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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

新刊『出版・新聞 絶望未来』(東洋経済新報社)のご案内

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    山田順の「週刊:未来地図」 番外編[01] 2012/11/01     新刊『出版・新聞 絶望未来』(東洋経済新報社)のご案内 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  おはようございます。山田順です。  今回は、勝手ながら私の新刊の案内です。11月1日、東洋経済新報社から『『出版・新聞 絶望未来』を上梓しました。プリントメディアが置かれている現状を主にビジネスの面から描き、その未来を展望しています。とくに電子出版には多くの紙幅を割いています。 ─────────────────────────────────── ■新刊刊行のご挨拶  現在、私は二つの方向で、ジャーナリズム活動をしています。一つは、このメルマガの内容が表しているように、主に「経済・社会」の面から取材・執筆をすること。もう一つは、「メディア論」の取材・執筆です。  私は編集者出身であり、現在、小さな会社を運営しながら、そこで編集者として紙と電子の両方で出版プロデュースを行っています。ですから、今後、メディアがどうなっていくのか?が、私がもっとも興味を持っているテーマです。  今回の本は、これまで出した2冊のメディア論、『出版大崩壊』(文春新書2011)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館101新書)に続くもので、俗に「4マス」と呼ばれる既存の4大マスメディア(出版、新聞、テレビ、ラジオ)のうちの出版、新聞という プリントメディアを中心に論じ、とくに電子書籍に関しては、かなり突っ込んで論じています。  この10月25日、アマゾンはついに日本版の「Kindleストア」をオープンし、今月から「Kindle」の販売を始めます。このアマゾン上陸で、日本の電子出版は進展するのでしょうか? その答も書いています。  現在、多くの出版社、新聞社が経営危機に見舞われ、その影響でジャーナリズム、コン テンツの質が落ちるという悪循環が起こっています。いったい、この先、プリントメディアはどうなってしまうのか? その答を私なりに追求したものが、本書です。 ■はじめに(全文)を紹介します  本書では俗に「4マス」と呼ばれる既存の4大マスメディア(出版、新聞、テレビ、ラジオ)のうちの出版、新聞を中心に論じている。とくに電子書籍には紙幅を割いた。当初は手を広げて、映像を含めたメディア全体を対象にしようと試みたが、問題点が多岐にわたり、手に負えなくなってしまった。 そこで、やはり、私自身が出版界の出身なので、いわゆる紙媒体(プリントメディア)を中心に話を進めることにした。ご承知のように、現在、多くの出版社、新聞社が経営危機に見舞われ、その影響でジャーナリズム、コンテンツの質が落ちるという悪循環が起こっている。  もちろん、この背景には、デジタル化、オンライン化の進展があり、既存メディアのライバルとして、ネットを基盤としたソーシャルメディアの急激な台頭があるのは言うまでもない。  いったい、この先、プリントメディアはどうなってしまうのか? プリントメディアに限らず、テレビなども含めた既存のマスメディアは、ネット世界の拡大のなかで、この先どう変化していくのか?  これを、なんとかわかりやすいかたちで展望してみたい、そうして問題点を整理しておきたいと思ったのが、本書の出発点である。    すでに、メディア論は山ほど書かれている。アマゾンでメディア関連のタイトルがついた書籍を検索するだけで、100冊は軽く超えてしまう。ただ、これらの本は、大別すると三つに分かれる。一つめは、最近のメディア、マスコミの質の低下を嘆き、既存マスメディアが持つ病理や欠陥、機能不全を告発するもの。二つめは、メディアを通した日本人論、文化論。そして、三つめが、メディア新時代、つまりソーシャルメディアや電子書籍の時代を解説する本である。  じつは、職業柄、私はこうした本をほとんど読んでいるが、共感できた本は多くない。というのは、メディア文化論のような本は、みな観念的、哲学的すぎて、頭でっかちであること。