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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.766:トランプの経済・金融政策はデタラメ!「金」(ゴールド)はまだ上がるのか?それとも?


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  山田順の「週刊:未来地図」                 

   No.766 2025/03/11

トランプの経済・金融政策はデタラメ! 

「金」(ゴールド)はまだ上がるのか?それとも?

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 トランプの経済・金融政策は、はっきり言ってデタラメだ。しかも、間違った認識、思い込みのうえに成り立っている。ドル安を志向し、低金利を目指し、世界中に関税をふっかけては引っ込めるという朝令暮改の繰り返し。

 これでは、市場は混乱し、まともな相場は形成されない。事実、ゼレンスキーとの会談が決裂した後から、NY株価は崩れ出した。

 そんななか、高値を更新・維持しているのが金(ゴールド)相場である。やはり、「有事の金」なのだろうか?

 金がなぜ資産として安定しているのか? この先、まだ上がり続けるのか? 今回は、歴史を振り返って、考察してみたい。

[目次]  ────────────── 

■コロナ禍後上昇一途で3000ドル突破目前

■金融緩和の救済マネーが金に向かった

■トランプのムチャぶりでNY株価は下落

■暗号資産を備蓄に加えるというバカぶり

■なぜ「金本位制」が採用されたのか?

■大恐慌が引き起こした金本位制の停止

■金本位制への回帰とニクソン・ショック

■下落予想に反して今日まで上昇トレンド

■トランプは「金本位制」の熱烈支持者

■各国の中央銀行が金を買い漁っている

■背景にあるのはドルへの信頼の低下

■なんと1オンス1万ドルになるという予想も

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■コロナ禍後上昇一途で3000ドル突破目前

 

 ニューヨーク市場の金価格(1オンストあたりの現物)は、2025年2月24日時点で2950ドル台の史上最高値を更新して以来、2900ドル台の高値を維持し続けている。コロナ禍が起こる前の2019年は1300〜1400ドル。それが2020年からどんどん上昇し、2023年末に2000ドルを突破して、このまま行けば3000ドルを突破しそうである。

 

 円価格で見ても、約1年前の2023年の後半は1グラム1万円前後だったが、現在は1万5000円を超えている。コロナ禍前は5000円台だったのに、2023年8月後半から1万円を超えるようになり、今年に入って最高値を更新している。

 

 これまでの傾向から見ると、金利が上昇すると金価格は下落する。なぜなら、金は金利を生まないからだ。しかし、現在の状況はこの伝統的な傾向に反している。2022年以降、アメリカの国債金利(10年もの)が4%を超えて上昇しているにも関わらず、金価格は上昇の一途である。

 

■金融緩和の救済マネーが金に向かった

 

 なぜ、コロナ禍になって、金価格が上昇を続けたのか?

 これは、じつに簡単に説明できる。それは、コロナ禍で窮乏した国民生活を助けるために、大幅な金融緩和、つまり国債発行によるマネーのバラマキが行われたからだ。この膨らんだマネーによって、あらゆるモノの価格が上がり、インフレが亢進した。株も不動産も、あらゆる金融資産が上がった。金も同じである。

 

 かつては、金価格は株や不動産などの値動きと逆相関すると言われ、これが市場の常識だった。しかし、ここ数年は、株や不動産などの上昇と同時に金価格も上昇していて、これまでの市場常識が通用しなくなっている。

 

 つまり、これは金融バブルであり、株や不動産の値上がりで資金余裕ができた機関投資家が、積極的に金を買っている。

 ただ、トランプの登場で、この状態がどうなるかはわからない。すべてバイデンと真反対のことをやろうとするうえ、思い込みが激しい。関税をふっかけては引っ込め、またふっかける。ゼレンスキーと喧嘩するような場面を見せつけられては、市場は様子見か、売りに転じるほかない。

 ただし、このトランプのムチャぶりが、かえって「有事の金」となって、金価格を上昇させる可能性が高い。

 

■トランプのムチャぶりでNY株価は下落

 

 それにしても、トランプのムチャぶりは度を超えている。関税をかけまくれば、自由貿易は成り立たなくなり、世界全体で経済成長は止まる。資本主義すら成り立たなくなる。アメリカ一国だけがトクをするなどありえない。

 そのため、トランプがホンモノの「関税バカ」とわかった時点で、NY株価は崩れ始めた。

 

 トランプが大統領に当選後、NY株価は上昇を続け、「トランプラリー」が起こったかと思われた。しかし、関税連発を繰り返した3月に入ってから、さすがの投資家も不安を感じ資金を引き上げ出した。

 

 トランプが関税で妥協する余地はないと発言した3月3日から、NYダウもナスダックも総崩れである。とくにナスダック100指数は、3月6日には2.8%と急落し、2月19日の過去最高値から見ると、なんと9.6%も下落した。

 

■暗号資産を備蓄に加えるというバカぶり

 

 ウオール街のPE投資会社からトランプ政権入りして財務長官になったスコット・ベッセントは、こうした事態になんの懸念も示していないので、投資家は呆れている。彼は単なるトランプの腰巾着で、金利は低ければ低いほどいいというトランプの発言を繰り返しサポートしている。

 これでは、市場はトランプのアメリカを完全に見限ってしまうかもしれない。

 

 トランプの金融・経済に対する無知、デタラメをぶりを見せつけたことに、「戦略的ビットコイン(BTC)準備金」設立するという大統領令を出したことがある。その後、BTCに加えて、イーサリアム(ETH)、エックスアールピー(XRP)、ソラナ(SOL)なども加えるとしたので、暗号資産の価値は高まったという見方がある。

 

 しかし、実際は逆で、こんなことをすれば、ドルの価値は低下する。暗号資産はもとより国が発行したもの(法定通貨)ではないし、しかも仮想空間にある、ただの投資商品だからだ。その後、BTCは下落した。市場はバカではない。

 結局、そんなこんなで、高値を維持しているのは金だけとなった。

… … …(記事全文6,773文字)
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