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渡邉哲也の今世界で何が起きているのか

渡邉哲也(作家・経済評論家)

渡邉哲也

第2390回 中国グレーターベイエリア構想と香港の消滅
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ウェブで読む(推奨):https://foomii.com/00049/2021071308394582421 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━     渡邉哲也の今世界で何が起きているのか     2021/07/13   第2390回 中国グレーターベイエリア構想と香港の消滅 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★DIDI問題、中国IT規制、香港問題これは一体であり、一連の中国政府の構想と計画によるものである。中国政府はかねてから「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」構想を持っており、広州(深セン)、香港、マカオを一体開発する計画を推進してきた。  中国政府から見れば、これを阻害してきたのが『香港の一国二制度』であり、『香港の自由』が一体化の大きな障害になっていたわけだ。民主化運動がその典型であるが、自治を認める=一体開発ができないことを意味する。また、自由都市香港の歴史的経緯とそこに流れる民主主義は、人民の自由を奪うことで成立する中国共産党の一党支配には不都合なものであり、これが本土に伝播することを避ける必要があった。  インターネットにおいても、中国は自由社会の一部であった香港との間にグレートファイアウオールを構築し、中国国内に入る情報を制限してきた。その上で、インターネット上の検閲を行い、自らに不都合な情報や人物を排除してきたわけだ。しかし、香港はこの枠外であり、香港においては西側のアプリが自由に使え、言論と情報の非検閲が担保されてきた。  そして、これは金融とも連動している。自由都市香港、それはアジアの金融センターであり、欧米と中国をつなぐ中継地でもあった。また、通貨もドルを裏付けにしたものであり、事実上ドルが流通する地域であったともいえる。そして、これは自由な情報が担保され、国家による不当な介入がないという前提でしか成り立たない。 これまで海外に進出したい中国企業の多くが、香港に上場し、同時にニューヨークを目指してた。海外進出にはドルが必要であり、自由に使えるドルを調達する必要があったからである。  しかし、昨年7月1日の香港国家安全維持法の施行はこの環境を一変させた。香港の自由とそれに基づく安全が完全に否定され、その後の摘発や民主化を否定する選挙制度の改悪により、香港は中国に取り込まれつつある。そして、最後の鍵になるのが情報ということになるわけだ。  情報を完全に中国に取り込まれた場合、香港は単なる中国の一都市になってしまう。今、中国はこれを行おうとしているといってよいだろう。そして、これは香港の金融の自由も奪ってゆくことになる。香港国家安全維持法では、外国政府の制裁などによる香港当局者などへの制裁的行為を禁じている。これは主に金融制裁に対応する銀行などが対象であり、銀行が米国政府の制裁に従い、口座の凍結や資金の没収を行えば、中国から制裁を受けることになる。米国は香港人権法、自治法により、香港のトップ11人に対する金融制裁を実施した。  そして、銀行はこれに従ったわけだが、これは香港国家安全維持法違反であり、中国がその気になれば銀行の営業禁止などを命じることができる行為ということになるわけだ。そして、中国は『反外国制裁法』を成立させ施行し、その前提となる包括的な法律も作り上げた。  この状況で発生したのが、DIDI問題であり、中国IT規制の強化、そして、中国IT企業による海外IPOなどの事実上の禁止と過去のIPOなどの精査と国内への上場替えの動きである。  米国の『外国投資説明責任法』がその典型であるが、外国で上場する場合、外国政府に監督権があり、たとえ外国企業であっても財務や営業内容に関して監査監督される。基本的に、これを中国政府は許していない。今まで黙認していたに過ぎないわけである。それは米国政府も同様であり、オバマ政権時代に結ばれた中国とのMOUで、適切な監査監督の権利を放棄してきたわけだ。  これはお互いにとって都合がよい関係であり、だから双方ともに黙認した。しかし、南シナ海問題や中国の軍事的政治的拡張によりこれを黙認できない状況になった。この状況では、これまでの都合の良い関係を清算する必要が出てきたのである。そして、そうであるならば、中国にとっては、米国の顔色を気にすることのない環境を作るのが得策ということになる。  『自由都市香港』を消滅させ、中国企業を国内回帰させる。米国の金融支配からの離脱を進め、米国の意思を忖度しないでよい環境を作る。今、これを中国が行っているといえるのだろう。  そして、この流れが進むとき、香港は単なる中国の都市のひとつとなるだけでなく、金融も深センに飲み込まれ、第一市場である上海に次ぐ第二市場深センの一部になってしまうのだろう。 ■中国、広東・香港・マカオに共通のデータプラットフォーム導入へ https://jp.reuters.com/article/china-regulation-data-idJPL4N2OO0WZ?il=0 ■中国の滴滴締め付けを深読み-ビッグデータ管理はどこにつながるのか B https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-07-09/QVYDI9T1UM0W01 ■米財務長官、EUに国際法人課税の支持要請 追加財政支援検討を https://jp.reuters.com/article/eurozone-eurogroup-yellen-idJPKBN2EI1LJ?il=0 ■中国のフィリピン軍攻撃、米国に条約上の防衛義務=米国務長官 https://jp.reuters.com/article/philippines-china-usa-idJPKBN2EI08S?il=0 ■米駆逐艦が西沙付近航行、主権侵害と中国軍 国際仲裁判断から5年 https://jp.reuters.com/article/southchinasea-china-usa-idJPKBN2EI0BJ?il=0 ■伊レイテーラのコロナワクチン、第2相試験で強い免疫反応示す https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2EI1LT?il=0 ■タイ、シノバックとアストラゼネカのワクチンを組み合わせ接種へ https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-thailand-idJPKBN2EI0PX?il=0 ■COVAX向けに中国2社のコロナワクチン調達=GAVI https://jp.reuters.com/article/idJPL4N2OO2TS?il=0 ■J&J、FDAとコロナワクチン巡り協議 まれな自己免疫疾患発症 https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2EI23N?il=0 ■台湾の鴻海とTSMC、ビオンテックのコロナワクチン購入で契約 https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-taiwan-idJPKBN2EI02H?il=0 ■ワクチン接種証明書26日から受け付け、海外渡航者対象=官房長官 https://jp.reuters.com/article/idJPL4N2OO0L5?il=0 ■欧州サッカー決勝戦のマスクなし観客、WHOが「破壊的」と批判 https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-who-euro-idJPKBN2EI0R4?il=0 ■中国当局、テンセント・ミュージックに独占権放棄命じる方針 https://jp.reuters.com/article/china-antitrust-tencent-idJPKBN2EI0BU?il=0 ■【市況】中国不動産業界でまたもデフォルト-過去最速ペースの不履行拡大 kabutan https://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n202107130012 ─────────────────昨日の市況──────────────── ■東京マーケット・サマリー https://jp.reuters.com/article/tokyo-markets-idJPKBN2EI0PS?il=0 ■アジア株式市場サマリー:引け(12日) https://jp.reuters.com/article/idJPL4N2OO1Z3 ■欧州市場サマリー(12日) https://jp.reuters.com/article/idJPL4N2OO374?il=0 ■NY市場サマリー(12日)ドル上昇、主要株価3指数が最高値 https://jp.reuters.com/article/ny-markets-summary-idJPL4N2OO3IP?il=0 記載なきもの出典 ロイター Bブルームバーグ ────────────────────────────────────── 本メールマガジンに対するご意見、ご感想は、本メールアドレス宛に返信を お願いいたします。 ────────────────────────────────────── ■ 有料メルマガの購読や課金に関するお問い合わせはこちら   ⇒ info@foomii.com ■ 購読アドレスの変更、配信停止はこちら   ⇒ https://foomii.com/mypage/ ──────────────────────────────────────            著者:渡邉哲也(作家・経済評論家)         ホームページ:http://www.watanabetetsuya.info/          Twitter:http://twitter.com/daitojimari    メールアドレス:info@watanabetetsuya.info ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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