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<Vol.1411号:増刊共通版:金融バブルの実態と24年末までの行き先(1)>
2024年2月21日:リーマン危機から16年の過剰信用が破裂するホームページ https://www.cool-knowledge.com
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著者:Systems Research Ltd. Consultant吉田繁治
昭和の末期、1989年の資産バブルを覚えている方は何名でしょうか。世界のトレーダーの平均年齢を40歳とすれば、35年前の記憶はない。2008年のリーマン危機も16年前です。24歳で金融業にはいった新入社員だったでしょう。
【株価バブル崩壊の体験はない】
両方のバブル崩壊の経験は、昔話として本で読むか、先輩から聞くものであり、体験ではない。これが「再びのバブル株価の協奏曲」になる理由です。バブルは、バブル崩壊の記憶が、時間の彼方になったあと起こります。
一方、テクニカル派のyoutuber高橋ダンは、「(1929-33年以来の)90年ぶりのバブル崩壊」を言い始めました。米国がGDPの4.5倍の、負債過剰の経済になったことの認識からであり、これは本稿のテーマと関連します。GDP(=国民所得)の4.5倍の負債では、返済はもちろん、金利も払えない。
例えれば、所得1000万円のひとが、生活費、住宅購入、株の購入で4500万円の負債です。金利を5%とすれば225万円の金利です。1000万円の、所得の世帯の利払いは、100万円/年が限界でしょう。利払いと返済の限界を超えた負債は銀行の不良債権になります。2024年の米国は、不良債権大国に向かっています。
【時価総額が900兆円のメガテック株は、トットコム・バブルに酷似している】
今回は、AIへの過剰な期待と、半導体のエヌビデアです。この点では、Windows95から2000年までのインターネットへ過剰期待がナスダックの株を上げた、「ドットコムバブル」に似ています。
ITベンチャーのナスダックの株価指数は、1996年は1000、2000年は5000(5倍)、2001年は2000でした。1年で60%下がったのです。株価のバブル崩壊は、負債の過剰から起こります。
(ナスダック株価;1994-2005)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Nasdaq_Composite_dot-com_bubble.svg
台湾の半導体メーカー、TSMCが工場を開く熊本県菊陽町でも、関連投資が殺到し、地価が31.5%上がっています(2023年)。
2008年のリーマン危機は、1990年の日本の、資産バブル崩壊のあと、18年目の金融デリバティブの崩壊でした。
【バーナンキの、リーマン危機への遅滞のない対策】
◎資産バブル崩壊後の、日本の不況とデフレの事例があったので、FRBのバーナンキ(恐慌学者)は、「日本のようには、金融緩和を躊躇しない」と言い、4兆ドル(600兆円相当)のドルを増発して銀行に注ぎ込み、2年で回復させました。日本では、約30年かかったのです。
2008年に7600ドルに暴落していたダウは、現在3万8600ドル、15年で5倍です。15年間、平均年率11.3%で上がってきました。尋常ではない金融相場です。
日本の資産バブルの崩壊は、その後30年のマイナスからゼロ成長をもたらしましたが、米国ではマネー増発による「成長」でした。
【FRBのドル増刷】
(1)リーマン危機のあとは、FRBのドル増発(4兆ドル)、
(2)2020年からは、コロナ対策のドル増発(4兆ドル)が加わって、金融とIT経済になっていた米国の名目GDPは、14.4兆ドルから26.5兆ドルまで1.8倍に伸びたのです。
【マネー増発と、物価及びGDP】
FRBのバランスシート(=FRBのドル発行額)は、リーマン危機の前までは1兆ドルでしたが、その後の15年間で9兆ドルにまで増え、9%のインフレ対応だった利上げ開始の22年3月以降は、1.5兆ドルのQE(量的縮小)が行われています。
