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★日銀利上げ、米国AIバブル崩壊、世界的な商業用不動産バブル崩壊 米国実体経済悪化 これらが連鎖する形で表面化、一気に株価を押し下げる動きが発生しました。最近の急落の最大の原因はプログラムによる高頻度取引が引き起こすもので、上げ下げの両方向に一気に動くと売りや買いを繰り返し暴走するというものです。また、これに絡んで積みあがっていた信用買いの手じまい、強制清算が発生、売りが売りを呼んだ形となります。但し、リーマンの時とは違い大手金融機関は資本規制などで厳しく管理されており、金融不安には直結しません。米国の場合、一部の地方銀行などに波及する可能性がありますが、それが直接的な金融危機にはならないと考えられます。 これに伴い日経平均は4451円の下げとなりましたが、終了後の場外では2400円程度戻しました。また、これに連動する形で為替も動いています。
年初来、米国の株高を支えてきたのはAI関連銘柄であり、株価上昇の3分の2はAI関連でした。しかし、投資額に対して、得られる短期利益が少なく、これが問題視され始めていました。投資額全体から言えば、年間6000億ドル程度の収益が必要ですが、1000億ドルに満たないとされており、投資として合わないわけです。しかし、将来を見据えた場合、投資を続けなくてはレースから脱落してしまう。脱落すれば次の市場の支配権を得られない。
これは半導体業界で繰り返されてきたチキンレースでもあるわけです。
■「AIバブルは崩壊するか」世界株急落で膨らむ懸念 YAHOO
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/19faebaa4ef49e6b485fedc516a894e346c75206
日本の場合、エルピーダ、ルネサスがこの競争から脱落し、比較的安定している素材や設備産業に特化した発展をしてきました。しかし、それでは大きな利益を得ることができず、台湾TSMCとの協力やラピィダスによる半導体生産の再開を決めました。また、半導体需要がなくなるわけではなく、特に設備産業は日本や欧米等の工場新設により需要がなくなるわけではありません。今回の問題は期待値が高すぎ、価格が上がりすぎていたわけです。
また、大統領選挙を見据えて、グリーン関連などの銘柄等にも逆風が吹いており、大規模な銘側入れ替えが起きているのも下落の要因となります。
また、もう一つの懸念として、米国の商業用不動産特にオフィス用不動産の暴落があります。コロナ後のオフィス需要が戻らず、特にNYなどの都市部でオフィスが余ってしまっているのです。その結果、オフィスの空きが増え、家賃が低下し、利回りが合わなくなってしまっている。例えば、1億円の物件で月100万円の家賃であれば、年1200万円で年利12%となるわけですが、これが3億円まで上がれば、年利は4%となり、銀行の借入金利以下となる。これでは投資案件として不適格になるわけです。米国の場合、ノンリコースですので、ローン残債が物件価格を上回れば、銀行や債権者に不動産を返却すれば残債は消える。そして、銀行や債権者はこれを売りに出すわけで、それが不動産価格の下落を主導する。 米国はインフレ対応のために急激な利上げを行ってきました。これにより、借入金利が上がり、不動産の収益性が一気に悪化したわけです。 これまで、それはオフィスなどに限定されてきたわけですが、住宅用にも波及し、それが個人消費に悪影響を与える懸念が出てきたわけです。
年初の予測では米国は6月の利下げ開始、年三回程度の利下げで4%前後まで金利を落とすというものでしたが、5.6の経済指標が堅調で、インフレ水準も高止まりしていたためにこれが先送りされてきたわけです。その結果として、急激なファンダメンタルズの悪化が表面化したといえます。 また、ここに中国系資金の流れも影響します。中国の不動産会社ですが、中国国内だけでなく、米国や欧州の都市部にも投資してきました。しかし、国内の資金ショートなどにより海外資産の投げ売りを始めたわけです。
これらの一連の流れの中で、今回の暴落が発生しました。しかし、繰り返しになりますが、リーマンの時とは金融環境は全く違います。リーマンの際には、投資銀行をはじめとした国際金融資本が直接ポジションをとって自己取引を行っていた。また、複雑な金融構造の中で、非常に連鎖しやすい構造にあった。リーマンの場合、サブプライムローン会社の破綻→投資銀行の信用不安→モノライン保険会社の破綻(資本不足で保険が機能しない)CDSなどの無理な引き受けなどの問題があり、これらに関して規制が強化されています。
また、次の問題として出てくるのは、先進国ではなく新興国への影響となります。先進国の資金の巻き戻しがグローバルサウス(新興国)の資金環境を悪化させる可能性があるわけです。コロナからの回復が進んではいますが、一帯一路による無理な融資などにより、新興国の破綻が発生している。また、世界的な資源インフレにより、低所得者層の生活が厳しい状況に置かれ、それがクーデターや政変の大きな要素になっています。
