… … …(記事全文3,897文字)「4%ルール」の生みの親、William Bengen氏が2025年、30年越しの研究を一冊の本にまとめました。タイトルは『A Richer Retirement』です。
その結論を一言で言うと、こうです。
「4%は、過去最悪の時代に最も不運だった人を守るための超保守的な下限値に過ぎなかった。正しく設計すれば、もっと引き出せる。」
私がこの理論を知って最初に感じたのは、安堵より先に「しまった」という気持ちでした。FIRE達成後の自分が、必要以上に怯えながらお金を使ってきたかもしれない、という気づきです。
退職ポートフォリオの「真の敵」は、実は株価暴落ではなかった
ここが、この理論で最も重要な逆転の発見です。
多くのFIRE民が一番恐れているのは「暴落」です。私もそうでした。しかし、ベンゲン氏のデータが示す歴史的事実はこうです。
1929年の世界恐慌(株価90%超暴落)より、1968年のスタグフレーション(高インフレ+低成長)のほうが、退職者へのダメージははるかに大きかった。
なぜか。株価の暴落は、数年後に回復する可能性があります。しかしインフレで生活費が上がると、引き出し額を永続的に増やし続けなければならない。1970〜1980年の米国では年間インフレ率が平均8.32%に達し、400万円から始めた引き出し額が、わずか11年で766万円に膨らみました。
資産が目減りしているのに、引き出し額だけが指数関数的に増えていく。これが破産への道です。
毎日の買い物をしているFIRE民として、この話は骨身に染みます。株価よりも、スーパーのレシートのほうが怖い。
3つの防御策と2つのモニタリング──その構造だけ先にお伝えします
ベンゲン氏の新理論は、以下の5つの要素で構成されています。
【3つの防御策】
・防御策①
資産の分散と「小型株プレミアム」の取り込み → 2資産から7資産へ拡張し、小型株を意図的に組み込むことで安全引き出し率が4.0%→4.7%へ・防御策②
退職初期の「順序リスク」を構造的に回避する → 「年を取るほど株式を減らす」という常識を逆転させた設計で、さらに+0.25%の上乗せが可能に・防御策③
支出のルール化(ガードレール戦略) → 「必要なら引き出し額を減らせる」構造にするだけで、初期引き出し率が最大5.7〜6.2%まで拡張可能
【2つのモニタリング手法】
・モニタリング①
インフレ率(CPI)×株価水準(CAPEレシオ)で「現在地」を確認する → 今の相場環境で自分がいくら引き出してよいかを判断するマトリクス・モニタリング②
年1回のリバランスと設計前提の再確認
結局、何%引き出せるのか?
防御策を積み上げた結果、安全引き出し率はどこまで伸びるか。その全体像と、現在のインフレ・株価環境(CAPEとCPI)から自分の「適正ゾーン」を判断するマトリクス表については、この先の有料部分でお伝えします。
特にマトリクス表は、「今はいくら引き出してよい相場か」を一目で判断できる実用ツールとして設計しました。ぜひ手元に置いておいていただけると思います。

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