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山田順の「週刊:未来地図」
No.716 2024/04/16
半導体はそれほど重要のなか?
今後の世界を決する「技術覇権」の行方は?
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いま、世界中が半導体投資に湧いている。各国政府による莫大な投資資金(補助金支給)で、次々に新工場が建設され、NVIDIA(エヌビディア)に代表される半導体企業の株価は高騰を続けている。
しかし、世界の覇権を決する技術(テクノロジー)は半導体だけではない。むしろ、半導体より「生成AI」のほうが重要という見方があり、5Gの次に来る「6G」(第6世代移動通信システム)もまた重要な技術とされる。
残念ながら、この3分野において出遅れてしまった日本は、はたして遅れを取り戻せるのだろうか? 半導体を含めた「技術覇権」(テクノヘゲモニー)の現状と今後を展望する。
[目次] ─────────────────────
■バイデン政権が半導体企業に次々に補助金支給
■先端技術を渡さないという「封じ込め戦略」
■欧州も韓国も半導体に大規模投資を!
■中国は欧米をキャッチアップできるのか?
■欧州も韓国も半導体に大規模投資を!
■TSMCの2工場に合計1兆2080億円を援助
■半導体企業の設備投資に軒並み援助
■日本政府の半導体投資は成功するのか?
■ラピダスは最先端2ナノを製造できない
■日本の半導体産業の強みは製造装置にある
■技術覇権の主戦場は半導体より生成AI
■生成AIの開発・実用でも日本は立ち遅れ
■通信速度が現在の10倍以上になる6G
■日米連携で中国6Gを国内だけに封じ込める
■一歩先に進んでいる中国、対抗する西側
■国家が将来の技術を見極められるのか
■イノベーションには自由な環境が必要
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■バイデン政権が半導体企業に次々に補助金支給
現在、世界中の主だった政府は、半導体に莫大な投資をしている。
アメリカ政府は、4月15日、韓国のサムスン電子に対し、最大64億ドル(約9900億円)の補助金を支給する覚書に、バイデン大統領が署名したと発表した。
現在、サムスンは170億ドルを投じて、テキサス州テイラーに最先端の2ナノメートルの半導体を製造する工場の建設を進めている。これをアメリカ政府は援助するというのだ。
バイデン政権は、ここのところ次々に半導体メーカーへの投資を発表している。米インテルに最大で85億ドル、台湾のTSMCに最大で66億ドルの補助金をそれぞれ支給するという。さらに、米マイクロンテクノロジーにも補助金を支給するという。
■先端技術を渡さないという「封じ込め戦略」
アメリカ政府が最先端半導体に積極投資をするのは、半導体が戦略物資であり、その最先端技術は覇権を握るために欠かせないものだからだ。最近は経済安全保障が重視され、それにともない先端技術の開発・囲い込み競走が激化している。
いわゆる「技術覇権」(techno-hegemony.:テクノヘゲモニー)である。
バイデン大統領は、2022年8月、半導体業界に対する支援法案(通称「CHIPS法」:CHIPS and Science Act)に署名し、「これは一世一代のアメリカへの投資だ」と強調した。この「CHIPS法」により、アメリカ政府は今後10年間にわたって半導体などの先端分野に約2800億ドル(約43兆円)を投資することになった。
こうした半導体への莫大な投資の背景には、中国の先端技術に対する追い上げがある。中国に技術覇権を握らせないために、とくに半導体技術は囲い込んでしまおうというのだ。経済安全保障の面からいえば、ファーウエイ、バイトダンス(TikTok)などに対して行ってきたことと同じだ。アメリカは半導体企業への投資と並行して、中国に対し半導体の製造装置などの輸出を規制した。