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山田順の「週刊:未来地図」 ― 日本は、世界は、今後どうなっていくのでしょうか? 主に経済面から日々の出来事を最新情報を元に的確に分析し、未来を見据えます。

山田順(ジャーナリスト・作家)

山田順

山田順の「週刊:未来地図」No.736: まだ見えてこない立ち位置と政策 。ハリス大統領誕生なら日本はどうなるのか?


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             山田順の「週刊:未来地図」                 

                           No.736 2024/08/20

      まだ見えてこない立ち位置と政策

    ハリス大統領誕生なら日本はどうなるのか?

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 “旋風”を巻き起こし、トランプ前大統領を支持率で上回ったカマラ・ハリス副大統領。しかし、まだまだ大きな壁が立ちはだかっている。それは、彼女自身の立ち位置と政策がはっきりしないことだ。中道なのか、左派なのか? 国内向けの経済政策は、いちおう発表されたものの、経済全体の政策と安全保障、外交はまだまだ不透明である。

 これらがはっきりすれば、大統領への道は開けるが、今後これらをもっと明確に示せるのだろうか?

 もちろん、日本にとっての大問題は、彼女が大統領になったとき、日本はどう扱われるかである。

      写真©CNBC Chicago

[目次]  ─────────────────────

■ハリスの支持率がトランプを上回る

■選挙を経ずに候補になった「強運の持ち主」

■「政策をもっと語れ」と突っ込む主要メディア

■なぜ大統領になりたいのかが見えてこない

■民主党大会の受諾演説でなにを言うのか?

■強いミドルクラスをつくるための生活援助策

■財源はどうする?ただ左翼ポピュリズムか?

■バイデン政権よりも中小企業、労働者寄り

■老人バイデンに代わって数々の国際会議に出席 

■人権面からの「対中強硬路線」の強化

■副大統領候補ウォルズは「親中派」なのか?

■対中強硬派エマニュエル駐日大使の政権入り

■早くもハリス政権の閣僚ラインナップを予想

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■ハリスの支持率がトランプを上回る

 

 「ハリスvs.トランプ」の対決となってから、ハリスの支持率がじわじわと上がり、ついにトランプを上回った。すでに報じられたように、激戦3州(ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン)では、いずれもハリスがトランプを4ポイント離した(「NYタイムズ」8月5日発表の世論調査)。

 その後の「ワシントン・ポスト」(8月13日発表)の世論調査では、全米での支持率でハリスがトランプを1ポイント上回った。さらに、17日発表の「NYタイムズ」の世論調査では、激戦3州に続いてアリゾナでもノースカロライナでもハリスがトランプを上回った。

 これは、ハリス個人の人気というより、民主党の戦略が効いたと言っていい。トランプにもバイデンにも首を傾げてきた層、とくに若者層をうまく取り込んだ結果だ。ビヨンセの『フリーダム』に乗って、“ハリス旋風 ”が起こったのである。

 なぜかアメリカの2大政党、民主党(Democrats)、共和党(Republicans)とも、1度指名候補が決まると、党を挙げて自党候補を押すという傾向が強い。ハリスは、民主党内でも評判が悪かったのに、いまや「最高の大統領候補だ」とまで言う党員がいる。

 

■選挙を経ずに候補になった「強運の持ち主」

 

 アメリカ国内の“ハリス旋風”を見ながら、冷静にハリス大統領の誕生があるのかと考えると、彼女は類い稀な「強運の持ち主」と言うほかない。

 思い返してみれば、前回の大統領予備選に立候補するも、あまりの不人気でアイオワを待たずに撤退した。それをバイデンが左派(サンダース派)の協力を取り付けるために、副大統領候補(ランニングメイト)に選んだのだ。この起用は、女性で非白人(黒人とインド人の混血)であることが大きく影響した。

 トランプ陣営が批判する「DEI vice president」(DEI枠採用の副大統領)というのは、あながち間違っていないのだ。

 さらに、今回、大統領候補になれたのは、民主党内に「バイデンおろし」が起こり、バイデンが仕方なく彼女を指名したからだ。実績や政策は考慮されず、トランプに勝てる可能性があるということで指名された。

 しかも、彼女は政策的に日和見で、政治に対する強い信念がない点が好都合とされたという。つまり、ハリスは選挙などの洗礼を受けないまま、「打倒トランプ」だけのために自動的に候補になってしまったである。

 こんな強運の大統領候補者は、かつていなかった。

 

■「政策をもっと語れ」と突っ込む米主要メディア

 

 このような経緯があるため、共和党系のメディアばかりか、民主党系のリベラルメディアまで、ハリス対して、「自らの政策、政権構想をもっと語れ」と不満を表すようになった。

 8月11日の「ワシントン・ポスト」のエディトリアル(社説)は「ハリス氏が勝利したいのなら、自身の考えを示す必要がある。メディアや国民の正当な疑問と向き合うべきだ」と訴えた。

 これまでの遊説では、トランプを「過去」(past)と位置づけ、自らの勝利で「未来」(future)を切り開くと支持者を熱狂させてきたが、そんな曖昧な話では本当の支持は得られないというのだ。

 「ワシントン・ポスト」をはじめとする主要メディアが問題視しているのは、最大の焦点とされる「不法移民」を今後どうするか、ロシア・ウクライナ戦争、イスラエル・ハマス戦争、東シナ海、南シナ海における中国の脅威など

 現在進行形の戦争や危機に、米軍の「最高司令官」となってどう対処するかなど、彼女のスタンスが明確ではないことだ。

 さらに、インフレが進行中の経済をどうするかという大問題もある。

 

■なぜ大統領になりたいのかが見えてこない


 これまでハリスは、内外の課題や危機に対する具体的な政策構想に触れる発言をしたことはほとんどない。大統領候補になってから、主要メディアとの対面インタビューにも応じていない。これでは、大統領になってなにをするのか見えてこない。

 ただ、政治家になってからの言動を追ってみると、彼女の主張は、民主党の左派とほぼ同じでかなり左寄りである。不法移民に市民権を付与する、警察予算および国防予算を削減する、国民皆保険を実現させるなど、中道派と右派が嫌う発言を繰り返している。

 そしてなによりも見えてこないのは、なぜ検事から政治家になったのか、なぜ大統領になりたいのかという、政治信条とその物語である。これがもしないとなると、単なる「反トランプ」「初の女性大統領」という看板だけに終わってしまう。

 

… … …(記事全文8,030文字)
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