また、電子書籍などの解説本は、あまりに理想論すぎることが、自分の現場の感覚とかけ離れているからだ。  そこで、本書では、プリントメディアが置かれている現状を描き、現場から将来を展望することにした。また、文化論のようなものを排し、ビジネスとしてのメディアに重点を置くことにした。  端的な話、現在、日本のプリントメディアは毎年、縮小している。これは、日本経済そのものが縮小しているからだが、デジタル時代を迎えて紙という媒体そのものが時代遅れになりつつあることも、大きく影響している。  実際、最近のデジタル世代は、新聞も本もまったく読まない。メディアとの接触はすべてスマートフォン1台ですませるという若者も増えている。  日本の新聞の総売上は、2000年の2兆5223億円がピークだった。以後、いったん底打ちして上昇を見せた年もあったが、2006年以降は、毎年売上が1000億円前後減少するようになり、2010年には1兆9323億円と、ついに2兆円を割り込んでしまった。 一方の出版界の売上も1996年に過去最高の2兆6563億円を記録してからは、下降の一途となり、毎年、500億~1000億円減り続けてきた。そうして、2010年にやはり2兆円割れして、2011年は1兆8050億円まで落ち込んでしまった。  新聞、出版というプリントメディアが、これまでと同じように毎年1000億円縮小していくと、どうなるだろうか? 単純に言って、20年でゼロになってしまう。2032年には、プリントメディアは完全に消滅してしまうことになる。デジタル化、オンライン化のスピードはこの先さらに速まるから、あと10年ぐらいで紙という媒体はほぼなくなってしまう可能性も否定できない。    こうした未来に向けて、いま、米英のプリントメディアは必死になってビジネスモデルの転換をはかっている。すでに、『ウォールストリート・ジャーナル』(WSJ)、『フィナンシャル・タイムズ』(FT)、『ニューヨーク・タイムズ』(NYT)などの主要紙は、紙に注力するのをやめて自社サイトを課金モデルで運営するようになっている。また、ソーシャルメディアとの連携にも積極的に取り組んでいる。  出版社も電子書籍、電子雑誌時代に入り、ランダムハウスやハーパー・コリンズなど大手の売上の3割近くまでをオンラインコンテンツが占めるようになった。ただ、まだ収益モデルは確立しておらず、紙からオンラインに移行する過渡期にあると言える。  ところが、この日本では、新聞のオンライン課金モデルはまだ始まったばかりで、読者獲得もいっこうに進んでいない。電子出版は話題を呼ぶわりには市場としては成立していない。新聞・出版は旧来の紙によるビジネスモデルをなんとか維持しつつ、デジタル時代への対応を恐る恐る進めているだけだ。このような状況では、変革の潮目が一気に訪れたとき、どう見ても日本のプリントメディアは行き詰まるのではないだろうか。  となると、これまで、批判はあったがなんとか機能してきたジャーナリズムも機能しなくなり、マスコミは本当に「マスゴミ」になってしまうかもしれない。そうなれば、それこそ本書のタイトルのような「出版・新聞 絶望未来」がやってきてしまうだろう。  はたして、この先、プリントメディアは衰えていくだけなのか? ここで立ち止まって、じっくりと考えてみようというのが、本書の出発点である。 ■内容(目次)は次のようになっています 第1章 いつまでたっても電子書籍元年  日本は電子書籍専用端末の墓場なのか?  楽天の電子書籍専用端末「Kobo」への期待  アマゾンに価格決定権は渡せない  紙は定価で電子は自由価格  社長自ら「挑戦価格の7980円!」とアナウンス  「打倒アマゾン」と書かれた迷彩柄Tシャツ  発売直後からユーザーの苦情が殺到  なんでもいいからタイトル数を増やす?  やはり準備不足の「見切り発車」だった  電子出版市場ができ上がったアメリカ  電子書籍はイノベーションでなくサービス  「もう1台のデジタル端末」を買える購買力 第2章 電子出版の超えられない壁  ビジネスにして初めて電子書籍革命になる  大手出版社の電子書籍の制作現場  電子化は大手でも月に100冊がやっと  新会社「出版デジタル機構」の発足  サービスの名前を「パブリッジ」とした理由  株式会社なのに見えてこない「儲ける」方法
… … …(記事全文5,290文字)
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