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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

五島列島「洋上風力発電」視察記(その4):風力発電を抜本的に増やしていくには,送電会社の容量拡大コストや揚水式ダム整備に公的資金を注入すればよい

 先日、本メルマガにて五島列島の浮体式の洋上風力の現場への視察記を三回にわたって掲載いたしました.

 

五島列島「洋上風力発電」視察記(その1):なぜ、「洋上風力」が日本を救う救世主となり得る可能性があるのか?

https://foomii.com/00178/20240528140331124648

 

五島列島「洋上風力発電」視察記(その2):洋上風力は、「ベースロード電源」への活用は容易ではないが、耐久性・強靱性・国富流出リスク・漁業阻害リスクについての深刻な問題は見られない。

https://foomii.com/00178/20240529192943124705

 

五島列島「洋上風力発電」視察記(その3):風力発電は、今の日本の仕組みでは抜本的に拡大していかない。それはなぜなのか?

https://foomii.com/00178/20240531092153124770

 

この3本の記事でお話ししたのは…

 第一に、発電において今何よりも重要難は原発再稼働ですが、それと平行して可能な限り火力を減らすことが電力自給率を上げる上でも重要であり、その中で、現時点の状況を踏まえると「浮体式・洋上風力」は極めて有用であると言う点(その1、の話)、

https://foomii.com/00178/20240528140331124648

 

第二に、10年以上の経験を通して、そうした主張は単なる机上の空論ではなく、確かなモノであるということが明らかになっていると言う点(その2、の話)、

https://foomii.com/00178/20240529192943124705

 

そして第三にそれにも関わらず、「送配電」の都合の煽りを受けて、洋上風力の容量が抜本的に拡大していかないという問題があるのだ、というもの。

https://foomii.com/00178/20240531092153124770

 

ついては本日は、洋上風力の抜本拡大を図るために、電力の「送配電」の都合をどうやって乗り越えるべきなのか、についてお話しをいたしたいと思います。

 

この「送配電の都合」というのは,要するに,電力事業というのは,

 

・電気をつくる人(発電事業者)

・電気を流す人(一般送配電事業者)

 

の両者で成立しています(実際にはこの二つに加えて,「電気を売る人=小売り電気事業者」というのがいますが,今回はこの方は脇においておきましょう).

 

昔の制度では,東京電力や関西電力,中部電力といった電力会社がこれらを全て一体的に行っていたのですが,電力自由化の流れの中で,発電と送電が「分離」されてしまったわけです.

 

これらの内,「自由化」されているのは,「発電事業」だけで,「送電事業」は,昔の東京電力や関西電力等がそのまま担う恰好となっています.

 

なぜそうなっているのかというと,「送電事業」というのは「需要と供給」をバランスし続け無ければならない,という大変に高度な仕事をしているからで,どこかの組織が「独占」的に「中央制御」的に事業をし無ければならないものなのです.それはちょうど人間の頭脳やパソコンのCPUは一つでなければ混乱を来す,というのと似たような話です.

 

しかも,「需要と供給をバランス」するためには,送電事業と発電事業とが一体的に制御されていなければなりません.なぜなら需要が減れば発電量を減らさないといけない(あるいは逆に,前者が増えれば後者を増やさないといけない)からです.

 

じゃぁ,需要が減ったとき,発電量を減らす事業者は誰なのかと言えば…それは「基本的」には,送電会社と同じグループの発電会社.ということになります.つまり,東京地区なら東京電力,関西地区なら関西電力となります.

 

そうだとすると,五島地域で風力が動いている時に,その分の発電量を減らさないといけないのは「九州電力」であり,風力が停まったときに,その分の発電量を増やさないといけないのは「九州電力」なのです.したがって,洋上風力発電所がもしも九州電力とは「無関係」の会社であったとすれば,九州電力は大変な損失が生ずることとなります.

 

そうした構図がある以上,九州電力としては必然的に,できるだけ風力発電なんてない方が良い,と考えることになります.

 

これが(以前「その3」で論じた),風力発電の「送電容量」が増えていかない基本的な構図であると考えられるわけです(そして,その送電容量が増えていかないので,洋上風力をたくさん作ることが今,できなくなっているわけです).

 

では,こうした構図がある中で,どうやれば「送電会社」が風力発電の「送電容量」を増やすことができるのでしょうか?(つまり,もっともっとたくさんの洋上風力を作っていくことができるのでしょうか?)

 

それは,送電会社側が,通常の火力発電でなく,洋上風力発電の電力を流せば流すほどに儲かる仕組みをつくる,というのが一つの解です.

 

今の所FIT制度で余分に消費者が支払ったおカネ(付加金)は,基本的に全て…

… … …(記事全文4,516文字)
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