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山田順の「週刊:未来地図」
No.715 2024/04/09
なぜ、温暖化なのに桜の開花は遅れたのか?
今年も猛暑で気候変動が確実に経済を直撃する!
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この土日(4月6、7日)、東京ではようやく桜が満開になり、お花見を楽しんだ人も多いと思う。それにしても、今年の桜の開花は、天候不順で遅れに遅れた。
もちろん原因は、急速に進む「地球温暖化」(global warning)にある。ただ、なぜか日本では、温暖化(気候変動)に関する報道は少なく、それが社会、経済、生活に大きく影響することが軽視されている。
今回は、最近の温暖化状況に関する出来事をまとめ、今後の世界を展望してみたい。
[目次] ─────────────────────
■桜の満開が昨年より約2週間も遅くなる
■温暖化が進めば桜前線は意味がなくなる
■冬の寒さがないと桜はスムーズに開花しない
■赤い砂嵐で新疆ウイグルは火星のように
■ドバイ、サウジアラビアに雹(ひょう)が降る
■ジャンプは中止も!欧州のスキー場に雪がない
■カカオ豆の不作でチョコレート価格が高騰
■カカオもコーヒーも投機商品となった
■サンマが不漁で食卓から消えて久しい
■「磯焼け」によっての海の「砂漠化」が進む
■アワビ、サザエの収穫激減で値段は高騰
■アーバンベアの激増と動植物の絶滅リスク
■「環境難民」「水没難民」は日本でも発生する
■ベイエリアのタワマンを購入するリスク
■北海道へ丸ごと移転した岐阜県の酒蔵
■今夏もスーパーエルニーニョで猛暑は確実
■猛暑で消費は増えても経済はよくならない
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■桜の満開が昨年より約2週間も遅くなる
4月7日の日曜、私が住む横浜は朝から薄曇り。天気予報では、午後には日も差すとあって、午前中から三渓園にお花見に出かけた。行ってみると、入り口にはすでに行列ができ、園内は大勢の人出で賑わっていた。
この日、横浜管区気象台は、桜の満開宣言を出したが、これは「平年より6日遅く、昨年より13日遅い」とのことだった。ちなみに、東京管区気象台の満開宣言は4月4日と横浜より早く、平年より4日遅く、昨年より13日遅かった。
今年の春は、本当に変な春だ。冷たい雨の日が多く(これを「菜種梅雨」と呼ぶ)、晴れたと思ったら気温は急上昇。3月31日には、全国各地で午前中から気温が25度以上の「夏日」となった。東京都心では午前11時45分ごろに26.7度を記録し、これは1876年に統計を開始して以来の3月の最高気温だという。
春をとおり越して夏かと思うと、気温が一桁の冬日も続く。本当に春らしい日は少なく、これが桜の開花、満開に大きく影響したのは間違いない。
全国各地で行われる「桜まつり」は、どこも3月最終週に行われるが、今年は延期されたところが続出した。
■温暖化が進めば桜前線は意味がなくなる
地球温暖化は、フツーの認識だと、毎日が以前より暖かくなると考えられている。今年の春は寒い日もあったが、異例な夏日もあったので、全般的には暖冬だった。それなのになぜ、桜の開花・満開がこんなにも遅くなったのだろうか?
テレビの番組では、『温暖化と桜の関係』の研究で知られる九州大学名誉教授の伊藤久徳氏の解説がよく取り上げられていた。伊藤氏は、これまでの研究から、温暖化が進む2100年には、桜は関東から西日本にかけての広い範囲でほぼ同時期に一斉に開花し、地域差はなくなるという。桜前線が北上していくというような、これまでの常識は通用しなくなるという。
しかも、その開花日は2082~2100年の19年平均で3月25日~4月1日。これは、九州を中心に「開花しても満開にならない年がある地域」や「開花しない地域」が出現するからだという。
温暖化で桜の開花が早くなると思いきや、現実はまったく逆。むしろ開花が遅れたり、満開にならなかったり、開花そのものもしなくなるのだというのだ。