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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.775:中国に屈服したうえ債務の上限が迫る。このままでは、株価大暴落によるバブル崩壊か!


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山田順の「週刊:未来地図」                 

 No.775 2025/05/13

中国に屈服したうえ債務の上限が迫る。

このままでは、株価大暴落によるバブル崩壊か!

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 金融バブルが崩壊する、株価は大暴落すると言うと、またオオカミ少年かと思われ相手にされない。しかし、それでも性懲りもなく言っていれば、いずれそのときはやって来る。

 これまでのトランプ政権の動きを見ていると、そのときは目前のような気がする。すでに、金(ゴールド)をのぞいて、株価をはじめとする金融資産の相場は方向感を失っている。

 そんななか、アメリカは関税交渉で中国に屈服した。「トランプ砲は空砲だ」ということがはっきりした。そして、迫り来るのが「債務の上限」だ。これをクリアしないと、アメリカはデフォルトしてしまう。

 [目次]  ──────────────

■いまや中国なしでは成り立たない日常生活

■中国が持つ“伝家の宝刀”は米国債の売却

■米国債売却でなにが起こるのか?日本は?

■米国債を売って金(ゴールド)に替える動き

■「債務の上限」という危機が迫っている

■膨張し続けたマネーサプライは減少に転じた

■現金はゴミと同じ。ドル紙幣に価値はない

■裏付けなしの不換紙幣はでいくらでも発行可能

■それでもドルを使い続けてきたのはなぜか?

■債務上限の解決策として浮上の「永久国債」

■大恐慌時、NYダウはなんと10分の1に

■ドルを軽視しビットコインを重視のなぜ?

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■いまや中国なしでは成り立たない日常生活

 

 トランプの関税政策の錯乱ぶりを見ていると、とうとうアメリカ1極覇権世界、ドルによる世界支配が終わるのかと思えてくる。

 

 すでに何度か論じてきたが、トランプは中国を甘く見過ぎていた。だから、関税145%をふっかけた。しかし、その反動で国内経済がズタズタになるとわかると、「80%が正しい」などと口走り、ベッセント財務長官に丸投げ。「猶予期間90日で30%」というかたちで最初の対中交渉を終えた。

 これは明らかに、中国に屈服したということだ。

 

 中国の製造業は、世界の製造業の約30%を占めており、それなしではアメリカ国民の日常生活は成り立たない。しかも、かつてアメリカの覇権を脅かした経済大国ニッポンとは違い、すでに軍事力でもアメリカを上回ろうとしている。

 アメリカは同盟国の協力なしでは、中国を封じ込められない。それを、トランプの“化石アタマ”は理解できなかった。

 

■中国が持つ“伝家の宝刀”は米国債の売却

 

 アメリカにとって最大の中国リスクは、中国が米国債を

大量に持っていることだ。公式には、日本に次いで世界2位で、直接保有残高は7840億ドル(今年2月現在)だが、1兆ドルを超えているという見方が強い。

 

 これを売られたら、アメリカはひとたまりもない。ドルは暴落し、アメリカ経済は大混乱に陥る。ただ、中国は米国債売却という“伝家の宝刀”を抜くのは容易でないと見られている。いったい、誰が買うのかという、大きな問題がある。

 

 とはいえ、トランプ関税が発表された4月以降、世界屈指のリスクフリー資産とされる米国債は、買われるのではなく、売られている。

 

■米国債売却でなにが起こるのか?日本は?

 

 もし、米国債の投げ売りが起これば、国債価格は下がり米国金利は上昇する。そして、間違いなくNYダウは暴落。ドルも大幅安となる。アメリカの国内経済はリセッションに陥り、アメリカの世界覇権は大幅に後退する。

 

 ここで、問題になるのは米国債を中国以上に保有する日本はどうしたらいいのかということだ。これまで日本は、米国債売却を交渉カードにしたことはない。したくてもできない。

 ロシアは、ウクライナ侵攻前に米国債を売却した。中国もかつては日本以上に米国債を保有していたが、いまは相場を暴落させない程度に保有を減らし続けている。

 

 このような世界の動きのなか、アメリカ自身が窮地に陥るのが、これまで以上に国債発行を増やし続けなければ、財政が持たなくなっていることだ。

 

■米国債を売って金(ゴールド)に替える動き

 

 アメリカはこれまで、既発債の借り換えや財政赤字の穴埋めのため、国債の新規発行額を増し続けてきた。しかし、今後、日本以外に大口の購入者を確保できるだろうか。

 もしもFRBが買うとしたら、それは「財政ファイナンス」だから、通貨供給量が増えてインフレが加速し、ドルは暴落する。

 

 これまで、世界の投資家は、ドル資産を増やすことに専念してきた。米国債は最大のドル資産だった。しかし、ドルに不安があれば、米国債を売ってドルの現金に戻し、それをドル以外のなにかに投資しなければならない。

 ユーロか、スイスフランか、日本円か、人民元かという貨幣の選択はありえない。よって、いまは、金(ゴールド)が史上最高値を更新している。

 

 米国債は、じつはリスクフリー資産ではなく、リスク資産である。というのは、アメリカは「戦時国際法」を制定すれば、米国債を凍結、没収するという最終手段を持っているからだ。

 

■「債務の上限」という危機が迫っている

 

 5月10日、ベッセントは、8月にも連邦債務が法定上限を上回ると、議会に警告した。いわゆる「債務の上限」問題だが、この上限を引き上げないことには、アメリカはデフォルトしてしまう。政府機関の業務執行ができなくなり、職員の給料も払えなくなる。

 

 アメリカでは、もう半世紀以上にわたって債務残高も財政赤字も増え続け、その度に債務の上限が引き上げられてきた。債務の上限とは、要するに借金できる上限で、これを超えて国債発行ができなくなるということ。

 引き上げるためには議会の承認が必要だが、これまで何度も議会でもめてきた。

 

 今回は、すでに1月1日に期限が来たものを先送りされて来たが、それも限界に達するため、早急にトランプ政権の目玉とされる歳出削減と減税および5兆ドルの債務上限引き上げを盛り込んだパッケージ法案を可決する必要がある。それを、ベッセントは8月上旬までと要望したのだ。

 

 すでに、アメリカ連邦政府の手元資金は枯渇寸前となっている。ベッセントが見通した資金繰り動向から見ると、7月4日の独立記念日の休暇明けから議会が夏季休会入りする8月9日までがヤマ場になると見られている。

 この間に、なにかが起こると、大変なことになる。

 

… … …(記事全文6,765文字)
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