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山田順の「週刊:未来地図」
No.826 2026/04/07
トランプの横暴でアメリカは自滅か?
レイ・ダリオ「覇権循環論」が現実味を帯びる!
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トランプ大統領は、これまで人類社会が共有してきた価値観をことごとく破壊している。それは、アメリカの世界覇権(=パックス・アメリカーナ)を消滅させる。
このまま、7月4日の独立250周年の記念日を迎えれば、その日は、華々しいパレード、花火、歓声よりも、反トランプデモで全米の街が埋め尽くされるかもしれない。
いつかアメリカの世界覇権は衰え、次の覇権国の挑戦を受ける。そして覇権国は交代する。それが現実になるのはまだまだ先だと思ってきたが、イラン戦争を見ると、もう始まっているのは間違いない。
写真©️ White House Official Photos
[目次] ─────────────
■トランプ自身がパックス・アメリカーナを破壊
■本当にできるのか「イランを石器時代に戻す」
■1年前、中東利権を漁っていたトランプ一族
■欧州諸国は停戦を望むも本音はイラン壊滅
■仏、英、独が続々、中国・北京、習近平詣でを!
■ジャングルで生き延びるための「ハイエナ外交」
■国際機関から離脱という「オウンゴール」
■「10年後の世界の覇者は中国」という世論調査
■すべてはホルムズ海峡の支配権にかかっている
■覇権国が衰退するとき信用できるのは「金」だけ
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■トランプ自身がパックス・アメリカーナを破壊
トランプ第二次政権になって、この大統領が次々に国際秩序を破壊していくのを見て、呆れていたのはいまや昔。もはや、呆れているだけではすまなくなった。災害は、世界中に及び、日本もサバイバルを真剣に模索しないと生きていけなくなった(重油もナフサも枯渇する)。
これまでの世界は、アメリカが世界覇権を持つパックス・アメリカーナの下で、各国が協調してサバイバルをしていた。第二次大戦後のこの世界は、東西に別れ、数々の地域紛争、局地戦争もあったが、それなりに安定しており、その中で各国は経済発展を遂げてきた。
しかし、それはもう続かない。イラン戦争ではっきりしたのは、トランプ自身がパックス・アメリカーナを破壊しているということだ。トランプは、国際法、地政学、政治倫理など歯牙にかけず、力と欲望だけで突き進み、この世界を「ジャングル」(弱肉強食)に変えてしまった。
■本当にできるのか「イランを石器時代に戻す」
現在の最大の焦点は、ホルムズ海峡である。ここが開かれるか、閉じたままなのかで世界の運命は決まる。4月6日、トランプは、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、こう投稿した。
「火曜日にはイランに、『発電所の日』と『橋の日』がまとめてやってくる。またとないことになるぞ!くそったれな(ホルムズ)海峡を開けろ、狂った野郎ども(Open the Fuckin' Strait, you crazy bastards)、さもないと地獄で暮らすことになるぞ。見てろよ!」
これ以前にも、「(イランを)石器時代に戻す」(bomb them back into the Stone Age)と脅迫したが、本当にやるかどうかはTACOだけにわからない。
ただ、やらずに、勝手に勝利宣言して軍を引けば、ホルムズ海峡は開放されない。そうなれば、世界中の恨みを買う。といっても、トランプには常識は通用しない。恨みを買おうと、自分かわいさのためなら、なんでもやる男だ。
■1年前、中東利権を漁っていたトランプ一族
イラン戦争の泥沼化でわかったのは、トランプには「出口戦略」がないことだ。もちろん、はなからそんなものは持ち合わせていない。
戦争には、ビジネスと同じ「ディール」は存在しない。勝つか負けるかの決着しかない。
そこで、思うのは、昨年、大統領就任前後に、トランプはなにをしていたか?である。
就任の4日前、トランプは、息子のエリックらが立ち上げた暗号資産などを扱う金融会社「ワールド・リバティー・フィナンシャル」(ウィトコフ・ファミリーも参画)の株式の49%を5億ドルでUAE王族の側近たちに引き受けさせている(「WSJ」2月3日報道)。
そして大統領就任後の5月、サウジアラビアを中心に中東歴訪。サウジからは、安全保障と引き換えに数兆ドルの対米投資を引っ張り、個人的にも、娘婿クシュナーのPE「アフィニティ・パートナーズ」にサウジの政府系ファンドから20億ドル規模の投資を引っ張った。また、トランプ・オーガニゼーションは、サウジの不動産会社と提携し、湾岸の不動産開発促進で合意している。
今回の戦争で、UAEやサウジなど湾岸諸国も大きな被害を被っている。それなのに、すべてを放置して米軍を引き上げる?このまま停戦に持ち込む? それをはたしてやれるのか?
■欧州諸国は停戦を望むも本音はイラン壊滅
世界中がイラン戦争の停戦を願っている。しかし、それは、人道や人権、国際正義のためではない。このままでは、石油価格が上がり、インフレが進み、国民生活が逼迫するからだ。
では停戦が実現したら、ホルムズ海峡は解放され、中東からの石油輸送は元に戻るのか? そうとは言い切れまい。イランが望む体制維持、完全な安全保障、損害賠償がなければ彼らは停戦せず、ホルムズ海峡を開放するなどあり得ないだろう。
つまり、単に「撃ち方止め!」のような中途半端な停戦では、なんの解決にもならない。
よって、欧州諸国は停戦を望むことを表明しているが、本音ではイラン壊滅を願っている。日本も同じだ。欧州諸国はとくに、表では国際法違反を指摘しても、裏ではイラン壊滅を望んでいる。そうなれば、ロシアは弱体化し、ウクライナ支援の莫大な出費を抑えられる。
トランプの次の狙いはキューバだ。ベネスエラ、イラン、キューバと親ロ・親中国の国々を次々に叩いてくれるのだから、じつは歓迎である。しかし、そんなことはおくびにも出さないで、“ダブスタ外交”を続けているのが欧州だ。
