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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.763:トランプがただの「裸の王様」とわかったとき、 世界はどうなるのか? 暴落はあり得るのか?


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  山田順の「週刊:未来地図」                 

   No.763 2025/02/18

トランプがただの「裸の王様」とわかったとき、

世界はどうなるのか? 暴落はあり得るのか?

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 トランプがアメリカ大統領に就任して1カ月が経ち、私はつくづく思うようになった。大統領令連発で、あれやこれやとやり出したが、どれもこれもうまくいかず立ち往生するのではないかと。そして、いずれトランプはたいしたことはない、ただの「大言壮語男」に過ぎない。大統領としても、世界のリーダーとしてもふさわしくない。「王様は裸」だと判断されたとき、世界はどうなるだろうかと。

 そのときはおそらく、市場は大暴落し、アメリカの世界覇権は大きく崩れる。となれば、日本も多大な影響を受けることになる。経済は回らなくなり、安全保障も脅かされる。

 そんなことは願いたくもないが、こんなバカな大統領は歴史上いなかっただけに、どうしようもない。

[目次]  ─────────────────────

 

■「私は神に救われた」史上サイテーの就任演説

■トランプのどこが「平和のハト(使者)」か?

■プーチンへの譲歩はアメリカの安全保障を脅かす

■トランプがしたいのは「オレ様」を見せつけること

■習近平の「天下三分の計」の罠にハマる可能性

■イエスマンばかりだから「裸の王様」になる

■トランプの経済政策は支離滅裂、デタラメ

■トランプラリーは起こらず、暴落に向かう市場

■日本にも適用されるのは確実な自動車関税

■中間選挙での「答え」を待つほかないのか?

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■「私は神に救われた」史上サイテーの就任演説

 

 トランプの大統領就任演説には、心底がっかりした。そこには、政治理念も理想もなく、祖国アメリカに対する愛も、自分が世界のリーダーだという責任感のひとかけらもなかった。トランプは、ただただ「MAGA」をまくし立て“オレ様”をアピールしただけである。

 

「この日からわが国は再び繁栄し、世界中で尊敬されるようになる。われわれはあらゆる国がうらやむ国となり、もはや利用されることは許さない。トランプ政権では毎日、まさにアメリカ・ファーストとする」

 

 彼の言う「アメリカ・ファースト」とは、アメリカは今後徹底的に儲ける。そのためには世界がどうなろうと構わないということだ。なにしろ、メキシコ湾をアメリカ湾にしろ、アラスカの最高峰の名前デナリをマッキンリーに戻せ、パナ運河をアメリカに寄越せとなどと言い放ったのである。こんなことを就任演説で言うのだから、あきれ返るしかない。

 

 恐れ入ったのは、自分が神に指名された人間だと臆面もなく、次のように言ったことだ

「ほんの数カ月前、美しいペンシルベニアの地で、暗殺者の弾丸が私の耳を貫通した。そのとき、そしていまはよりいっそう強く、私の命は理由があって救われたと信じている。私は神によって、アメリカを再び偉大にするために救われたのだと」

 

■トランプのどこが「平和のハト(使者)」か?

 

 さて、本題に入ろう。

 トランプの化けの皮はいずれ剥がれるときがくる。「裸の王様」だと誰もが知ることになる日がやってくる。私は、就任式からの1カ月間で、つくづくそう思うようになった。

 

 トランプを批判すると、最近は、この日本でもネットで非難されるようになった。やれ、「オマエは、アメリカのリベラル、民主党の手先だ」「トランプを変わり者扱いするのは、アメリカのリベラルメディアに毒されているからだろう」などと。

 

 情弱ネット民は、本気で「トランプこそが世界に平和をもたらす」「トランプは戦争をしなかった」などと言うタワゴトを信じている。「平和のハト(使者)だ」と言う者までいる。

 

 「平和主義者」で「戦争を嫌いな男」が、なぜグリーンランドやパナマ運河を得るために必要なら軍事力も使うとか言うのか。ウクライナに援助との見返りに鉱物資源を寄越せと言うのか。ガザ住民はガザから出て行けと言うのか。

 トランプが言う「平和」とは、ただの「撃ち方止め」に過ぎない。

 

■プーチンへの譲歩はアメリカの安全保障を脅かす

 

 トランプは、すでにプーチンに会う段取りをつけている。米ロ首脳会談は間もなく行われるだろう。「24時間以内に戦争を終わらせる」と豪語した以上、これは当然の成り行きで、驚くことでも、評価すべきことではない。

 問題は、事前の電話会談で、プーチンを引っ張り出すためにどんな妥協をしたかである。

 

 いまやトランプ批判の急先鋒、第1次トランプ政権下で国家安全保障担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンは、最近、Xに次のような投稿をした。

 「ロシアがウクライナの主権を攻撃し、北朝鮮のような敵国を戦闘に協力させ、そして、ウクライナに、領土及びNATOによる安全保障やNATOの加盟国入りを譲歩させることに良心の呵責を感じる。交渉が始まってさえいないのに、これらの譲歩をすることで、トランプはウクライナ問題でプーチンに事実上屈服した」

 

 トランプにとって、ウクライナがどうなろうと、NATOそして欧州がどうなろうと、そんなことは知ったことではないのだ。ただ、戦火が止めばいい。そう思っているだけだ。

 とはいえ、ロシアに対する譲歩は、アメリカ自身の安全保障を脅かす。グリーンランドがアメリカの安全保障上必要だということと、まったく矛盾する。

 

■トランプがしたいのは「オレ様」を見せつけること

 

 トランプのこの1カ月を見て、もう多くの人間が気づいたと思う。それは、「トランプはなにをするかわからない」男ではないということだ。いまだに、そんなことを言っている政治評論があるが、どこを見ているのかと言いたい。

 

 トランプは、これまで言ってきたことしかやらない。選挙期間中、いやそれ以前から言ってきたことを、そのまま実行しているだけだ。

 それがどんな事態を招くのか?また、それを実行するためにどうすればいいのか?という政治にとって肝心要なことは考えていない。

 つまり、言ったはいいが、それが実現しなければ、ただの「大言壮語」男ということになる。

 

 もう一つ、トランプの行動ではっきりしているのは、彼が自分を偉大な人間だと勘違いし、それを人々に見せつけようとすることだ。それが、プーチンとの首脳会談であり、第1次政権時代の“ロケットマン”金正恩との首脳会談だった。

 

 ともかく、会って話し、それが世界の注目を集めればいいのである。北朝鮮との交渉で、核開発を放棄させられなかったのだから会談は失敗である。その轍を踏まえれば、ロシアとの停戦交渉も、ほぼ間違いなく失敗するだろう。当事者であるウクライナ、 NATO諸国抜きでの和平などあり得ないからだ。

 

… … …(記事全文6,463文字)
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