… … …(記事全文2,209文字)高市首相は3月19日に訪米して、トランプ大統領と会談する。それまでに、日本側交渉代表の赤沢亮正経済産業相やスタッフの霞が関官僚は対米投資の第1弾合意を図らなければならない。第一弾プロジェクトは、ガス火力発電プロジェクト、原油積み出し港建設及び人工ダイヤモンド工場の3分野である。
収益性が高い有望プロジェクトなら、わざわざ日本の政府系機関が出融資、保証するまでもない。米国の事業者や投資ファンドはさっさと米金融市場で資金調達し、投資するだろう。現に、米国ではデータセンターと発電所の建設ラッシュだが、日本の政府系金融機関の関与がなくても、資金調達の問題は生じていない。
その点、上記のガス発電プロジェクトは利権がらみのいかがわしさが漂う。主事業者と目されるのはソフトバンク・グループで、総額約400億ドル(6兆円超)の巨大案件である。25年10月28日に日米両政府が交わした「投資に関する共同ファクトシート」では、ソフトバンクグループについて「大規模電力インフラ構築のための仕様、設計、調達、組立、統合、運用、メンテナンスを設計、開発する」とある。ところが、ソフトバンクには大規模火力発電の主契約者、あるいは統合エンジニアリングの経験は皆無である。なのに主契約をとればコンサルティングだけでも事業規模の3割もの収入を手中にできる。赤沢氏や霞が関官僚がこのまま米側に押し切られて、ソフトバンクグループの発電プロジェクトに投融資して損失が生じた場合、最終責任を負うのは高市首相となる。
中国の習近平共産党総書記は製造業の世界覇権を狙い、日本企業に対しては最先端の技術の持ち込みを強要し、応じない企業には電磁モーター、半導体などの製造に欠かせないレアアース(希土類)などの供給を制限する。自動車大手は経済威圧に屈し、すそ野を支える部品メーカーを引き連れて最新鋭の工場を中国に建設する。
米国ももとより、自動車など日本企業の投資によって製造業を維持してきた。前述した米国の製造業資本ストックの上昇基調には少なからず日本企業が貢献している。トランプ政権はそれだけでは満足しない。2025年7月には石破茂前政権に対し高関税をちらつかせ、2029年1月までに総額5500億ドル(円換算約84兆円)の対米投融資の約束を引き出した。トランプ政権が選ぶ大型プロジェクトに対し、日本側は米側の指定する米国の銀行口座に必要資金ドルで指定期日までに振り込まなければならない。そのために、政府系金融機関の国際協力銀行と日本貿易保険が出融資や融資保証を行い、日本の民間金融機関がプロジェクトに融資するという仕組みである。日本側が米国に言われるままに資金を供給する現金自動預け払い機(ATM)の役割を果たす。拙論がそう批判すると、某霞が関官僚OBは「あくまでも貸付枠の話だ」とムキになって反論してきたが、その後の展開はまさにATM以外何でもない。