(FRED FRBのBalance sheet :2004-2024.02)
物価の上昇率を引いた実質GDP(=生産された商品の数量)では、2008年比は1.3倍です。15年間で米国の物価は、1.8÷1.3=1.4倍に上がっています。
【日本と米国の経済構造の違い】
マネーの増発で、1)実質GDPの伸び率、2)物価、3)株価が上がった米国と、日銀が異次元緩和で500兆円のマネーを増刷してもこの3つが上がらなかった日本では、3つの面での、経済構造での違いがありました。
日本では、
(要素1)商品の需要が増えない、高齢化と人口減であり、
(要素2)GDPのなかの金融経済化(=債券売買の利益)は少なく、
(要素3)ITの開発と導入も、弱かったので、
資産バブル崩壊後のデフレの時期に、インフレ目標2%として日銀が500兆円の円を増発しても、GDPと国民所得は増えませんでした。(注)物価が下がるデフレは、流通するマネー量(マネーサプライ×預金の回転率)の低下であり、物価が上がるインフレは流通するマネー量の増加です。
米国では、「人口」は移民(現在は不法移民300万人/年)で増加し、「金融経済化」と「IT経済」が世界1進んでいた米国では、リーマン危機とコロナ危機に対する、FRBのドル増刷(8兆ドル)によって、その後の株価、地価、GDPを上げてきたのです。
金融経済化とは、銀行からの負債が増えて、所得のうちの債券と株投資のキャピタルゲインが増えることです。世帯所得、企業所得のなかの、株と債券の売買の利益が増加することです。
IT経済化とは、約2倍の所得のIT従事者が、増えることです。IT経済では、物的な設備投資が、人的な投資(人材教育と高所得)に変わります。
この両面で、1990年からの日本は弱かった。日銀による、500兆円の円の増発があっても、そのマネーは、国内のGDP増加には向かわなかった。
【ドル買い(=円売りの円安になった)異次元緩和マネーの500兆円】
ゼロ金利の過剰マネーは銀行の当座預金(金利0%)を上滑りし、
1)米国の国債買い、
2)ドル債券の買い、
3)ドル株の買いに向かったのです。
(累計で1000兆円の対外金融資産を購入=日本対外資産)
【資産バブルの特徴】
不動産と株価バブルの、もっとも大きな特徴は、社会の構成員の90%以上が、「この価格はバブル価格ではない。合理的な価格」と考えることです。1989年(日本のバブル)、2000年(米国のIT株バブル)、2007年(不動産のサブプライムローンバブル)、2024年(株価と不動産のバブル)も同じです。
「出遅れていた日経平均が、1989年の価格を超える理由がある」と主要メディアは報じています。ファイナンス理論では、「情報と予想に対する株価の出遅れはない」。
新聞と証券会社が言う「日本株の出遅れ」とは何でしょうか。バブル株価の米国に追いついていないというだけの意味です。現在、東証での株の売買が、2.5兆円/日から、5兆円/日へと2倍に増える活況を呈しています。買い手が2倍、売り手も2倍です。
日経平均は、ついに1989年12月末の日経平均の最高価格(3万8900円)を超えました。米国では、ダウが3万8600ドル、歴史上の最高価格です。不動産もまだ高い。
【米国の商業業不動産が、バブル崩壊の先駆け】
住宅は売りに出る供給の減少のため、高値を続けています。
しかし、コロナのあとのリモート会議の増加が起点になって、リモートワークが40%に増えた商業用不動産は、下落を開始しました。(注)リーマン危機のときは、商業用不動産は2年で、0.9×0.7=0.63・・・37%下がりました。
米国のワークスタイルは、仕事として行うことが業務業基準書で会社と契約されていて、成果主義の出来高給なので、リモートワークに馴染みます。メンバーシップ型の雇用であり、出勤型の日本とは働き方が違います。
商業用不動産の価格は、前年比でマイナス20%あたりです。
(Pictet:米国商業用不動産価格指数:前年比:2000-2022)
https://fred.stlouisfed.org/series/COMREPUSQ159N
〔予想〕2024年中に20%、2025年に30%は下がるでしょう(ボトム価格は50%安を予想)。これは、ほぼ確実です。商業用不動産の空室が30%に近いからです。空室が、5%の正常値まで埋まる可能性はない。
