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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.770:ディズニー映画『白雪夢』の大コケでわかる「Woke」系リベラル物語の終焉


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山田順の「週刊:未来地図」                 

No.770 2025/04/08

ディズニー映画『白雪夢』の大コケでわかる

「Woke」系リベラル物語の終焉

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 トランプ関税によって株価は暴落し、世界は大混乱に陥っている。しかし、これに対して、個人がどうしたらいいのかは、正直、わからない。ただ、私が言えるのは、こうなることを早くから予想していたことだけだ。経済の専門家たちは、ああでもない、こうでもないと言っているが、いまさら、分析・解説しても意味はない。

 そこで、今回は、こんな事態に陥った「Woke」(ウォーク:意識高い系)の行き過ぎついて考察する。リベラルが、トランプのような「ポピュリスト右派」に敗退したのは、「Woke」による「Political Correctness」(ポリティカル・コレクトネス:政治的中立性)、「DEI」(ディー・イー・アイ:多様性、公平性、包括性を実現すること)に、人々が嫌気がさしたからだ。

 それを象徴する出来事が、現在、起こっている。封切られたディズニーの『白雪夢』の実写映画の大コケである。はっきり言って、これは本来の『白雪夢』とは、まったく別の物語だ。

 なぜ、ディズニーはこんな映画をつくってしまったのだろうか?

[目次]  ─────────────────────

■巨額制作費の実写版『白雪姫』が早くも大コケ

■次作『塔の上のラプンツェル』が制作停止

■主演女優がラテン系で「黒雪姫」と揶揄される 

■全米で盛り上がった「BLM」運動で沈静化

■ゼグラーは原作を「変よ!」「そうしない」と

■王子さまの代わりに山賊団のリーダーが登場

■なぜ「Woke」映画ばかりになったのか?

■意識が高い系のリベラルの物語は終焉

■物語は時代、そのときの文化によって変わる

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■巨額制作費の実写版『白雪姫』が早くも大コケ

 

 ディズニーが総額推定2億7000万ドルという巨額の製作費を投入して鳴り物入りで公開した実写版映画『白雪姫』(Snow White)が、大コケしている。

 3月末に、日米ほぼ同時に封切られたが、すぐに失速、いまや、いつ打ち切りかが囁かれている。

 

 映画の興行成績を調査する「ボックス・オフィス・モジョ」によると、公開後初の週末の興行収入は、北米で4220万ドル(約63億円)。これは、これまでに実写化されたディズニー映画としては異常に低い。『美女と野獣』(Beauty and the Beast)は1億7475万ドル、『リトル・マーメイド』(Little Mermaid)は9557万ドル、『アラジン』(Aladdin)は9150万ドルだから、興行的には大失敗である。

 すでに、公開2週目、3週目となったが、1週目から大幅にランクダウンしている。

 

 オリジナル版の『白雪姫』(アニメ)は1937年に公開された作品で、ディズニー初の長編映画第1作。世界初の長編アニメーション作品で、ディズニーにとっては、記録的な興行成績を記録した作品である。それが、実写版になると、この体たらく。そのショックは、計り知れない。

 

■次作『塔の上のラプンツェル』が制作停止

 

 ディズニーは、先日、次に予定していた実写版映画『塔の上のラプンツェル』(Tangle)の制作を、一時停止すると発表した。これは、2011年のアニメ映画『塔の上のラプンツェル』を基にした実写リメイク版で、すでに脚本、監督が決まっていたが、制作は見送られた。

 

 言うまでもないが、『白雪姫』が大コケしたのが、制作中止の原因である。これにより、アニメ映画を実写化するディズニーの戦略は、見直しを迫られるだろうとアメリカのメディアは伝えている。


 では、なぜ『美女と野獣』『アラジン』などで成功を収めた実写版戦略は、『白雪姫』で通用しなくなったのだろうか?

 

 そのもっとも単純な答えは、「つまらない」からである。私は、孫がディズニー映画を楽しむ年齢でもあり、また、公開までにいろいろと物議をかもしたこともあり、好奇心で見に言ったが、正直、本当につまらなかった。これが『白雪姫』なのかと、目を疑った。私が知っている『白雪姫』とは、まったく違う物語になっていたからだ。

 

■主演女優がラテン系で「黒雪姫」と揶揄される 

 

 『白雪姫』は、これまでいろいろ報道されてきたように、制作段階からさまざまなトラブルがあり、そのたびに批判、非難、物議を醸し出した。

 まず、なんと言っても、主演女優にラテン系女優のレイチェル・ゼグラー(23)がキャスティングされたこと。

 

 レイチェル・ゼグラーは、ニュージャージー州ハッケンサックの出身。母親は南米コロンビアからの移民の娘で、父親は東欧ポーランドからの移民の家系で、自らを「ラティーノ・アメリカン」としていた。

 

 そのため、2021年6月にキャスティングが発表されると、本来の『白雪姫』の世界観を犠牲にしてまで「多様性」(Diversity)を推進するディズニーの「Woke」(意識高い系)の制作者による運動だとの反発が起き、「ポリコレ」(Political Correctness:ポリティカル・コレクトネス)が過ぎると批判された。

 そうして、なんと、「黒雪姫」(Snow Black)と揶揄された。

 

… … …(記事全文5,994文字)
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