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山田順の「週刊:未来地図」
No.717 2024/04/23
憲法改正論議は無意味!SF平和条約がある限り
日本は100年経っても独立できない!
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今年もゴールデンウィーク(GW)がやって来る。GWと言えば、そのちょうどど真ん中の5月3日に「憲法記念日」があるため、毎年、憲法論議が盛り上がる。今年も同じだ。
ただ、今年は岸田首相が自民党の悲願である「改憲」の発議を総裁任期中にする意向のため、いつもとは違う。すでに、衆議院では衆議院憲法審査会が開かれ、与野党の論議が続いている。
しかし、「改憲」と「護憲」という論議は、いくらやっても虚しいだけだ。争点である「第九条」を改正して新憲法を策定しても、日本の真の独立は得られないからだ。
GW直前の4月28日が、そのポイント。1952年のこの日、日本の国のかたちを決めた「サンフランシスコ平和条約」(SF条約)が公布・発効された。このSF条約がある限り、日本の真の独立はない。
[目次] ─────────────────────
■改憲の条文案の起草めぐる議論は平行線
■9月をめどの「改憲」発議と首相訪米
■盛り上がる保守言論「軍の保持を認めよ」
■国際法である「SF条約」は憲法より上
■「第九条」はアメリカの平和のためのもの
■バイデン大統領の“憲法発言”の意味すること
■SF平和条約に日本語の正文が存在しない
■SF平和条約も憲法と同じく武力放棄を規定
■日本の教科書にある「日本独立」は間違い
■右派も左派も心情は同じ「独立したい」
■世界に真の独立国家はどれくらいあるのか?
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■改憲の条文案の起草めぐる議論は平行線
衆議院では、憲法審査会が開かれていて、自民党などの与党側は「論点は出尽くしている。速やかに憲法改正の条文案の起草作業に入るべきだ」(加藤勝信・前厚生労働大臣)と主張しているが、立憲民主党など野党側は反対している。
立憲民主は「論点は多岐にわたるので、まだ数年単位の議論が必要」(奥野総一郎・議員)と尊重論を展開、共産党は「そもそも裏金議員に憲法を審査する資格はない」としたうえで、「改憲は自衛隊を米軍指揮下に組み込み、米軍の手足となって海外で戦争することになる」(赤嶺政賢・議員)と、強く反対している。
改憲発議に賛成なのは、自民、公明、維新、国民民主など4党1会派で、反対なのは立憲、共産などであり、このままでは、議論はどこまで行っても平行線である。
■9月をめどの「改憲」発議と首相訪米
憲法改正は、自民党の“悲願”である。岸田文雄首相にいたっては、9月の自民党総裁任期満了までの憲法改正を広言してきた。つまり、改憲は彼の公約である。
よって、「改憲発議ができなければ、岸田政権は終わりになる」という自民党幹部もいる。
岸田首相が改憲を急ぎたいのは、“悲願”とともに差し迫った現実的な理由がある。それは、先日、国賓待遇で招かれ、バイデン大統領との首脳会談、連邦議会スピーチなどで、日米関係を「かつてなく強固な信頼関係に基づくグローバル・パートナー」と強調したからである。
なんと、連邦議会スピーチでは「米国は独りではない」と述べた。これは、日米同盟が「日米安保条約」(Japan-U.S. Security Treaty)が規定する“片務”ではなく、双務的な軍事同盟であることを意味している。つまり、日本はアメリカとともに戦うと言っているのだ。
となると、現行憲法の規定を超えてしまう。つまり、第九条の改訂をしなければ、「米国は独りではない」はリップサービスになってしまう。