2024年は不動産企業の倒産と、銀行危機になっていくでしょう。商業用不動産は、リーマン危機のあとの1~2%の低金利の負債で作られていて、2023年以降の5%の金利になると赤字になるからです。
成り行き価格なら即日に売れる株と違い、価格が下がるときは買い手を探すことが難しくなる不動産の価格は遅行指標であり、金利が上がって約、1年後の借り換えから下がっていきます。
【銀行の融資】
中堅・中小銀行の、商業用不動産融資は、平均で総融資の40%です。不動産価格が50%に下がると、銀行の総資産の、20%の不良債権になって、中堅・中小銀行の全行が破産します。
米国金融の「連鎖するシステミックな危機」は、
・早ければ、2024年9月、
・遅くとも、2025年には確実でしょう。
不動産が30%以上下がったとき、銀行の不動産貸付金は無事ではあり得ないのです。
◎今回はFRBのバランスシートが膨らみすぎていて、リーマン危機とコロナ危機のときのマネー増発という対策を持てないことが、問題です。一体、どうなるのか・・・本論で述べます。
商業用不動産が、高い価格を維持する見込みは、ありません。社員1人あたり面積をムダに2倍にする会社はない。テナント料(不動産コスト)が2倍になり、会社が利益をなくし、株価は下がって自分が破産するからです。
【商業用不動産に遅れて続くのが住宅価格】
なお2年で40%上がった住宅価格も、上昇率が7%に下がっています(23年10月)。2024年から住宅価格も下落期にはいります。
住宅価格は、ビジネス用なので動き早い商業用不動産の約1年あとを追って下がっていきます。2025年には全米の住宅価格が、10%から15%は下がるでしょう。これは、リーマン危機のときにように住宅ローン証券(MBS)を20%は下げ、銀行危機なるのです。
◎新規と借り換えローンの金利払いが2倍(6%から7%)になった住宅価格も、上がる要素はなくなっています。ローン金利が6%になると、全米の住宅価格は理論値で26%は下げます。
以上はプロローグです。ここから本論に入りますが水曜日の有料版正刊とします。今回は、有料版・無料版共通ではありません。
株価が史上最高価格になった日に、バブル崩壊を言うのは「性格が悪い」と思われるかもしれません。3つの理由があります。
【当方の経験】
(1)1990年から1997年の金融危機までの、日本の資産バブル崩壊を経験したこと。
(2)2008年のリーマン危機も、住宅価格の下落から予想したこと。
(3)今回の株価・不動産バブルが、
・1985-1989年の、日本のプラザ合意(ドル1/2)のあとの、不況対策として円の過剰発行を原因とし、
・2008年のリーマン危機から、2020年のコロナ危機、2022年のウクライナ戦争年では、ドルの過剰発行を原因としていること。
今、パーティーの絶頂の最中(市場の売買額が2倍)ですが、外は暗闇です。パーティーの雰囲気のなかで騒ぐのは、大いに結構です。外が暗闇であることを決して忘れず、株価の傾向が5%変わったときは、売って現金化する準備が必要です。
【行ってはならないこと】
もっと利益が出ると逆張り(下がる局面で買うこと)で欲張るのは、今回は御法度でしょう。
高価なシャンパーンを飲んだ(=利益を出した)パーティーのあとの脳内余韻(ドーパミン)の楽観は、6か月は続くことを忘れないように・・・。現在の価格が、2024年にもっと上がる要因は、消えています。
普段の2倍である1日5兆円の、東証の売買の内容は。およそ以下でしょう(2024年2月22日)。
(1)ガイジンファンドが3.5兆円、日本の個人投資家と日銀も含む機関投資家が1.5兆円売り、含み利益を確定。
(2)ガイジンファンドが3.5兆円、個人投資家が1.5兆円買って、上昇を期待。機関投資家は、売る以上には買っていません。
これが楽観のパーティーです。
【ビットコインバブルも伴っている】
2024年の年初の400万円から2月22日に770万円へと1.9倍に上がったビットコインも同じです。2か月で95%も上げる合理的理由はなく「バブルの気分」。
