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藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~

藤井聡(京都大学教授・表現者クライテリオン編集長)

藤井聡

五島列島「洋上風力発電」視察記(その1):なぜ、「洋上風力」が日本を救う救世主となり得る可能性があるのか?
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この週末、五島列島・五島市にて運営されている「浮体式・洋上風力発電所」に視察に行って参りました。

https://www.city.goto.nagasaki.jp/energy/010/030/350/20220408095910.html

 

「資源がない国日本」にあって、火力発電以外の電力は、石油やガスを「輸入」しなくて済むことから、その拡大が、国家の存続と繁栄にとって絶対的に必須な課題。例えば、大東亜戦争は、石油の輸入を連合国側にストップさせられたのが、重大な開戦契機となったのは周知の事実。電力資源を外国に依存する状況から脱却することは、国家的な大命題なのです。

 

そんな中で、「洋上風力」は有望な電力の一つ。

 

もちろん、火力の代替電力としては

「原子力発電」

が現実的に最も有望なものですが、今回の福島原発事故以降、その稼働が難しい状況に追い込まれてしまっています。

 

万一、また原発事故、あるいは、原発に対するテロ等の突発事象が起これば、かつての様にエネルギー政策として自由に原発を再稼働することがますます難しくなってしまいます。

 

それを考えると、全国の原発の再稼働を急ぐと共に、原発「以外」の「非火力発電」の拡充が、今の日本国家にとって急務となっているのです。

 

つまり、今日本は、当面の電力対策として、

 

第一に、原発の再稼働を急ぐと同時に、

第二に、急場を凌いでいる火力発電を極力減らすための、より合理的な「火力の代替電力」を探る

 

という戦略が求められているわけです。

 

では、「火力の代替電力」として、今、現実的に考えられるものとして挙げられるのが、

 

・水力発電

・太陽光発電

・陸上風力発電

・核融合発電

・地熱発電

・メタンハイドレート発電

 

等が代表的なものとして挙げられますが、それぞれにはそれぞれの問題があるのです。

 

まず水力発電は、主要なものはおおよそ開発してしまって、今の日本の「開発余地」は限定的です。いまやもう、関西の高度成長をささえた「黒四ダム」はもはや望めません。ですから、「小水力」という小さな水の流れを活用して発電していくことは重要ですが、今後の火力の代替電力の主力を賄うには力不足の感が否めません。

 

太陽光発電や陸上風力発電は、たいして発電容量も大きくない割に、激しく「国土」すなわち、日本列島内の「自然環境」や「景観」「風土」を著しく破壊するという深刻な問題を抱えています。

 

核融合発電はもちろんできれば素晴らしいのですが、その技術的課題は膨大にあり、その実用化にどれくらいの時間が必要なのか、俄に分からないところがあります。楽観的な意見もありますが、悲観的に考えれば、核融合発電で一発逆転だけを狙うにはあまりにもリスクが高すぎます。

 

最後に、地熱発電もメタンハイドレート発電もその資源は「純国産」でありますから、極めて有望なものであり、その拡大を図ることは中長期では重要であることは間違いありませんが、持続可能なコストの範囲で、その発電容量を急速に拡大できるほどの技術がいまのところ開発されていないという難点があります。

 

この様に、水力も太陽光も陸上風力も核融合も地熱もメタンハイドレートも皆、それぞれに課題を抱えており、「火力の代替電力」として、今すぐ国力を注入して急速にその発電容量を5年、10年で拡大できる状況にあるは言えないのが現状です。

 

そんな中で、当方が今、着目している電力は、

 

「洋上風力」

 

です。

 

洋上風力のメリットについては、これまで何度か発言したことがありますが…

(例えばコチラの記事:『【誤解しないでください!】ネット界には「洋上風力発電たたき」の風潮があるようですが、「洋上」は海洋国家日本の救世主となり得る極めて有望なエネルギーです。https://foomii.com/00178/20230908154911113838

 

かいつまんで纏めると、次のようなものです。

 

第一に、日本は海洋大国であり、広大な海域を持っている。したがって、発電容量が大きく、その水準は、現在の火力発電容量を遙かに凌ぐ

 

第二に、陸上風力と違い、陸上風力のデメリットである国土の環境的景観的破壊を回避できる。

 

第三に、陸上風力と違い、海上では陸上よりも遙かに多くの風が吹いており、エネルギー効率も良い

 

第四に、既に技術は完成しており、あとは資金を用意して施工しさえすれば、今すぐにでも発電容量を上げることができる。

 

 

つまり、

 

・容量の拡大余地の点において水力を圧倒的に凌ぎ

・国土保全の点において、太陽光・陸上風力を凌ぎ、

・エネルギー効率の点において、太陽光を凌ぎ、

・現時点の急速容量の拡大余地(=現時点の技術水準)において核融合・地熱・メタンハイドレートを凌ぐ

 

という点において、最も有望な電力であると考えられるのです。

 

しかし、そんな有望な洋上風力にも、次のような少なくとも二つの懸念事項があります。

 

第一に、エネルギー効率は陸上風力や太陽光よりも高いとはいえ、洋上でも風が吹かない時もあり、おおよそ30%前後と限定的。したがって、火力や原子力の様に(四六時中発電する)「ベース電源」として活用することはできないのではないか?

 

第二に、風車の羽(いわゆる、ブレード)は、かつては東芝や日立が製造していたが、現時点では撤退してしまい、外国製品に頼らざるを得なくなっており、洋上風力の拡大は国益上問題はないのか?

 

この懸念事項はそのまま、洋上風力の相対的な「デメリット」となり得るものですが、もしも、このデメリットを上回るメリットが洋上風力にあるのなら、そして、そのメリットが水力や太陽光を上回っているのなら、国家としては強力に推進すべきだという事になりますし、その逆ならば、そうした推進は回避すべきだという事になります。

 

いずれにしても電力は日本国家の命運を考える上で何よりも大切な問題ですから、以上の考察を経て当方は、洋上風力のメリットとデメリットを正確に見極めることは、国家にとっての一大事なのだと深く認識するに至りました。

 

ついては、関係者に依頼し、この度、国内で唯一、「浮体式」の洋上風力が運用されている五島列島に視察に行くことにしたのでした。そしてこの週末、視察に参上し、昨夜戻って参ったと言う次第です。

https://www.city.goto.nagasaki.jp/energy/li/020/index.html

 

結論から申し上げて、上記の様な課題はあるものの、それを踏まえてもなお、洋上風力にはやはり、それを強力に国家的に推進していくことが必要な程の十分なメリットがあると確信するに至りました。

 

ついては、なぜ、当方がそのように感じたのか…について、明日以降、詳しく解説して参りたいと思います。

 

                             (その2に続く)


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