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山田順の「週刊:未来地図」
No.708 2023/02/20
トランプNATO発言の背景
アメリカはローマ帝国と同じ道をたどるのか?
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トランプ前大統領がNATOに対し「カネを払わなければ守らない」と言ったことで、世界中が混迷を深めている。これをトランプの「トンデモ発言」と批判することは簡単だが、その背景を考えると、深刻な問題が浮かび上がる。それは、アメリカが「もう世界のことなど構っていられない」ということを意味するからだ。
トランプは、アメリカ国民の間に広がる、こういうムードを知って発言しているのだろう。
いまのアメリカは不法移民の大量流入、保守とリベラルの対立、貧富の差の拡大により、国内の分断・混乱が進んでいる。このままいくと、ローマ帝国が衰退したようにアメリカも衰退してしまうかもしれない。
これまで私たちは、アメリカ覇権世界(パックス・アメリカーナ)のなかで、心地よく暮らしてきた。もし、そうではない世界がやって来たら、いったいどうしたらいいのだろうか?
[目次] ─────────────────────
■トランプ発言の背景にある国内の分断・混乱
■なぜわれわれの税金で欧州を守るのか?
■「アメリカ第一主義」はアメリカを衰退させる
■不勉強と素行不良でミリタリー・アカデミーに
■フォーダムもUペン・ウォートンも裏口入学
■アメリカがローマ帝国の継承国家と知らない
■議会も議事堂も国章もローマ帝国と同じ
■オバマとトランプが衰退させた世界覇権
■さらなる覇権後退を招いたバイデンの弱気
■ゲルマン民族流入と米不法移民は同じか
■4者4様、著名投資家の考える未来
■アメリカ覇権が後退し温暖化が進む未来の憂鬱
■アメリカの属国であることが最善の道
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■トランプ発言の背景にある国内の分断・混乱
たしかにトランプ発言はトンデモない。
最初の発言「(軍事費を増額しないなら)ロシアの好きなようにさせる」の相手は、ドイツのメルケル前首相であるのは明白だ。これを聞いたメルケルは、どう思っただろうか?
この発言が批判を浴びると、今度は軍事支援を「貸付のかたちにして返済させよ」と言い出した。もはや、彼の頭のなかには損得勘定しかなく、安全保障も同盟もすべて「取引」(ディール)である。
これだと、世界は力がない国は力のある国に食われてしまうという「弱肉強食」のジャングルになってしまう。
ただし、このようなトランプの「NATOを守らない発言」も、すでに何度も口にしている「ウクライナ支援打ち切り発言」も、その根っこは同じだ。その背景には、アメリカ国内で進む分断・混乱がある。
いまさら、サンフランシスコやニューヨークの街の荒廃ぶりを述べても仕方がないが、不法移民で溢れ、スーパーの万引きが横行する状況は、もはや救い難い。
テキサスのメキシコ国境に押し寄せるおびただしい数の難民を見るにつけ、いったいアメリカはどうなってしまうのだろうかと思う。