グローバルサウスの発展に期待する声もありますが、実はそれは不可能な話なのです。何故ならば、地球上に存在する資源には限界があり、人口の多いグローバルサウスの発展は地球の資源を枯渇させる。現在、起きている世界的な資源インフレは資源の需要に供給が追い付かないために発生しているものであり、更なるグローバルサウスの発展はこれをさらに悪化させる。だから、抑制される結果になるわけです。
グローバルサウスの右肩上がりの発展がコロナで停止しました。そして、債務が積みあがっているところに資源インフレが発生、国民生活が苦しくなっている。これが政治への不満という形で政変や政治不安を生み出し、結果、海外からの投資の抑制が発生し、より厳しい環境下に置かれてゆく、ミャンマーの軍事政権回帰、今回のバングラディッシュのクーデターなども同じ文脈上にある。また、国内不動産バブルが崩壊したベトナムも危険水域にあるといえます。アフリカ諸国も同様です。先進国も同様のリスクを抱えています(英国の政権交代、フランスの選挙結果など)が、政治システムの成熟などにより、その影響は未だ軽微といえます。最もうまく政治を行っていたとされるインドのモディが選挙で苦戦したのもこれが原因です。
そして、予測される今後の動きですが、当面は調整局面であり、しばらくは大きな揺れ幅で上下に動く可能性が高い。そして、金融面が安定してきたところで大統領選を見据え銘柄の入れ替えとともに再びゆっくりと上昇に転じると考えます。
■世界の株価
現在のところ、恐怖指数(VIX)指数が非常に高い状態にあり、投資家心理が圧迫されている状態にあります。これが低下して安定してきたところが底になるのでしょう。今後出てくる経済指標など不特定要素も大きいですが、当面はファンダメンタルズに振り回されるかもしれません。また、FRBが緊急下げを行うかも焦点になっています。
また、為替ですが、各企業の想定レートはほぼ1ドル145円ですので、現在水準での大きな業績悪化要因とはなりません。
■情報BOX:主要企業の想定為替レート一覧
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/HKEJNFWM4BIUDJVOGATNQ3G774-2024-08-05/
■ボラティリティーに揺れるクオンツ、新たに1700億ドルの株売りも B
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-05/SHRH9ADWRGG000?srnd=cojp-v2
■コモディティーが急落、世界的な市場メルトダウンが原材料市場に波及 B
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-05/SHR3JYDWX2PS00?srnd=cojp-v2
■日本特化ヘッジファンドの損失3.7%、過去最大=ゴールドマン
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/FW2IVK2TZVOEZDL7NF7KIXK3SQ-2024-08-05/
■米金利先物市場、9月FOMC待たず緊急利下げの観測高まる
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/5YV3A7EQLJKEDDNISC5CVV6X5M-2024-08-05/
■米国、景気後退には陥っていない─シカゴ連銀総裁=CNBC
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/EPGT7IFFHRJT3AX3ANUVUOUH5A-2024-08-05/
■訂正 米ISM非製造業総合指数7月は51.4、4年ぶり低水準から改善
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/O5WVGMC54JKYDMUED727S3B4LY-2024-08-05/
■中国、一部金融機関に長期国債保有の日次報告要請=関係筋
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/YGQFCNGNUVJPFH66STSGXTJC2M-2024-08-05/
■東京マーケット・サマリー
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/F5DTZWQJGVJABEI5JFL2VGDMSQ-2024-08-05/
■アジア株式市場サマリー:引け(5日)
https://jp.reuters.com/markets/asia/WUM77DUGTZP2XDCZZ4KHTRE7FM-2024-08-05/
■欧州市場サマリー(5日)
https://jp.reuters.com/markets/europe/PZKNTHO6OVNHNOH6CSLLB4Z3GY-2024-08-05/
■米国株式市場=大幅続落、アップル売られる
https://jp.reuters.com/markets/us/3KOSW5C4TRJCLCMC3HRKFVIEEI-2024-08-05/
『出展 記載なきものロイター Bブルームバーグ』
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