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増田悦佐(エコノミスト・文明評論家)

増田悦佐

講演録『2026年 暴落する米国経済』 前篇

  1. ● 2026年は2つ大きな意味のある年

 

今月は前後篇の2回に分けて、今年1月18日におこなわれた講演会での私の講演内容をお届けします。

なお、口述の忠実な書き起こしではなく、必要に応じて訂正や大幅な加筆を混じえ、またその後適切なデータに巡り逢った論点についてはそのデータも補足したバージョンです。

さらに、混乱を避けるために図表番号は前後篇をつうじた通し番号にしておきました。図表1のタイトルからご覧ください。

 

 

せっかく『2026年 暴落する米国経済』という簡潔にして要を得たお題をいただきながら長ったらしい副題を添えたのは、今年が2つの点でアメリカにとって非常に重要なフシ目となる年だからです。

この2つのフシ目の意義をご理解いただければ、2026年は少なくともアメリカで大動乱が始まる年であり、ひょっとするとその動乱の決着もついてしまうほどの激動に見舞われる年だという私の主張にも一理あるとお考えいただけるのではないかと思います。

まず今年、2026年は1776年に独立を宣言したアメリカにとって建国250周年に当たります。この250年という歳月は、大帝国の興亡を研究してきた歴史家にはとても大きな意味を持つ期間となっています。

細々と生きながらえている地方帝国などでは、1000年以上同じ王朝や同じ政治制度が持続した例もあります。

ですが、世界に大きな支配力と影響力を及ぼした大帝国の場合、だいたい250年前後で覇権を失い、消滅するか、次の覇権帝国に従属する存在に地位が低下してきたのです。

また、最長期間の経済サイクルは何年くらいかを研究してきた経済史家のあいだでは、80~85年を1サイクルと考える人たちが主流派となっています。おそらく、世代が3回交代し終わるのがほぼ80~85年であることが主な理由でしょう。

創業の初代が頑張って基礎をつくり、守成の二代目がしっかりと受け継いで事業を守り育てても、蕩尽の三代目になると遊び尽くしたり、怠け尽くしたり、当人は正しいと思っている見当違いな方向で力を使い尽くしたりで没落するわけです。

また、この超長期サイクル3つ重ねると240~255年になり、世界帝国の寿命とも符合します。ひとつの王朝や政治制度の中で、興隆期の3世代、成熟期の3世代を経て、衰退期の3世代が役割を終えた頃が大帝国の終わりとなります。

今からちょうど80年前、第二次世界大戦が終わり祝勝気分で沸き返っていたアメリカで、まちがいなく衰退期を呼び寄せてしまった法律が制定されました。図表2の略年表をご覧ください。

 

 

その法律が、唯一赤の太文字で強調してある、正式名称こそ「ロビイング規制法」となっていますが、中身は紛れもない贈収賄奨励法です。アメリカ現代史を研究していらっしゃる方々の中でも注目される方が少ないのが、私には不思議でなりません。

この法律の異常さについては図表3に譲ることにして、この年表に取り上げた項目の意味をかんたんにご説明しましょう。

1946年の後に1971~74年の4年間が続き、そのあとはほぼ半世紀飛んで2021年となっています。しかも2021年については、それほど大きなヒットとなったわけでもないポピュラーソング1曲のリリースだけという項目です。

不思議な取り合わせとお考えでしょうが、じつは1971~74年という期間はアメリカの衰退がいつ始まったかという問いに対する答えとして、最大勢力になっています。

ですが、1971~74年に列挙した項目をご覧いただくと、どれもすでに始まっていた衰退をくい止めたり、弥縫したりするための政策ばかりだという事実にお気づきになるでしょう。

それより衰退が始まったのは第二次世界大戦直後と考えたほうがつじつまは合うという意味で、この年表は1946年の贈収賄奨励法制定を最大の屈曲点として、その後世代が交代するごとにますます悪くなっていったことをこれから論証するための道しるべ、とお考えください。

ちなみに私は、1946年の翌年に当たる1947年のイスラエル建国、同年のCIA設立、そして1年おいた1949年の国共内戦での中国共産党勝利で、第二次世界大戦後の悪役三羽ガラスが揃ったと思っています。

さて、衰退が始まったのはいつかという設問への答えで2番手は、1913年の連邦準備制度創設から1914~19年の第一次世界大戦期だと思います。しかし、この時期はまだアメリカ経済が成熟度を高めていた時期なので、除外すべきでしょう。

そして3番手は、ハイテクバブルが崩壊し始めた2000年から、国際金融危機の大底に当たる2009年までの2000ゼロ年代です。たしかにこの時代になると、経済合理性を欠いた経済政策、倫理性のかけらもない軍事・外交政策が目立ちます。

そして、ロビイストを通じて連邦議会を動かし、でたらめな政策を推進している特権的な大企業、有力産業団体、大富豪は、陰で糸を引くどころか、堂々と表に出てこうした政策を自画自賛しています。

まさに世も末という感じですが、それも仕方のないことかもしれないという印象もあります。

1946年から25~30年後には就労人口の中から贈収賄が犯罪だった頃を覚えている人がほぼ一掃されそのまた25~30年後には親からそんな話を聞いた人たちも消え去りさらに25~30年後の現在となると、祖父母からそういう時代があったことを聞いたこともある人がちらほらいる程度でしょう。

ほとんどの人が贈収賄を犯罪視しないまま腐敗が進むと、あとはもう金融市場だけではなく、社会全体が崩壊するのを待つだけという状態になります。そこで副題の結論は「腐敗と社会崩壊の一般理論」となるわけです。

そこでこのロビイング規制法という名の贈収賄奨励法がいかに異常な法律だったか、解説させていただきます。まず図表3の上段です。

 

 

企業、業界団体、大富豪などが直接連邦議会議員にワイロを渡せば犯罪になるけれども、連邦議会に登録して四半期ごとに財務諸表を提出しているロビイスト団体をつうじて渡せば合法的に贈賄ができるという、なんとも露骨な連邦議会議員たちのお手盛り増収政策なのです。

… … …(記事全文17,875文字)
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