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渡邉哲也の今世界で何が起きているのか

渡邉哲也(作家・経済評論家)

渡邉哲也

第2897回 鴨葱不参加のG20 
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ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00049/20230303084509106239 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━     渡邉哲也の今世界で何が起きているのか        2023/03/03        第2897回 鴨葱不参加のG20  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★G20外相会談がインドで開かれた。この外相会談はG20首脳会談の前哨戦であり、準備会談ともいえるものである。しかし、この会談ではウクライナ問題等への大きな合意はなかった。そもそも論でいえば、G20はリーマンショック後の金融危機を受けて始まった会談である。先進国であるG7とBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)など13か国が一緒に会談を行ったものであり、当初はG20金融サミットと呼ばれた。そして、定例化することが決まり、G20として、毎年行われてきたものである。  しかし、それぞれの立ち位置の違いから、大きな決定をすることができず、G7はそのまま継続し、G20体制への完全な移行は行われなかった。また、このG20体制であるが、G7での決定を後追いで承認する側面も強かった。コロナにおいては、債務猶予など一定の役割を果たしたが、共通枠組みなど守られていない部分も大きい。そもそも論として、強制性がない組織では、何も決めることができないのである。すでにG20体制は瓦解している。  今回のG20外相会談では、ロシアをめぐる各国の対立が明確化し、ロシア、中国と米国をはじめとするG7と関係国、中立的な立場をとるインドと他の新興国という構図で何も決められない状態に陥っている。孤立を恐れるロシアとしては、中立的な位置にある国を仲間に引き入れようと必死だが、絶対的優位にないロシアに肩入れする国はなく、それは中国とて同じである。それよりも、G7等からの制裁や金融援助のカットの方が脅威であり、「ご馳走を食べて、お土産だけもらって食い逃げしたい」というのが本音であろう。  今回、日本は林外務大臣の代わりに副大臣を代理出席させた。代理人ではなにもできない。これは国会日程を優先させたものとされている。これはこれでどうかと思うが、こんな「魑魅魍魎しかいない地獄絵図」の中に、林さんを放り込んだら、「ネギをしょったカモ」になりかねず、ひとつの選択としては正解だったといえるだろう。G7の議長国である日本が外務大臣を派遣しなかったことでインドはメンツをつぶされたとしているが、本音は調整役として優秀なカモをしょったネギが来なかったことに対する不満であろう。  国内的な視点で「国会を優先したためにG20に参加できなかった」ことに関しては、国対の機能不全があると推測される。国会の日程は与野党の国対会談で決まる。これは与党第一党の自民党と野党第一党の立憲の間で話し合いが持たれ、日程と審議内容そして、国会にどの大臣が召喚するかが決まるわけだ。2月中に衆議院を通過した予算は3月から参議院での審議が始まる。立憲は最初の予算国会に林大臣の参加を求めた。これを自民党の国体が呑んだ。結果、林大臣のG20への不参加が決まった。しかし、野党の国対は機能不全にあり、野党間での話し合いができていなかった。だから、これを国民民主などが批判している構図となる。  自民党も呑まなければ良かったわけであるが、野党側も野党間できちんと調整しろという話なのである。どっちもどっちであるが、結果的に林大臣がG20に参加しなかったことは瓢箪から駒なのかもしれない。参加したところで何も得るものがないからである。 ★気球問題、ロシアと中国の接近などを受けて、米国議会は大きく動き始めた。下院委員会でのTiKToK禁止法の議決に加え、中国系アプリ全般の規制議論も始まり、これにホワイトハウスも協力することが明示された。また、米国商務省は対中投資規制プログラムの試験を数か月以内に実施すると明示し、バイデン政権誕生後止まっていた対中投資規制に関しても、一気に前に進む可能性が高まった。可能性を明示したことで、企業の「中国投資に対するリスク」が一気に拡大し、経営陣としても、知らなかったが通じなくなった。政権が警告しているものに対して、容易に投資することで万が一の場合、株主から訴えられる可能性が高くなったからである。約2年半の遅れとなったが、トランプ政権時代に仕掛けたワナが動き始めたといえる。 ■米ロシア外相が対面で会談、10分程度 ウクライナ侵攻後初めて https://jp.reuters.com/article/g20-india-idJPL4N35A389?il=0 ■米中外相、G20会合で会談せず 「今後の対話に期待」=米国務省 https://jp.reuters.com/article/g20-usa-china-idJPKBN2V41X2?il=0 ■中国、ロシアとあらゆるレベルでのコミュニケーション維持=外相 https://jp.reuters.com/article/g20-india-china-russia-idJPKBN2V4190?il=0 ■イタリア首相が訪印、モディ首相にウクライナ和平促進求める https://jp.reuters.com/article/india-italy-idJPKBN2V40TL?il=0 ■独首相、ロシアへの武器供与で中国けん制 「軍撤退の圧力を」 https://jp.reuters.com/article/germany-politics-scholz-idJPL6N35A07F?il=0 ■米政府、企業に対ロシア制裁順守を要請 回避手口に注意喚起 https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-usa-companies-idJPKBN2V41X5?il=0 ■米政権と議会、中国系アプリの脅威抑制で協力-レモンド商務長官 B https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-03-02/RQWFFADWX2PS01?srnd=cojp-v2 ■米、対中投資規制の試験プログラムを検討=商務長官 https://jp.reuters.com/article/usa-china-outbound-idJPKBN2V41SR?il=0 ■中国の貿易、外部環境が深刻な課題 圧力高まる見通し=商務相 https://jp.reuters.com/article/china-economy-trade-idJPL6N35A07V?il=0 ■再送米新規失業保険申請、2000件減の19万件 雇用減速の兆候見えず https://jp.reuters.com/article/usa-economy-unemployment-idJPKBN2V41G4?il=0 ■訂正米労働コスト、第4四半期3.2%上昇に上方改定 生産性は下方改定 https://jp.reuters.com/article/USA-ECONOMY-PRODUCTIVITY--idJPL4N35A3H3?il=0 ■韓国の1月の半導体在庫、1996年2月以来最速のペースで増加 B https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-03-02/RQVIAAT0AFB401?srnd=cojp-v2 ■英アームの中国合弁会社売却、当局が手続きストップ=FT https://jp.reuters.com/article/arm-china-idJPKBN2V40IR?il=0 ■米、台湾に6.19億ドル相当の武器売却承認 米中関係さらに悪化も https://jp.reuters.com/article/taiwan-china-defence-us-arms-idJPKBN2V40NI?il=0 ─────────────────昨日の市況──────────────── ■東京マーケット・サマリー(2日) https://jp.reuters.com/article/tokyo-market-summary-0302-idJPKBN2V40N3?il=0 ■アジア株式市場サマリー:引け(2日) https://jp.reuters.com/article/idJPL4N35A1M5 ■欧州市場サマリー(2日) https://jp.reuters.com/article/europ-mar-sum-idJPKBN2V41ST?il=0 ■NY市場サマリー(2日)ドル・利回り・株上昇、アトランタ連銀総裁が利上げ幅0.25%支持 https://jp.reuters.com/article/ny-markets-summary-idJPL4N35A3X8?il=0 『出展 記載なきものロイター Bブルームバーグ』 ────────────────────────────────────── 本メールマガジンに対するご意見、ご感想は、本メールアドレス宛に返信を お願いいたします。 ────────────────────────────────────── ■ 有料メルマガの購読や課金に関するお問い合わせはこちら   ⇒ info@foomii.com ■ 購読アドレスの変更、配信停止はこちら   ⇒ https://foomii.com/mypage/ ──────────────────────────────────────            著者:渡邉哲也(作家・経済評論家)         ホームページ:http://www.watanabetetsuya.info/          Twitter:http://twitter.com/daitojimari    メールアドレス:info@watanabetetsuya.info ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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