻く同盟国と共通ルールによって成立している。それなのに、彼は「アメリカさえよければいい」という「アメリカ・ファースト」を言い続けてきた。

 

 私のようなたいした学歴のない人間が、トランプの学歴を批判するのはおこがましいかもしれない。しかし、トランプの学歴は虚飾に満ちているので、そのことを、以下、改めて書き留めておきたい。

 

■徴兵逃れのために親のカネで大学進学

 

 トランプの祖父はドイツからの移民で、開拓者向けの安宿と売春業を営んでいた。その息子、トランプの父親のフレッドは、NYのクイーンズで不動産屋を起こして成功し、ドナルド・トランプは5人きょうだいの次男として、クイーンズで育った。

 

 トランプは、中学校まではクイーンズのフォレスト・ヒルズ地区の公立学校に通っていたが、あまりの素行の悪さに、13歳からは、父親によってニューヨーク・ミリタリー・アカデミー(陸軍幼年学校の1つ)に転入させられた。

 

 ミリタリー・アカデミーは全寮制で、軍事教練を取り入れたプログラムがある。ここで、厳しい教育を受ければトランプの素行不良は治ると、父親は考えた。

 しかし、トランプの素行不良はますます悪化。まったく勉強をしないから、成績も最低レベル。思い余った父親は、それでもカネの力で受け入れてくれるフォーダム大学に進学させた。当時のアメリカはまだ徴兵制を敷いていたから、大学進学は徴兵逃れであった。

 ちなみに、秋篠宮眞子内親王と“強奪結婚”した小室圭氏はフォーダム大学のロースクールに通った。

 

■フォーダムもUペン・ウォートンも裏口入学

 

 フォーダム大学はNYにあるだけで、名門でも難関校でもない。GPAとSATのスコアが低くても、親が寄付金を積めば別枠で入学できる。トランプは、ここに2年間通い、その後、アイビーリーグの1校Uペン(ペンシルベニア大学)のウォートンスクールに転向した。

 

 ウォートンスクールは、ビジネスとアカウンティングでは超名門で、ここでマスター(修士号)を取れば、ビジネス界ではエリートとなる。しかし、トランプが取得できたのはバチェラー(学士号)だけ。在学中は、ほとんど勉強せず、遊んでいたと言われている。

 しかも、フォーダム入学もウォートン転入も、完全なバックドア(裏口)だった。

 

■姪によるとトランプは「社会病質人格障害者」

 

 これらのことは、トランプが大統領になってから、彼の姪で臨床心理士のメアリー・トランプの暴露本『Too Much and Never Enough: How My Family Created the World's Most Dangerous Man』(尽きることなき貪欲さ:わが一族はいかにして世界一危険な男をつくり上げたか)によって明らかにされている。

 

 それによると、宿題は姉がやり、SATは謝礼を払った替え玉受験で、フォーダム大学入学のために父親はかけずり回った。ウォートン転入にいたっては、完全にカネによる裏口入学だった。

 

 また、トランプの父親はトランプの人格形成に多大な影響を与え、平気でウソをつける人間にしたと述べている。トランプは、彼女の専門家としての分析では、「社会病質人格障害者」(Sociopathic Tendencies)で、そのカルテもあるという。

 

 トランプの腹心で元顧問弁護士のマイケル・コーエンは、トランプの学歴と成績を世間に知られないように尽力し、2015年にはフォーダム大学に対し、トランプの成績証明書を公開すれば法的措置を取ると脅したことを認めている。

 

■「トゥキュディデスの罠」に向かうのか?

 

 このような男が、2度も世界覇権国のリーダーになるとは、どんな学者も想像すらしなかっただろう。民主主義の恐ろしさ、いや、既存メディアが衰退しネットのソーシャルメディアが興隆した結果だ。

 

 ただし、トランプには、一つだけわかっていることがある。それは、自分を脅かすのが、アメリカ覇権への挑戦国、中国だということだ。それを彼は、本能的にわかっている。

 しかし、高額関税をふっかけるだけでは、中国の挑戦を退けられない。

 

 地政学では、「トゥキュディデスの罠」(The Thucydides Trap)がよく言われている。アメリカの政治学者グレアム・アリソンが唱えた説で、古代ギリシャの歴史家トゥキュディデスが記したペロポネソス戦争(当時の覇権国スパルタと新興国アテネの覇権戦争)に由来した言葉だ。

 米中両国は、いま、この「トゥキュディデスの罠」にハマろうとしている。

 

… … …(記事全文9,468文字)
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