ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00049/20230405084902107549 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 渡邉哲也の今世界で何が起きているのか 2023/04/05 第2921回 日本の半導体規制、中国の悲鳴が聞こえ始めた。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★中国が日本の輸出管理強化に反発している。米国に加え日本の半導体製造装置や技術が入らなくなれば、中国独自の半導体開発もままならなくなるからである。しかし、これが変化することはない。また、DRAMMとフラッシュメモリー大手マイクロンに調査に入るなど、圧力をかけているが、これも意味を持たない。マイクロンのメモリーは旧エルピーダであり、広島が主力工場、日本への圧力となると考えているならば、それは大きな間違いである。また、米国企業がらみの買収審査を遅らせるなど、いやがらせをしているが、これも間違いである。 何故ならば、マイクロンの主力世代は、半導体規制の対象となっており、もう中国に輸出できないからである。また、米国がらみの買収審査を遅らせたところで、他国政府による中国抜きで承認する動きが加速するだけである。企業にとっても、中国でのビジネスをしないということであれば、中国当局の顔色を見る必要もない。 『中国の国家市場監督管理総局は関連各社に対し、他国で販売している製品を中国でも販売するよう要請した。』というのが中国の苦悩を意味している。中国がこの規制をなくしたいのであれば、南シナ海への進出をやめ、台湾への圧力を廃止し、国際ルールに基づく資本移動の自由化や為替の自由化など、もともと中国が国際社会に約束してきたことを実施し、ロシアへの協力や国際社会での勢力拡大を過ちであったと認めるしかない。 しかし、それができるとは思えず、結果的に騒げば騒ぐほど、デカップリングは進化してゆく、アステラスの日本人社員拘束も、企業の経営者たちにとっては大きな問題であり、社員の安全を守るという善管注意義務違反に問われかねない事態であるといえる。『中国当局とうまく付き合えば、中国ビジネスができる』という時代は終わったのである。中国と付き合い続ける限り、米国から制裁を受け、西側ビジネスが破綻し、金融制裁などにより、企業が存続できない可能性が高いといえるわけだ。 すでに、中国からの静かな撤退が進んでおり、グローバルサプライチェーンからの中国事業の切り離しが行われている。また、駐在員なども緩やかに帰国させる動きが広がっており、特に半導体関連等では顕著化している。米国は10月7日の半導体規制で、米国人の先端半導体支援を禁じた。これにより、中国の半導体関連企業から、米国人がいなくなったわけだ。そして、米国人がいなくなった企業では新規の開発が停止している。 基本、技術開発は、開発元になるメーカーとそれを支える関連機器メーカーで成立する。半導体を設計したとしても、それを製造する技術が確立しなければ意味がないからである。このため、製造機器メーカーや素材メーカーは、開発営業の社員を出向させているわけだ。しかし、元になるプロジェクトが消失すれば、出向社員は要らなくなる。また、製造機器メーカーはメインテナンス要員も派遣している。これも不要となるわけだ。 そして、二次段階として、それらを利用する予定であった企業も生産ができなくなる。例えば、最先端のAIロジックを積み込んだEVを作ろうとしていたとしよう。しかし、AIチップが供給されないのであれば、EVのプロジェクトは停止する。ポイントになるのは、現行世代も輸出禁止になっているため、これまで販売されてきたものよりも、新規に発売するものの方が劣化するということである。これでは新たな需要は生まれない。 同時に、これらの企業は半導体が手に入る国や地域での製造を拡大させる。インドがその典型であるが、中国が持っていた輸出のシェアを奪ってゆくわけだ。これには西側先進国も大きな恩恵を受ける。キーパーツを内製化することで、国内産業の活性化を図れるわけだ。熊本がその実例であり、未だ、工場が完成していないが、その周辺地域には新たな工場開発計画が生まれ、ホテルなどサービス業もその恩恵を受け始めている。 ■中国、日本の半導体製造装置輸出管理巡り是正要請 https://jp.reuters.com/article/china-japan-chips-idJPKBN2W11J3?il=0 ■訂正(3日配信記事)-米マイクロン、中国政府の調査に協力 業務は通常通り https://jp.reuters.com/article/micron-china-idJPKBN2W103R?il=0 ■中国、米企業絡みの買収審査を遅延 輸出規制に対抗か=新聞 https://jp.reuters.com/article/china-regulator-deals-idJPL6N3670DJ?il=0 『中国の国家市場監督管理総局は関連各社に対し、他国で販売している製品を中国でも販売するよう要請した。』 ■中ロは同盟も敵対もせず、首相会談で李氏が表明=中国国営TV https://jp.reuters.com/article/china-russia-idJPKBN2W10TT?il=0 ■オーストラリアもTikTok禁止へ、セキュリティー上の懸念で https://jp.reuters.com/article/australia-china-tiktok-idJPKBN2W103H?il=0 ■SVB投資で多額損失のスウェーデン年金基金、株式責任者を休職に B https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-04/RSL85HT1UM1101?srnd=cojp-v2 ■「パーティー終わり急下降」か、カリフォルニアが発する米景気後退警報 B https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-04/RSLVD7DWRGG401 ■フィリピン、米軍が新たに使用する4基地を公表 https://jp.reuters.com/article/philippines-usa-defence-idJPKBN2W108W?il=0 ■中国、南シナ海のマレーシア石油事業に懸念表明 https://jp.reuters.com/article/southchinasea-malaysia-china-idJPKBN2W109L?il=0 ■反撃能力、存立危機事態でも行使可能=岸田首相 https://jp.reuters.com/article/japan-defense-idJPKBN2W10DR?il=0 ─────────────────昨日の市況──────────────── ■東京マーケット・サマリー https://jp.reuters.com/article/tokyo-markets-idJPKBN2W10K2?il=0 ■アジア株式市場サマリー:引け(4日) https://jp.reuters.com/article/idJPL4N3671E0?il=0 ■欧州市場サマリー(4日) https://jp.reuters.com/article/idJPL4N36733Y ■NY市場サマリー(4日)ドル2カ月ぶり安値、株下落 https://jp.reuters.com/article/ny-markets-summary-idJPL4N3673HE?il=0 『出展 記載なきものロイター Bブルームバーグ』 ────────────────────────────────────── 本メールマガジンに対するご意見、ご感想は、本メールアドレス宛に返信を お願いいたします。 ────────────────────────────────────── ■ 有料メルマガの購読や課金に関するお問い合わせはこちら ⇒ info@foomii.com ■ 購読アドレスの変更、配信停止はこちら ⇒ https://foomii.com/mypage/ ────────────────────────────────────── 著者:渡邉哲也(作家・経済評論家) ホームページ:http://www.watanabetetsuya.info/ Twitter:http://twitter.com/daitojimari メールアドレス:info@watanabetetsuya.info ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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