人民元が、「不動産危機~銀行危機」から下がっているので、人民元売り/ドル買いに上限規制がある中国で、元の「代替資産」としてビットコインが陰で買われています。中国の富裕者の銀行預金が海外に逃避しているのです。日本の株と不動産も買っています。
(人民元/ドルのレート:2022年1月0.157ドル→24年2月0.139ドル:-11%)
https://www.google.com/finance/quote/CNY-USD?hl=ja&window=MAX
【選挙年は、政治的になる株価】
2024年11月は、大統領選挙です。米国経済を代表する株価が下がっていると2期目の現職は負けます。バイデン不利に躍起になった民主党と米政府が必死に株価を上げるAIと半導体の煽り、そして新規雇用統計の偽装、金融の操作に走っているのではないか。憶測ですが・・・あり得ることです。
内閣への支持率が14%(左派の毎日新聞)と最低の岸田首相も、「日本経済が認められた」と明るい顔で記者会見をしています。歴代の首相で米国にもっとも強く従属しているのが岸田首相です。2024年中の、衆議院解散も予想されています。
日本政府は貯蓄から株投資へという政治のスローガンをかかげ、無税投資枠の累計1800万円のNISAも作って、円株・米国株を売る営業をしています。政府が、株のセールスマンであり異常です。
安倍元首相は、議論をしたあと従っていました。岸田首相は、米国民主党とバイデンに忖度(そんたく)の隷属をしています。4月の国賓待遇の米国訪問が、支持率回復の希望です。2022年はG7の開催優先でした。人物はアルミの鍋のように底が浅い。国民の現在を映しているのか。
【新聞情報の性格と、言外に含む情報】
日経平均が3万9000円を超えたあとの日経新聞は、株価が上がった理由を推測し、大量に書いています。数字となった事実情報は過去のものですから、過去に上がった理由であり、2024年中に続くというものではない。
しかしその言葉の裏には、「昨日まで上がったから将来も上がるという、根拠のない推計」が含まれています。「上がったという事実とその理由」についての記事を多く読むと、投資家のたぶん70%は、「自分の認識は、世間の流れに遅れているのではないか」と買いに走る。その結果が、東証の売買高の1日5兆円付近(約2倍に増加)の活況です。
〔株価を作る売買の事実〕日経平均が最高価格をつけた、2024年2月の2週に買い越しているのは、(1)証券会社の自己売買(6346億円ともっとも大きい)、2)24年1月から続いているガイジンファンドの買い越し3013億円(2024年は2月2週までの累計で2兆7000億円の買い越し)。
もっとも大きく売り越しているのは、1)金融機関の機関投資家4554億円、2)個人投資家3164億円です。(安藤証券:投資家主体別買い越し、売り越し)
https://www.ando-sec.co.jp/market/movement.html
・・・つまり1月からの株価上昇は、インサイダー相場でしょう。証券会社は、もっとも近くでしかも一般投資家より早く企業情報を知ることのできる立場にいます。大手ファンドも同じです。ガイジンファンドの買い越しがなくなると日本株は下がります。新聞は、ガイジンファンド日本株買い越しは3月も続くとしているのです。これに根拠はあるでしょうか?
公正に見るには、(1)株価に肯定的な材料や理由と、(2)否定的な材料、理由の両方を照らし合わせてその上で判断することです。
それを、水曜の正刊で行います。ここで、恒例になった土曜の増刊を終わります。
【後記】
2024年の金価格(ドル建て:1オンス(31.1g)=2035ドル)は上がっていませんが、ポートフォリオ3分法で示したスイスフランは、2019年の111円から上がり続けて、2月24日は170円付近です。
原因は、スイスフラン高ではなく、1ドル140円~150円の円安です。短期金利がマイナス0.1%の円マネーが、短期金利5.5%のドルを買って海外に流出しています。原因は、円の金利が、世界でもっとも低いからです。円と一緒にマイナス金利だったスイスフランの金利すら、今は1.75%です(2022年5月までは、マイナス0.75%でした)。
(世界の政策金利)
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