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山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.777:「愛子天皇」歓迎の読売社説が大波紋!なぜ保守派は「男系継承」にこだわるのか?


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山田順の「週刊:未来地図」                 

No.777 2025/05/27

「愛子天皇」歓迎の読売社説が大波紋!

なぜ保守派は「男系継承」にこだわるのか?

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 国民世論によって天皇は決められない。しかし、決められるとしたら敬宮愛子内親王になるのは間違いない。各種世論調査では、ほぼ8割の支持がある。

 こうした背景もあり、先ごろ、読売新聞が「女性天皇」ばかりか「女系天皇」まで容認するとした提言を公表し、保守派、右派の大反発を招いた。

 天皇制は日本が守るべき伝統だが、男系にこだわることが、本当に伝統を守ることなのか?「男系継承による万世一系」は、フィクションではないのか?

 

 写真:新年(令和7年)を迎えられた天皇ご一家、愛子さまこそ次期天皇にふさわしい©︎宮内庁 HP

 注:今回の記事は、この後、再編集して「Yahoo!ニュース」に寄稿する予定です。

[目次]  ─────────────────────

■読売新聞の天皇制への提言の中身とは?

■国会審議を超えた女性天皇、女系天皇の容認

■「女系天皇などありえない」と保守派大反発

■「男系継承」を天皇制の根幹とする理由

■AIが回答する「男系継承による万世一系」

■「万世一系」に科学的な根拠がない4つの理由

■遺伝子学から見たY染色体継承への疑問

■歴代天皇のDNA解析ができない宮内庁の壁

■解析できたとしても継承は確認できない

■遺伝子解析による「日本人3系統説」

■いないとする「女系天皇」はかつて存在した

■女性は天皇になれない皇室典範の時代錯誤

■男性、女性であることよりも大事なことがある

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■読売新聞の天皇制への提言の中身とは?

 

 さる5月15日の読売新聞は、多くの紙面を割いて天皇制の特集を組んだ。最大の注目は、1面の提言。ここで、読売新聞は、「皇統の安定 現実策を」との見出しを掲げ、次の4つの提言をした。


(1)皇統の存続を最優先に 安定的な皇位継承を先送りするな 

(2)象徴天皇制 維持すべき 国民の支持に沿った方策を 

(3)女性宮家の創設を 皇室支える皇族数が必要 

(4)夫・子も皇族に 与野党は合意形成に努めよ

 

 そして、3面の社説では「皇統の存続最優先に考えたい 女性・女系も排除すべきでない」との見出しを掲げ、保守を標榜する新聞としては画期的な「女系天皇容認論」を打ち出したのだ。

 

■国会審議を超えた女性天皇、女系天皇の容認

 

 読売提言の(1)と(2)に、異論を唱える人間はいないだろう。しかし、(3)(4)となると、これは、現在、有識者を入れた国会の審議会で議論されている方向とは大きく異なる。

 

 国会審議は、かつて小泉内閣のときに女性天皇を容認するところまでいったのにも関わらず、秋篠宮家に悠仁親王が誕生すると、この問題を棚上げしてしまった。そうして、男系による皇統の存続に欠かせない宮家の数をどうするかという点にばかりこだわっている。

 つまり、「皇室典範」にある男系継承そのものをどうするかを審議から外しまっているのだ。

 

 しかし、読売提言は、女性宮家の創設と、女性皇族の夫と子も皇族にするように要望している。さらに、女性天皇はもとより、女系天皇の可能性を排除しないように求めたのである。

 

 この提言を実現させると、皇統は現天皇の徳仁陛下の1人娘、愛子さまが継ぐことになり、女性天皇が誕生することになる。さらに、その先に、愛子天皇の子息が天皇になる道が開ける。

 

■「女系天皇などありえない」と保守派大反発

 

 この読売提言に対して、保守派、右派論壇、右派識者はいっせいに反発した。産経新聞は、読売新聞に対して提言の真意をただす記事を掲載し、自民党国会議員の多くが提言に反対するという見解を公表した。

 

 その1人、“コバホーク”こと小林鷹之前経済安保相は、「X」で、読売紙面を引用し、「女系天皇などありえない」というひと言で絶対反対を表明した。

 

