━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 山田順の「週刊:未来地図」 No.020 2013/01/22 いまこそ『八重の桜』が描く幕末・維新期に回帰し、未来を見つめ直そう ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ NHKの大河ドラマ『八重の桜』が好調な滑り出しを見せています。ヒロインの新島八重(綾瀬はるか)は、同志社大学の創立者・新島襄の妻として、幕末・維新期という激動の時代をたくましく生き抜いた女性です。経済が低迷し、政治が混乱を極める現代は、まさに第二の幕末・維新期と言えるでしょう。 ならば、私たちはもう一度、この時代にたち返り、私たちの未来を見つめ直すべきでは……。 [目次]──────────────────────────────────― ■“会津のジャンヌ・ダルク”から“ハンサムウーマン”に ■能力通りに女を評価せず、男にゲタをはかせる ■女性にゲタをはかせるかどうかの議論は本末転倒 ■“会津のジャンヌ・ダルク”の面目躍如のエピソード ■美人にはこだわらず、心が綺麗で学識豊かな女性を伴侶に ■“異教徒の妻”と白眼視された逆風にもめげなかった ■地位が低かったにもかかわらず明治女性は強かった ■「この目で世界を見て回りたい」と開港した函館へ ■アンドーバーからアマーストという最難関コース ■新島襄は脱国者。明治政府からパスポートをもらって帰国する ■若者は新島襄のように脱国するしか、将来が開けない ■近代日本の発展は海外に出た人間によって成し遂げられた ■「脱ニッポン」「さよならニッポン」が密かに始まっている ───────────────────────────────────――― ■“会津のジャンヌ・ダルク”から“ハンサムウーマン”に 『八重の桜』のヒロイン新島八重は、“会津のジャンヌ・ダルク”の異名をとり、会津戊辰戦争では男勝りの大活躍をする。その後、同志社大学の創立者の新島襄の夫人となり、今度は“ハンサムウーマン”と称される。まさに、激動の時代を生き抜いた先進的な女性だ。 ドラマでは、この八重の86年間にわたる激動の生涯が描かれるが、このドラマから、私たちが学ぶべき歴史の教訓は二つあると思う。 一つは、こんな女性がいたのに、現在も日本の女性の地位が著しく低く、社会的にも尊重されていない状況を一刻も早く改めること。もう一つは、夫・新島襄のような新時代のリーダーを一刻も早くつくり出すこと。この二つができれば、日本は低迷を脱して、また輝きを取り戻せると、私は思っている。 ■能力通りに女を評価せず、男にゲタをはかせる もうずっと私は思い続けてきたが、いまの日本の女性は、男性よりはるかに優秀だ。入学試験でも、入社試験でも、女のほうが男より必ずいい成績を取る。だから、この試験結果がそのまま反映されれば、一流大学はほとんどが女子大と化し、一流企業にも女性が男性より数多く入社し、管理職もほとんどが女性になっていたはずだ。 かつて会社員で管理職だったとき、入社試験の面接をやった。そこで面接に残った学生の試験の成績を見ると、女性の方が圧倒的にいい点数を取っていた。それなのに、面接に残したのは男の方が多いのだ。さらに、面接を重ねると、上位には女性がずらっと並んだ。それなのに、採用は男中心。優秀な女性を泣く泣く落とさなければならなかった。 このように、日本では、これまで男にゲタをはかせ、女性を排除してきた。こんな女性の能力を尊重しない社会に未来があるだろうか? 日本は女性差別国家、女性差別社会である。これが、100年前なら別だが、21世紀のいまがそうなのだから、あきれるとしか言いようがない。 ■女性にゲタをはかせるかどうかの議論は本末転倒 だから私は、日本が経済衰退した原因の一つに、女性を尊重しなかったことを挙げている。前のメルマガでも紹介したが、2012年12月17日、先進34か国が加盟する経済協力開発機構(OECD)が発表した「ジェンダー・フォーラム」の報告書では、日本の男女間の給与格差は40歳以上では40%にも上り、OECD加盟国中、韓国に次いでワースト2位。上場企業の役員の女性の割合はわずか5%で、加盟国中では最低レベルである。 そこで安倍内閣は、今回、党の執行部に女性を2人を起用した。高市早苗さんが政調会長になり、野田聖子さんが総務会長になった。しかし、これで本当に「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする」という公約が実現するだろうか? 数値目標を決め、それを達成するために女性にゲタをはかせる。それが、高市さんと野田さんで議論になった。それをメディアはおもしろおかしく伝えた。しかし、これは本末転倒だ。なぜなら、ゲタなどはかさなくとも、いまの女性は男性以上だからだ。 これまでゲタをはかせてきたのは男のほうである。だから、それを止めればいいだけの話だ。 ■“会津のジャンヌ・ダルク”の面目躍如のエピソード 日本女性がいかに優秀か。その実例として、1世紀以上前に活躍した新島八重の生涯を、ざっと振り返ってみよう。… … …(記事全文7,851文字)