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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.771:これはアメコミ世界なのか? トランプ関税をまともに相手にしてはいけない!


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  山田順の「週刊:未来地図」                 

   No.771 2025/04/15

これはアメコミ世界なのか?

トランプ関税をまともに相手にしてはいけない!

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「国難」と石破茂首相が言って、交渉役として赤沢亮正経済財政・再生大臣を指名。赤沢大臣は、この16日に渡米、17日からワシントンで交渉に当たるという。なにしろ、日本がトップバッターというので、世界中から注目が集まっている。

 それにしても、なぜ、交渉しなければならないのだろうか? トランプが、勝手に始めたボッタクリ関税ではないか?

   はっきり言って、手土産も不要、譲歩も必要ない。

 トランプの手の内はわかっている。ここは、ごまかすだけごまかして、なにも約束せず、彼の失権を待てばいいのではなかろうか。いずれ、トランプは国民の支持を失い、自滅するに決まっている。

[目次]  ─────────────

■真っ先に交渉するのを歓迎する馬鹿ぶり

■トランプはアメコミに登場するヴィラン

■側近ニコニコの“関税祭り”ガーデンパーティ

■「なにかを治すには薬が必要だ」と強弁

■交渉相手のベッセントは頭脳明晰なゲイ

■ベッセント、グリアに期待しすぎる愚かさ

■交渉カードはすべて「手土産」なのか?

■妄想世界の住人を説得しようとする「愚」

■なぜ手土産がいけないのかの3つのポイント

■「日米貿易協定」の二の舞になってはいけない

■「アンカリング」と「狂人理論」の罠にハマるな!

■できうる限り長引かせ、協定を結んではいけない

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■真っ先に交渉するのを歓迎する馬鹿ぶり

 

 本当にとんでもないことになった。

 利にさといチャイニーズは、すでに、製品をいったん日本に運び込み、日本でパッケージしてアメリカに輸出する「迂回輸出」を始めた。今後、このようなことは世界中で起こり、世の中、「転売ヤー」だらけになってしまうだろう。

 

 国別に、「相互関税」の利率を変えれば、当然、こうなる。それをトランプは百も承知で、アメリカの製造業を復活させるという“妄想”に取り憑かれているとしたら、これはもう手に負えないと言っていい。

 

 それなのに、なんとか「お目こぼし」をしてもらおうと、日本政府はアメリカ政府と交渉する。本当に情けない話である。

「国難」などと大それたことを石破茂首相は口にした。そうして、交渉役として赤沢亮正経済財政・再生大臣を指名。赤沢大臣は16日に渡米し、翌17日からワシントンで交渉が始まる。

 トランプ関税で交渉をするのは、なんと、日本がトップバッター。それを歓迎し、日本はアメリカに大事にされているなどという声があるのに信じがたい。本当に、馬鹿げている。

 

■トランプはアメコミに登場するヴィラン

 

 ここで、思い返すのは、相互関税発表の日、4月2日のトランプの陶酔し切った表情である。ホワイトハウスのローズガーデンに側近と記者を集めて、「4月2日はわが国にとって『解放の日』になる」と、自画自賛。全世界を見下したような笑顔が、忘れられない。

 

 あの日、トランプは、得意げに事務方につくらせたボードを掲げた。そのボードに記された数字は、ノーベル賞学者ポール・クルーグマンもデタラメと断じるいい加減なもの。アメリカの小学校なら必ずある「ショー&テル」の時間でも、こんなことはしないだろう。

 しかも、関税をペンギンしかいない島にも適用するというのだから、これはもうアメコミの世界である。

 

 アメコミの世界では、常に世界を支配しようとする「悪党」(ヴィラン:villain)が登場する。悪党中の悪党、スーパーヴィランに至っては、例えば強大な力を持つマッドサイエンティスト、独裁者、悪徳実業家と決まっている。それが、なんとアメリカ大統領というのだから、世の中、本当にどうかしてしまった。

 

 たいていの場合、スーパーヴィランは誇大妄想の世界に生きていて、スーパーヒーローの宿敵となる。スーパーマンの宿敵レックス・ルーサーがそのいい例だ。トランプは、まさにスーパーヴィランではないのか。

 

■側近ニコニコの“関税祭り”ガーデンパーティ

 

 それにしても、なぜ、このような重大な発表を、ローズガーデンでやったのか? いくら天気がいいとはいえ、屋外でやるものではない。

 しかも、トランプはこの由緒あるローズガーデンの芝生を全部ひき剥がし、私邸マー・ア・ラゴのパティオのように硬い表面に舗装するというのだから、呆れるしかない。

 

 さらに呆れるのは、関税という世界を揺るがす深刻な問題なのに、その発表をするトランプを、商務長官のハワード・ラトニックなどの側近たちが拍手を送り、ニコニコしながら見ていたことだ。トランプが、労いの言葉を言うと、今度はエールを送ったりしていた。

 

 これは、まるで“関税祭り”。ガーデンパーティではないか。自国民に高額な関税を支払わせて、いったいなにが目出度いというのだろう。

 

■「なにかを治すには薬が必要だ」と強弁

 

 トランプは、はっきり言って“裸の王様”である。しかも、周囲はイエスマン、忠犬、茶坊主ばかり。誰も「王様は裸だ」と言う者がいない。それが、関税の発表会見ではっきりとわかった。

 

 トランプが宣言した「解放の日」から、株価の暴落、債券の投げ売りが始まった。下げてはやや反発を繰り返し、市場は明らかにダウントレンドになった。

 それを指摘されると、トランプは「なにかを治すには薬が必要だ」と強弁した。薬が必要なのは自分自身ではないのか。

 

 ただ、その後、相互関税の上乗せ分については、90日間の猶予を発表し、その理由を、「交渉したいという国が殺到している」とした。本当なのか?  そんなに多くの国が、交渉を申し出ているのか?

… … …(記事全文7,736文字)
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