 自民党の松本尚衆院議員は、(62)は、「読売新聞がこのような記事と社説を載せるとは驚きました。旧皇族の男系男子の養子案を進めるべきだし、女性皇族の夫子は皇族にしてはいけないでしょう」などと、記者に述べた。

 

■「男系継承」を天皇制の根幹とする理由

 

 保守派、右派の多くはこれまで、「男系継承による万世一系」こそが、天皇制の根幹だとしてきた。これを守らなければ、天皇の正統性は失われ、皇統そのものの基盤が崩れると主張してきた。

 つまり、彼らにとって、女系継承の容認は日本の皇統断絶、伝統崩壊を意味し、女系天皇を認めてしまうと、それは正統性のない別王朝になるというのである。

 

 この理屈には一理も二里もあって、最近では、「Y染色体」の存在が、この理屈を強化している。

 人間の性別は、X染色体とY染色体によって決定され、男性はXYで、女性はXX。つまり、Y染色体は、男性の性別を決定する遺伝子で、父から子にのみに伝わる。したがって、天皇の血筋はY染色体によって男性にしか伝わらないというのだ。

 

「歴代天皇は父親のY染色体を受け継いできた。これが、神武天皇以来、ずっと続いてきた。それなのに、女系天皇を認めると、神武天皇由来のY染色体が継承されなくなる。これは万世一系の破壊である」

 というのが、彼らの主張なのだ。

 

■AIが回答する「男系継承による万世一系」

 

 ここで改めて述べるまでもないが、男系継承は、「男尊女卑」「女性蔑視」とは、建前上別問題とされている。もし、そういう見地から論じられるなら、即座に、女性天皇、女系天皇が認められていいからだ。

 

 そこで、この問題の根幹である、天皇制の「男系継承による万世一系」は本当なのかどうか、資料、文献などを当たって述べるより、いちばん手っ取り早いAIに聞いてみることにした。

 AIが出してきた回答は、次のとおりである。

 

《「万世一系」は、天皇が神武天皇から現在に至るまで男系で126代も継承されていることを指す言葉です。これは、皇位継承が歴史的に男系に限定されてきたことを意味し、科学的な根拠はありません。

 

「万世一系」の歴史と背景

・男系継承の歴史:日本の歴史では、天皇の位は男系継承の伝統が確立していました。

・戦前の思想:戦前には、万世一系は日本が世界で唯一の単一王朝国家であることを強調し、天皇を神聖視する根拠として用いられました。

 皇室典範の制定:明治時代に皇室典範が制定され、皇位継承は男系男子に限定されるようになりました。

 女性天皇の可能性:近年では、皇室典範の改正を求める声も上がり、女性天皇や女系天皇の可能性も議論されています。

 

科学的な側面

・遺伝子:天皇の血統が万世一系であるという主張は、遺伝的な意味合いでは、男系継承が遺伝子を父から子へ受け継ぐことを意味するにすぎません。

・女性天皇の可能性:近年では、女系天皇を認めることによって、天皇の血統が母から子へ受け継がれる可能性も議論されています。

 

まとめ

「万世一系」は、歴史的な事実と伝統に基づいており、科学的な根拠はありません。近年では、皇位継承のあり方について議論が進み、女性天皇や女系天皇の可能性も視野に入れています。

 

■「万世一系」に科学的な根拠がない4つの理由

 

 さて、ここからは、AIが言うように、「万世一系」に科学的な根拠がないことを、さらに述べてみたい。現在では、遺伝子の解析があらゆる分野で用いられ、歴史が書き換えられているからだ。

 

 まず第1に、神武天皇由来のY染色体というが、これまで歴代天皇の誰1人として、遺伝子を調べられたことはない。ないのに、それが続いてきたと言えるのは、まったく科学的ではないし、根拠がない。

 

 第2に、天皇家の長い歴史に比べれば、遺伝子が発見されたのは、およそ100年前のことにすぎない。

 

  第3に、Y染色体以外にも形質を伝えるための遺伝的なキャリアはいくつも存在する。なのに、なぜ、性差を決めるY染色体だけに限らなければならないのか、明確な理由がない。

 

 第4に、私は専門外なので断言はできないが、遺伝子について学んだ人間なら、遺伝には「突然変異」「相同組換え」があることが常識なのに、それが無視されている。

… … …(記事全文7,675文字)
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